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「本当にパイロット問題だけなのか」羽田・成田が疑問抱く”ANAが飛べない理由”

2019/12/10(火) 10:54配信

Aviation Wire

 「発着枠があるなら飛ばしたい。(デイリーではなく)週4便でもいい」。海外の航空会社幹部は、羽田空港の国際線発着枠について、こう本音を漏らした。羽田では2020年3月29日開始の夏ダイヤから発着枠が50枠(便)増枠され、日本と相手国の航空会社に25枠ずつ配分された。

 そこまでは単なる発着枠の配分なのだが、今回は海外勢や地元自治体が顔をしかめる事態が起きている。日本側の25枠は、全日本空輸(ANA/NH)に13.5枠、日本航空(JAL/JL、9201)に11.5枠と、従来は大差がついた傾斜配分から均等配分に近い形で落ち着いた。

◆「本当に言う通りなのか」

 しかし、JALが夏ダイヤ初日から新路線を開設するのに対し、ANAは成田から移管する米国路線など一部を除き、大半の就航日が明確になっていない。1日1往復(週7往復)で運航するとなると、早くても夏の繁忙期前になる公算が高い。その上、羽田から成田へ路線移管後、成田の便数が移管前の水準に戻るまで、早くても1年はかかる見通しだ。

 今回の増枠は、さらなる訪日客の受け入れといった観光政策だけではなく、都心上空を飛行する新飛行経路が各自治体から了承されたことで実現した。このため、関係自治体は各社の新路線が夏ダイヤ開始とともに羽田へ就航することを前提として、騒音対策や住民への説明を進めてきた。

 ANAは夏ダイヤ初日からスタートできない路線が多く生じる理由として、パイロットなどの乗員繰りをはじめとする運航体制の移行期だからだと説明する。

 しかし、都内の自治体からは「本当にANAが言うパイロット問題だけなのだろうか」と、その理由に疑問を抱く声も聞かれる。

◆成田回復遅れるANA

 一方、成田の周辺自治体も、2020年度内にも羽田移管前と同レベルの路線数に戻ることを前提に、今回の羽田新路線を了承してきた経緯がある。成田空港を運営する成田国際空港会社(NAA)は「ANAの発表以上の説明は聞いていない」と、海外勢も含め大挙して羽田移管が進む中、ANAの不透明な態度に不満をにじます。

 対するJALは、成田空港を発着する国際線を強化する方針を打ち出している。2020年度内に3-5路線拡充する計画で、羽田は国内線と国際線を結ぶ「内際ハブ」、成田は国際線同士を結ぶ「際際ハブ」と、役割を分担させる。ANAも同様に「デュアルハブ」戦略を打ち出しているが、羽田移管後の成田の扱いに差が出てきた。

 ANAもJALも、成田から羽田へ路線を移管することなどから、一時的に成田の便数が減るものの、徐々に戻していく計画だ。JALは自社便で移管前と同等か微増とした上で、2020年5月に就航予定の100%出資の中長距離LCCであるZIPAIR(ジップエア)の路線を積み増す。これに対し、関係者の話を総合すると、ANAが2020年度内に移管前と同等の規模に戻すことは難しそうだ。

◆どうなる成田

 パイロット不足は両社共通の悩みだが、成田では地元にとってトラウマとも言える出来事が今から4年前にあった。ヴァージン アトランティック航空(VIR/VS)の撤退による、ANAの成田-ロンドン線のコードシェア消滅だ。

 2010年10月に羽田空港が再国際化した際、羽田から航空会社が国際線を運航する場合は、成田からも同じ国へ向かう便を残すという、国土交通省航空局(JCAB)や自治体と航空会社間の取り決め、いわゆる「成田縛り」が交わされた。2015年2月にヴァージンが日本から撤退した際、ANAは羽田へ自社のロンドン線を移していたため、成田縛りに従うと成田からロンドン線を復活させ、両空港から運航しなければならなかった。

 しかし、4年が過ぎた現在もANAのロンドン線は羽田発着のみで、成田便は復活していない。乗り入れ先であるヒースロー空港の発着枠に余裕がないことや、需給バランスといった複合的な要因によるものだが、地元では“紳士協定”が反故(ほご)にされたと受け止める関係者もいた。その後もパリ線撤退、ブリュッセル線就航と、羽田再国際化の前と比べると、欧米の主要都市と日本を結んでいた成田の位置づけは様変わりしていく。

 今回の増枠による路線移管も、ヴァージン撤退の時と同様、再びANAの国際線が縮小されるのではとの不安が地元を覆う。

 公共財である発着枠の有効活用という観点では、現在の発着枠が配分されたにもかかわらず、ANAの計画がなかなか明確にならない点は、監督する国交省だけではなく、海外の航空会社も厳しい目を向ける。訪日客数の伸びが鈍化していることからも、少しでも多くの利用者を運ぶことが、増枠する本来の意義だ。

 弊紙が独自取材で報じたように、ANAは夏ダイヤ初日から運航できない路線のうち、羽田-ミラノ線を深夜便で週3往復運航する方針だ(関連記事)。本来、昼間時間帯(午前6時から午後10時55分まで)の発着枠を獲得すれば、深夜早朝帯(午後10時から翌日午前6時55分まで)も飛ばせるものの、昼便のほうがより多くの利用者が見込める。深夜早朝にミラノ線を飛ばす理由としては、機材や乗員繰りが関係しているようだ。

 大きな変革期を迎える羽田。一時的に羽田や成田の便数に変化が生じるのは致し方ないだろう。しかし、今回は羽田の飛行ルート変更など、周辺自治体も巻き込んだ発着枠拡大であり、訪日外国人のさらなる獲得を考えると、夏ダイヤ初日から有効活用されない発着枠が生じること自体が問題であり、国として損失につながる。

 路線を開設したい海外の航空会社があるならば、一定の条件を設けてでも、有効活用するほうが我が国の発展に少しでもつながるのではないだろうか。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:2019/12/10(火) 11:18
Aviation Wire

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