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見た目を裏切らない! テスラ「モデル3」の走りが新鮮だった

2019/12/10(火) 12:11配信

マイナビニュース

テスラの新型車であり、同社ラインアップの中では私たちに最も身近な車種である「モデル3」は、従来の自動車メーカーが作る電気自動車(EV)とさまざまな部分で違いがある。前回は革新的なデザインについて解説したが、今回は鮮烈な走りについて報告しよう。

【写真】グリルがない? 斬新なフロントフェイス

フル充電で500キロ以上を走破可能

日本で購入できるテスラ「モデル3」には、1モーター後輪駆動の「スタンダードプラス」、2モーター4輪駆動の「ロングレンジAWD」および「パフォーマンス」の3グレードがある。

3つのグレードでは、モーターの性能や駆動用バッテリーの容量が異なる。WLTPモードによる航続距離は、スタンダードプラスが409キロ、ロングレンジAWDが560キロ、パフォーマンスが530キロで、ロングレンジAWDが最も距離を走れる。それに対し、停止状態から時速100キロまでの加速(ゼロヒャク加速)は5.6秒、4.6秒、3.4秒で、パフォーマンスが最速。価格は511万円、655万2,000円、717万3,000円だ。

筆者が試乗したのは、中間グレードの「ロングレンジAWD」だった。個人的に日本仕様のモデル3から選ぶとしたら、満充電での航続距離が長く、性能と価格のバランスが取れたこれを選ぶと思う。

前回の記事で書いたとおり、米国では、スマートフォンの専用アプリをキー代わりに使用してモデル3を解錠できるのだが、日本仕様はまだ認証が取れていないので、カード型キーをセンターピラーにかざしてロックを解除する。ボディに埋め込まれたドアハンドル後端の太くなった部分を押すと細い側が浮き出るので、そこをつかんでドアを開け、モデル3に乗り込んだ。

運転席でまず感じたのは、インパネの低さのおかげで大きく開けた前方視界と、センターの15インチディスプレイ以外はステアリングとコラムレバーぐらいしかないシンプルさだ。速度計はディスプレイの右上に表示されるが、視認性に問題はない。

ちなみに、ドアミラーの角度やステアリングの位置も、このディスプレイで機能を呼び出したあと、ステアリングのスポークにある丸いダイヤルで調節する。日本仕様は右ハンドルだが、ドライビングポジションに違和感は抱かなかった。シートはドイツ車と比べるとソフトな掛け心地で、アメリカ車らしい。

コラムレバーはメルセデス・ベンツからの流用を止め、専用設計となっている。操作方法は以前と同じで、左のレバーでウインカーとワイパーをコントロールできる。右はドライブセレクターで、レバーを上に上げると「R」(リバース)、下に下げると「D」(ドライブ)、軸方向に押すと「P」(パーキング)レンジになる。

強力かつ俊敏、でも自然な加速

走り出しまでの動作も独特だ。運転席に乗り込んだ時点でシステムはオンになっているので、ドライビングポジションを合わせ、シートベルトを装着し、セレクターレバーをDレンジに入れれば発進する。

ただし、乗り込んですぐに走り出さないと、システムはオフになる。この場合、センターコンソール後方のセンサーにキーをかざすと、システムは再びオンになる。スマートフォンやパソコンをスリープから立ち上げる時、パスワードを入力する操作に似ている。

走り出してまず感じるのは、加減速が自然であること。EVの製造に豊富な経験を持つブランドらしい。それでいて、アクセルペダルを大きく踏み込んだ時の瞬発力は、大排気量のモーターサイクルを思わせる。

しかも速い。最初に書いたように、ゼロヒャク加速は4.6秒と、今年新型に切り替わったポルシェ「911」の4.2秒に匹敵する。しかも、モーターは超低回転で最大トルクを発生するので、発進直後から強力な加速が味わえる。そのフィーリングは異次元という言葉がふさわしい。

