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経済格差などによる「絶望死」が要因か…アメリカ人の寿命は短くなっている

2019/12/8(日) 20:00配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

「働き盛り」のアメリカ人が死んでいる

これらの死亡は、単一の原因によるものではない。ウルフ氏の研究によると、この年齢層の人々の死亡率は、35の異なる原因から上昇しているという。しかしながら、薬物の過剰摂取、アルコール乱用、自殺といった「絶望死」が主な原因であると考えられる。

この年齢層では、1999年から2017年にかけて致死的な薬物過剰摂取がほぼ4倍に増加した。25歳から64歳の自殺率は40%近く上昇し、55歳から64歳の人の自殺率は同じ期間に56%上昇した。25歳から34歳では、アルコール関連疾患による死亡率も約160%増加した。

この年齢層の肥満に関連した死亡率も114%上昇し、高血症に関連した死亡率は約80%上昇した。「生産年齢のアメリカ人は人生の絶頂期に死亡する可能性が高い」とウルフ氏。2010年から2017年の間に、アメリカの中年の死亡率は6%上昇した。

死亡率が最も高かったのは、ニューイングランド地方の州(ニューハンプシャーの中年は23.3%増。同じくメイン州20.7%、バーモント州19.9%)の住民とオハイオバレー(ウエストバージニア州では23%、オハイオ州では21.6%の増加)の住民だった。

しかし、すべての地域が同じ傾向を示したわけではない。ハワイ、カリフォルニア、太平洋岸北西部に住む人々の2010年から2017年までの平均寿命は延びている。

全体的に見て、男性の死亡率は女性よりも高い。しかし、ウルフ氏の研究によると、女性は過去数十年と比較して、薬物の過剰摂取、自殺、アルコール関連性肝疾患のリスクが高くなっていることが明らかになっている。

「雇用主にとっては明らかな意味がある」とウルフ氏。

「この傾向が続けば、他の国に比べ、健康でなく生産性の低い労働力を早く失うという状況になる可能性が高い」

アメリカでは多くの医療費が使われているにもかかわらず

民営化された医療に何十億ドルも費やしている富裕な先進国で中年の労働者層の死亡率が高いという不思議な現象は、誰もが触れたがらない事実が原因かもしれない。

ウルフ氏は「我々アメリカ人は医療に多くのお金を費やしているのに、なぜこのようなことが起きているのだろう。その答えは経済にあると思う」と話した。

オハイオ州のように五大湖に近いアメリカ中西部の「ラストベルト」は、経済の変化とそれに伴う工場の雇用喪失によって最も大きな打撃を受けた地域だと、ウルフ氏は述べた。

「製鉄所や炭鉱は閉鎖されているが、対照的にカリフォルニアは繁栄している」

ウルフ氏によると、自殺、薬物の過剰摂取、アルコール関連疾患は「住宅を買う余裕がなく、正規の仕事を見つけることができずに貧困で苦しんでいる人々すべてに見られる症状」だという。

「健康に影響する社会的要因が、幸福にも影響していることがわかってきた」と、ハーバード大学T・H・チャン・スクールの公衆衛生学教授で、今回の研究には参加していないハワード・コウ(Howard Koh)氏はBusiness Insiderに語っている。

「所得格差や不安定な雇用などの要因が心理的苦痛を引き起こし、病気や死亡の発生を促進する」と彼は付け加えた。

世界の国々では、低所得者の方が富裕層より早く死亡するという研究結果が出ている。2017年の研究では、社会経済的な地位の低さと平均余命の減少との間に有意な関連性が認められた。

しかしウルフ氏によると、特筆すべき点として「他の国の貧しい人々は、アメリカの貧しい人々より長生きする」ことがあげられるという。

アメリカの富裕層と貧困層の差は、社会経済的な観点だけでなく、健康の面でも広がっている。

「経済的に恵まれていないことに対して健康面で支払う代償は、ますますひどくなっている」とウルフ氏。

コウ氏によると、アメリカの所得上位1%と下位1%の平均寿命の差は、男性で最大14歳、女性で10歳になるという。

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最終更新:2019/12/8(日) 20:00
BUSINESS INSIDER JAPAN

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