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中島美嘉&古屋敬多&荒牧慶彦&多和田任益らが問う“自由”と“平等”。ミュージカル『イノサンmusicale』絶賛上演中!

2019/12/9(月) 11:44配信

エムオンプレス

ミュージカル初出演となる歌手の中島美嘉と大ヒットミュージカル『プリシラ』でアダム 役を熱演したLeadの古屋敬多がダブル主演を務めるミュージカル『イノサンmusicale』が、11月29日(金)からヒューリックホール東京にて上演中だ。
原作は『グランドジャンプ』で連載中の坂本眞一による漫画『イノサン』と『イノサンRouge』。18世紀にフランス革命で国王ルイ16世を処刑した実在の死刑執行人の一族“サンソン”の長兄・シャルル-アンリ・サンソンと、妹マリー-ジョセフ・サンソンの人生を描く歴史ドラマだ。
脚本は扉座主宰の横内謙介と宮本亞門、演出は宮本が手がけ、楽曲提供に国内外で活躍するミュージシャンのMIYAVIが名を連ねている。キャスト陣も、梶 裕貴、武田航平、荒牧慶彦、多和田任益、太田基裕、浅野ゆう子など豪華な顔ぶれ。その舞台のゲネプロが初日前に行われた。

【画像】ミュージカル『イノサンmusicale』ゲネプロ様子

※ダブルキャストのアラン・ベルナール 役は梶 裕貴が務めた。

取材・文・撮影 / 竹下力 

見せかけの自由しか与えられない閉塞した社会への苛立ち
教室に学生たちが集まってくる。出で立ちは今風。手にはスマートフォンや教科書を持っている。浅野ゆう子が扮する、いかにもひと言ありそうな女性の先生が「あなたたちは選ばれた人間で、社会から脱落は許されない」といった発破をかける。威圧的で子供たちへの愛情のかけらも感じられない。教室を取り囲む先生も、生徒たちを監視し、暴言を吐き、乱暴に扱う。そこに“自由”な気風はない。

そして18世紀のパリのフランス革命の講義が始まる。ここで、楽曲提供のMIYAVIのロングトーンのギターソロが鳴り響き、死刑執行人として活躍したシャルル-アンリ・サンソン(古屋敬多)のことが話される。すると、古屋敬多が扮する高校生の衣裳が次々に剥がれ、“拷問=教育”をされていくシーンになり、突如、舞台は18世紀へと変わっていく。

ここからいくつかのメッセージを感じる。フランス革命時に生きていた子供たちは、現代の子供たちと変わらない年頃であること。彼らはみな、情愛と不安の間を揺れ動きながら、永続的な何かを求めていること。親や政治家や先生など、権力を持つ存在に不躾に扱われていること。演出の宮本亞門は、オープニングから人間と時代を上手にシンクロさせた見事な手腕を発揮する。

死刑執行人の家系のシャルル-アンリ・サンソンは、立派な死刑執行人になろうとするのだが、うまくいかない。優しい性格ゆえか、罪人を前にしても、死刑執行の良し悪しについて思い悩んでしまう。そんなときに、勝気な妹のマリー-ジョセフ・サンソン(中島美嘉)が、女性が執行人になることは許されていないのに、兄の代わりに処刑を実行してしまう。彼女はシャルル-アンリ・サンソンの母のアンヌ-マルト(浅野ゆう子)に罰を受けながらも、兄の嘆願により貴族たちから許され、これまで男性しか立つことのできなかった処刑台で采配を振るうことになる。そうして彼女は初めて女性として死刑執行人となる。

そこから、シャルル-アンリ・サンソンは友であるルイ-オーギュスト(太田基裕)、マリー-ジョセフ・サンソンはアラン・ベルナール(梶 裕貴)たちと出会う。しかし、この若き子供たちは、社会や大人たちの事情に引き裂かれ、友愛を育む時間は許されていなかった。混沌と無秩序の時代。そこには、第一身分の聖職者、第二身分のシャルル-アンリ・サンソンたち貴族、平民の第三身分というアンシャン・レジーム(身分制度)があったからだ。

