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野生種の種子を「インディ・ジョーンズ」のように探し求めて科学者が探検 気候変動見据えて

2019/12/9(月) 17:27配信

The Guardian

【記者:Phoebe Weston】
 農作物の栽培環境がますます予測不能になる中、主要農作物の遺伝子プールを拡大し、世界の食糧安全保障を確保するため、一般的な農作物の近縁種にあたる野生植物を世界規模で調査するプロジェクトに25か国の研究者100人が参加。この6年間で、研究者らは映画の「インディ・ジョーンズ」のように世界中の人里離れた場所に旅をして、時には馬やカヌー、さらにはゾウに乗って370種類を超える野生近縁種の種子を収集してきた。

 栽培作物に選ばれる判断基準は一般的に、収穫率と栄養価の高さだ。しかしこれは同時に、農作物の遺伝的多様性が危険なまでに低いということも意味する。一方、野生近縁種(多くは絶滅のリスクにひんしている)は、より過酷な環境で生き延びるよう進化してきたため、栽培種と比べると丈夫だ。

 世界適応委員会の報告書によると、農作物は、気候変動の危機に順応しなければ、生産高は2050年までに最大で30%減少する可能性がある。育種家は、栽培種と味も見た目も似ていながら、干ばつや洪水、極端な気温への耐性が強い新たな品種開発を目指している。

 これまでに集められた野生植物はさまざまな重要作物の近縁種だと説明するのは、世界作物多様財団(GCDT)の主任研究員であるハンネス・デンペウルフ氏だ。

「これらの野生植物には、90億人に提供可能な栄養価の高い作物を改良するのに必要な遺伝的多様性がある」

 GCDTの報告書によると、数十億人が基本栄養素として食べているコメ、大麦、豆、ジャガイモなどの「作物の野生近縁種(CWR)」調査プロジェクトに参加した研究者らは、野外でのべ2973日過ごし、371種の野生近縁種から4644粒の標本種子を採取した。

 研究者らはまず、世界中の種子の遺伝子バンクを調査し、危険なレベルにまで多様性が低い種子を特定。その後、アジア、アフリカ、欧州、南米各地に種子探しの旅に出た。新たに野生近縁種が見つかった場所はGPS(全地球測位システム)で記録していきながら、ネパールで種子探しをした研究者らは、トラやサイに襲われないようゾウに乗って移動し、イネ白葉枯病に強い野生のコメ(Oryza meyeriana)の品種を発見。害虫に強く、塩分を含んだ土壌でも成長するサツマイモ属のモミジヒルガオ(Ipomoea cairica)の近縁種の種子も採取した。

 エクアドルでは、毒ヘビにかまれないよう、先に金属が入っているゴム長靴を履き、洪水に強い南米固有の多収獲米(Oryza grandiglumi)の品種を採取。ケニア東部ラムでは、イスラム過激派武装勢力「アルシャバーブ」に襲撃される恐れがあるため、種子探しを断念。ナイジェリアでは、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の影響で2015年と2016年には調査を見送ったが、2017年には研究者らが現地に足を運んだ。

 デンペウルフ氏は言う。「種子探検は、たやすい仕事ではなかった。極めて危険な場合もあり、暑さ、砂ぼこり、汗、血を吸うヒルからトラまで、野生動物との闘いでもあった。現地から種子を持ち帰った研究者らの話は、まるで『インディ・ジョーンズ』のようだ」

 植物が熟して種子が採取できる期間はわずかしかないため、現地にたどり着いたのが早過ぎて、もう一度行かなければならないこともあれば、遅過ぎて、翌年まで待たなければならないこともあったという。

 こうした作物の多くは、森林破壊、都市が郊外に無秩序に広がる「スプロール現象」、紛争、気候危機などで絶滅の危機にひんしている。

 研究者らは、この作業はこれまでにないほど重要なものとなっていると話す。GCDTのマリー・ハガ事務局長(退任予定)は、次のように説明した。「増加を続ける人口に食糧を行き渡らせるには、食用作物の耐性を高める必要がある。作物の野生近縁種は “気候変動に強い”多様な品種を新たに開発する上でも助けとなり得る」

 作物の野生近縁種同士は、同じ「遺伝子プール」に属しているため、別品種でありながら、遺伝的特質を互いに交換できる。収集された標本種子は、あらゆる場所の育種家や農業従事者が利用できるようになっており、栽培種との交配も可能だ。

 これまでに38か国の提携先と19種の作物の開発が進められている。【翻訳編集】AFPBB News

「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

最終更新:2019/12/10(火) 6:42
The Guardian

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