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「奇跡のバックホーム」を生んだ「松山商・熊本工」の1996年 公立商業校と工業校が活躍し昭和感を蘇らせた時代だった

2019/12/8(日) 12:00配信

高校野球ドットコム

「群雄割拠」「新旧交代」の大会

 時代は平成になってまもなく10年を迎えようかという1996(平成8)年。世の中はバブルが崩壊して、それまで1年半続いていた社会党政権の村山富市首相が退陣して、橋本龍太郎内閣に代わった時代でもあった。消費者物価が、71年以来の初のマイナスとなったという年でもあった。

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 そして、6月の閣議では消費税が翌年の4月1日から5%に上げることが正式決定されたという時代でもある。金融界では大手の東京銀行と三菱銀行が合併して東京三菱銀行が発足するなどの動きもあった。

 一方では、6年後にサッカーW杯の日韓共催が国際サッカー連盟で決定された。MLBのドジャースで活躍していた野茂英雄投手がロッキーズ戦でノーヒットノーランを達成して日本中が沸いたこともあった。高校野球で言えば、夏の大会から甲子園で女子マネージャーのベンチ入りが認められるようになったという画期的な年でもあった。

 そんな年の全国高校野球。第78回大会である。
 この年は、「群雄割拠」「新旧交代」などという四字熟語で語られるような大会でもあったともいえようか。確かに出場校を見てみると、茨城県の水戸短大付、愛知県の愛知産大三河、東東京の岩倉、広島県の高陽東などが、伝統校がひしめく地区から初出場を果たしている。

 その一方で県立岐阜商はじめ松山商、高松商、福井商、富山商や熊本工、北海というような戦前からの伝統校も出場を果たしていた。倉敷工や防府商などの実業校も出場を果たしていた。

 まさに、混然とした中での大会となったのだが、決勝の顔合わせは戦前からの名門校対決となった。愛媛の松山商と熊本の熊本工との対戦である。いわば、中等野球の時代をリードしていた商業校と工業校の代表格といってもいい存在同士の対戦となった。

 ここまで松山商は8対0東海大三(現東海大諏訪) 6対5東海大菅生 8対2新野 5対2鹿児島実 5対2福井商 と下してきて決勝進出。熊本工は12対4山梨学院 5対1高松商 7対6波佐見 3対2前橋工 と勝ち上がってきての進出だ。

 この両校の勝ち進んでいった中の対戦校を見てもおおよそわかるように、この大会では公立校が健闘していた。ベスト8の顔ぶれとしては両校はじめ、福井商、前橋工、高陽東、波佐見と6校が公立校だった。

 公立校勢もまさに新旧入り乱れていたのだが、他には鹿児島実と海星が残っていた。ベスト8に九州勢が4校残った大会でもあった。

 さらにはベスト4では松山商と福井商、熊本工と前橋工という商業校同士、工業校同士という対戦となった。これも古くからの高校野球ファンの興味を刺激する要素の一つとなったとも言えようか。

 そして勝ち上がったのが戦前からの伝統校の松山商と熊本工だった。実は、この年以降は甲子園で公立校同士の決勝も実業校同士の決勝もない。そういう意味では、高校野球の歴史という観点からも非常に意味のある年の大会だったとも言えよう。

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最終更新:2019/12/8(日) 12:00
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