そんな世の中で、第三身分を代表してジャック(荒牧慶彦)は、“自由”と“平等”を獲得すべく革命を訴え始め、父親の罪を被った平民のオリビエ・ルシャール(多和田任益)の死刑が執り行われようとしていたときに事件が起き、時代は風雲急を告げることに。

古屋敬多は、サンソン家の職業である死刑執行人の刻印ゆえ、あるいは両親の暴力的な教育のせいで、死刑執行はしたくないのに、人を殺さなければならないオブセッションに悩む、シャルル-アンリ・サンソン役を演じきった。人は矛盾を抱えながらも、残酷になれることを知って怖くなる。家業のためにあらゆる罪人を殺し、しまいには、両親を失い、友を失い、深い絶望感に襲われ孤独になっていく。その様子には、人間らしさと同時に悲しさが募っている。古屋は人間がまっすぐに生きることの難しさを体現していた。

マリー-ジョセフ・サンソンを演じた中島美嘉は、「最悪」が口癖の男勝りで風変わりな性格の役を熱演。彼女の凄さは、声高に女性の権利を叫ばなくても、姿勢を正し、堂々と闊歩するだけで、正義を訴える佇まいがあること。女性は男性の所有物だと言われた時代に、悠然と、果敢と男性貴族に立ち向かったマリー-ジョセフ・サンソンの勇気には感服せざるを得ない。「自分のことは自分で考えろ」といった力強い言葉をぶっきらぼうに言い放つのも自立した女性そのもの。中島の生き様にも通じる芯の強さが魅力的に輝いた。

また、多和田任益は、ダンスシーンでのダンスは華やかで、芝居も卓抜で見どころたっぷりだ。太田基裕が演じる毅然とした国王は凛と輝き、台詞を発さなくても存在感があった。

さらに、恵まれない子供たちのために生きようと殉じ、時代に揉まれながらも希望を抱くアラン・ベルナールを務めた梶 裕貴の芝居に感動した。フランス革命へと誘うキーパーソンを演じた荒牧慶彦は、社会の不正義に抗う戦士を果敢に演じており、殺陣も俊敏で素晴らしく、台詞回しも達者だった。

MIYAVIが参加した様々なミュージカルナンバーも、ロックでスリリングな曲調が多かった。音楽監督・作曲の深沢桂子との相性は抜群で、カンパニーの歌がしっかり耳に響いた。貴城けいや小南満佑子の歌は相変わらず美しい。古屋や中島がデュエットやソロをとると、ハモリも声の伸びやかさも完璧な出来栄えで心が震えた。

演出の宮本亞門と脚本の横内謙介のタッグは、原作の良さを抽出しながら、換骨奪胎して、舞台版ならではの『イノサンmusicale』に仕上げたと思う。メッセージ性は深いが、エンタテインメントとしても成立させている。

この舞台は、何百年前から続く人間の暴力の連鎖と、か弱き者への搾取の構造を暴き出し、現代社会へ“自由”と“平等”の必要性を問いかける。答えは提示されない。それは芝居と歌の中にある。“自由”と“平等”が謳われている現代でも、不正が横行しているように見えるのに、それを律する人々は沈黙したままだ。舞台に、見せかけの自由しか与えられない閉塞した社会への苛立ちが漲っていたように感じられた。

たしかに、“自由と平等とは?”と問われれば、不意に口ごもってしまう。本来あるべきはずの答えを堂々と答えることができない。それは時代の気分、社会のルールが、個人の感情を隠蔽してしまうからだろうか? この舞台でその答えに近づけるかもしれないと思った。そして、我々は真の“自由”と“平等”を勝ちとるまで闘いを止めるべきではない。その勇気を与えてくれる。

公演は2019年12月10日(火)までヒューリックホール東京にて上演。2020年2月9日(日)には、パレ・デ・コングレ・ド・パリでパリ公演がある。

中島美嘉&古屋敬多&荒牧慶彦&多和田任益らが問う“自由”と“平等”。ミュージカル『イノサンmusicale』絶賛上演中!は、【es】エンタメステーションへ。

最終更新:2019/12/9(月) 11:44
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