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自分も貧乏なのに、勢いあまって他人に大金を貸したら思わぬ結果となった『文七元結』【東京すたこら落語マップ】

2019/12/8(日) 21:31配信

アーバン ライフ メトロ

吉原などを舞台とした人情噺

 吉原と浅草、吾妻橋付近を舞台とした「文七元結(ぶんしち もっとい)」。大晦日の噺(はなし)として多くの噺家がかける、人情噺の大根多(ネタ)です。登場人物が多く、一度に3人の登場人物を演じ分ける必要があり、さらに場面が目まぐるしく変わるという、力量が必要な難しい噺でもあります。

【地図】主人公・長兵衛の自宅があった「本所達磨横丁」の現在の位置を見る

昭和の大名人であった六代目三遊亭圓生(えんしょう)を始めとする、歴代の大真打が得意としました。あらすじは次のとおり。

※ ※ ※

 本所達磨横丁の左官の長兵衛。腕が良いのに博打に入れ込んでしまい、仕事もせずに借金はかさむばかり。年の瀬も押し迫ったある日、負けが込んで身ぐるみ剥がされ半纏(はんてん)一枚で賭場から家に戻ってみると、娘のお久が帰ってこないと女房が泣いている。長兵衛が真っ当に仕事をしないせいだとなじる女房との夫婦喧嘩の最中、吉原の遊女屋・佐野槌(さのづち)から使いが来て、お久がひとりで店にきていると伝える。

 長兵衛が行ってみると、お久は借金を返すために身を売りにきたという。佐野槌の女将は、お久の優しさに免じて長兵衛に50両の金を工面し、来年の大晦日までに金を返せなかったらお久に客を取らせるという。長兵衛は金を借り、涙ながらにお久を置いて店を後にする。

 待乳山聖天の横で振り返ると吉原の灯。必ず迎えに行くと誓い、吾妻橋を通りかかると身投げしようとしている男に出くわす。

 聞くと男は、横山町の鼈甲(べっこう)問屋・近江屋の奉公人・文七といい、水戸の屋敷で集金して帰る途中、枕橋で50両をすられたらしい。詫びのしようがないから死ぬという文七を思い留まらせようと、長兵衛はお久の身と引き換えに借りた50両を叩きつけて達磨横丁に戻ってきてしまった。

 横山町の近江屋では、文七が戻ってこないため大騒ぎ。実は文七は50両を屋敷に置き忘れてきていた。戻ってきた文七は真実を知り大慌て。主人が詳細を聞き、なんとか50両をくれた人物とその娘を突き止め、翌朝に達磨横丁へ向かった。

 長兵衛の家では激しい大げんか。近江屋が訪ねて文七の失態を謝罪し、長兵衛と親類付き合いをしたいと申し出る。するとそこへ駕籠(かご)が付き、中から出てきたのは綺麗に着飾ったお久。近江屋が身請けをし、借金も返したという。

 文七とお久も似合いの仲ということで、ふたり所帯を持ち麹町隼町(はやぶさちょう)に元結屋(もっといや。髪の根を束ねるための紐を売る店)を開いて仲睦まじく暮らしたという、おめでたいお話し。

※ ※ ※

 この噺は、近代落語の中興の祖である三遊亭圓朝の作。明治40年の初代三遊亭圓右(えんう)の速記によると、「故人圓朝が最も苦心していろいろ演り方を直してきました」とあり、ほぼそのままのストーリーで継承され、現代に至っています。それでは、長兵衛の足取りを実際に追ってみましょう。

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最終更新:2019/12/8(日) 21:31
アーバン ライフ メトロ

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