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富山市庵谷からの教訓 クマ寄せ付けない対策とは/富山

2019/12/9(月) 20:48配信

チューリップテレビ

 山でドングリが凶作となった今シーズン、人里でクマの出没が相次ぎました。

 こちらは、過去10年間のクマの出没件数をまとめたものですが、今シーズンは、8日現在で901件。
 そして、人身被害は、過去2番めに多い20人にのぼりました。
 クマを人里に寄せ付けないために何ができるのか、富山市には、山間部の集落にも関わらず、この秋、クマが全く目撃されなった集落があります。
 地区全体で行ったのは、一体どんな取り組みだったんでしょうか。
 今年10月に富山市大山地域で撮影された庭の木の上で何かを食べ続ける1頭のクマ。
 一心不乱にむさぼっているのは、庭に実ったカキの実でした。

 「丸々と太っていて筋骨隆々で怖かった」(撮影した男性)

 今シーズン、県内のクマの出没件数はおよそ900件と、異常出没の年となりました。
 人身被害も20人にのぼり、統計を始めてから過去2番目の多さです。
 その被害現場の近くで多く見つかったのが、カキの木でした。
 富山市上滝で、男性3人がクマに襲われた現場近くのカキの木も。

 「あそこのカキの木にも爪あと」
 「9日朝もうなくなっていた。昨晩食べたんじゃないか」(男性)

 しかし、クマが異常出没した今年、山間部にも関わらず、クマの目撃情報がなかった地区がありました。
 岐阜県との県境に近い富山市の庵谷地区では、クマの出没に、ある対策で先手を打っていたのです。

 「対策が施されたというお宅の庭にお邪魔しているんですけれどもあちらには幹だけが残った切り株があります。こちら、柿の木だということです」(記者)

 庵谷(いおりだに)地区で行ったのは、民家のカキの木の伐採や、枝打ちでした。
 県内各地でクマの出没が相次ぐ中、10月初旬、住民たちで、地区の半数にあたる20軒の民家で、カキの木75本を伐採しました。
 地区の半数以上が、高齢者世帯の庵谷では、実がついたまま放置されたカキの木が至るところにありましたが、伐採してから、クマの目撃情報は一切無くなりました。

 「前々から切りたいと思っていたんですけど、高いところにあって中々切れなかったもんで」
 「来た跡はあったみたいですけど、クマを見たという人はいなかったですね」
 「良かったです。サルも来なくなったし」(伐採を依頼した木下百合子さん)

 庵谷地区の自治会長として、住民による柿の木の伐採を取り仕切ったのが、県の自然植物園「ねいの里」の野生鳥獣共生管理員赤座久明(あかざひさあき)さんです。

 「不要な果樹は放置しないで、それは野生動物を育てることになるから。それを取り除く」
 「クマ対策だけじゃなくてちょっと最近手を焼いている加害動物たちに、えさを与えなくして自然淘汰の中で数を落とさせていくっていう効果が私は期待できると思う」(庵谷自治会長・赤座久明さん)

 今月5日、この富山市庵谷地区を、県や各市町村の鳥獣被害対策の担当者が視察に訪れました。

 「ここが良い餌場になっていて追うと杉やぶに逃げる」(赤座さん)

 実は、この視察、クマ対策ではなく、サル被害の防止ために行われたものでした。
 赤座さんは、柿の木の伐採はクマだけではなくサルやイノシシの被害を防ぐ効果もあると考えています。

 参加した自治体の担当者は。
 「サルやクマが柿の木に登って実を食べて、落ちたものをイノシシが食べる。伐採することで3ついっぺんに居なくなるかなと思っています」(立山町職員)

 しかし、この柿の木の伐採、チェーンソーのガソリン代や手伝った住民への日当など、トータル13万5千円の費用はすべて自治会費でまかないました。
 小さな集落には、重い負担です。

 「それ(えさとなる木)がある限、野生動物が山から下りてきて、人身被害がおきているのはわかっている。その原因を絶つような手立てを知恵を出して考えていただきたい。財政的な後押しがあると非常に心強い」(赤座さん)

 一方、クマによる人身被害の発生を受けて、カキの木の伐採に乗り出した自治体もありました。
 立山町では、先月下旬から75歳以上の高齢者世帯の希望に応じて、町が、柿の木の伐採を始めました。
 これまで、7世帯で40本を伐採しました。
 冬眠の時期が近づきクマの出没件数は激減していますが、赤座さんは油断せず、今からでも対策を行うべきだと強調します。

 「終わったからといって、対策を止めてはいけない。クマの食料危機があってもそれを村の庭の柿の木に依存させないような状況を作れば、これだけたくさん人里に定着するようなことは無いと思います」(赤座さん)

 山間部を中心に、高齢者だけの世帯や空き家が増えています。
 クマやイノシシをおびき寄せるカキの木を放置しないため、財政支援を含めた新たな対策が求められています。
 立山町が民家のカキの木の伐採の代行に乗り出しましたが、高齢化した集落では、費用や人出の確保などが困難になっていきますから、公的な支援というのも今後ますます重要になってきますね。

 富山市庵谷の自治会長で、「ねいの里」の赤座さんは、その場しのぎの対策ではなく、「クマが山から下りてきて集落に定着する原因を取り除くのが、一番大事」だとしていて、民家のカキの木の伐採のような取り組みを公的な支援のもとで計画的に行えないかと提案しています。
 そして、クマの異常出没は、県内での「今年最大の自然災害」だと話していて、地震や津波のようにクマに対してもまたいつかやってくる災害と捉えて、クマへの対策を止めてはいけないとしています。
 確かに、また今年のようにドングリが不作になると被害が起こる可能性が高いわけですから、災害と捉えて備えておく事前の対策は重要ですね。
 さて、12月に入り、クマの冬眠シーズンが近づき、今月の出没件数は、7件と激減していますが、8日も富山市町長でクマと車が衝突するなど、出没がなくなったわけではないんです。
 おととしには、12月13日に南砺市福光地域で高齢女性がクマに腕をかまれる被害も発生しています。
 このおととしの現場では、発生当日、雪も積もっていたということで、異常出没があった今年は特に、放置されている柿の実は取り除くなど、まだしばらく注意が必要です。

チューリップテレビ

最終更新:2019/12/9(月) 20:48
チューリップテレビ

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