ひとまわり大きな「モデルS」と比べてもレスポンスが良くなった。同じロングレンジグレードで、モデルSの車両重量は2,290キロもあるのに対し、モデル3は1,847キロと約450キロも軽いことが大きい。全長がほぼ同じジャガー「I-PACE」の重量はモデルS並みだ。大容量バッテリーを積むEVとして、モデル3はかなり軽量なのである。

回生ブレーキは強すぎることはなく、唐突感もないので、すぐに慣れた。ただし、停止直前まで減速してはいくものの、最後はブレーキペダルを踏まないと完全に停止しないので、いわゆるワンペダルドライブではない。

加速、回生ブレーキ、操縦モードのレベルは、ディスプレイで切り替えることが可能だ。試乗は主に加速と操縦を標準、回生をスタンダードにして行ったが、穏やかな走りを好む人は加速と操縦をコンフォート、回生をローモードにすると良いだろう。

EVなのでエンジン音はない上、ロードノイズも抑えられているので車内は静かだ。乗り心地はまろやかでアメリカ車らしい。大きめの段差や継ぎ目は正直に伝えがちで、通過音が響いてくるものの、それ以外は安楽だ。

テスラはモデルSでも、初期のモデルは硬くてサスペンションがあまり動かない、ドイツのスポーツモデルのような乗り心地だったが、今年春に乗った最新型はしっとり感を手に入れていた。モデル3も、その延長線上にあると認識した。

電動化だけでは得られない新世界

東京都内で1日乗った限り、取り回しに苦労することはなかった。窓が大きくて視界が良いことに加え、全長は5ナンバー枠内、全幅は1.85m未満と、日本の交通事情を考慮したようなボディサイズとなっていることも大きい。

コーナーではまず、重心の低さを実感する。前席頭上にガラスルーフを備え、リアウインドーはセンターピラーまで伸びているのに、それを感じない。逆にいえば、重心が低いからこそ、大きなウインドーが実現できているのである。この点でも、テスラがEVを知り尽くしたブランドであることを教えられる。

しかも、前後重量配分はほぼ50:50と理想的な数値を実現している。よって、重量1.8トン級のセダンとは思えないほど身のこなしは軽快で、コーナーの立ち上がりではAWDらしく、4輪で路面を蹴って加速していく。これこそ、乗用車にとって理想的なハンドリングでは? と思ってしまうほどだ。

テスラが早くから装備していた「アダプティブ・クルーズ・コントロール」(ACC)の精度はハイレベルで、経験の長さを教えられる。しかもモデル3では、セレクターレバーをDレンジの方向に2度押し下げるだけで起動ができる。かなり楽な操作系だ。

ACCを含めた運転支援のルールは国や地域によって違うので、日本仕様は日本の交通ルールに合わせてあるが、スマートフォンやパソコンと同じように、ソフトウェアのアップデートという手法で自動化のレベルを上げていくことも可能だ。

多くの老舗自動車ブランドでは、性能や装備をバージョンアップしたくなった場合、クルマを買い換えるしか手がない。でもテスラなら、買い換える必要はない。ユーザーにとってどちらがありがたいかは、いうまでもないだろう。

充電についてテスラは、「スーパーチャージャー」と呼ばれる高電圧の専用充電器の設置を奨励しており、主要都市や観光地への配備も進めている。チャデモ(CHAdeMO)や一般充電(200V)に対応するアダプターも用意してある。充電口は左リアコンビランプの脇にあり、前後フード同様、インパネ中央のディスプレイで操作して蓋を開ける。

長野に住む筆者の知人は先日、京都府で行われた会議に参加すべく、所有するモデルSで自走して向かったそうだが、岐阜にスーパーチャージャー充電施設があるので、行き帰りとも、そこで充電するだけで、片道約400キロの距離を難なく走破できたという。モデル3も、こうした使い方が可能だろう。

モデル3と付き合って感じたのは、テスラはまったく新しいクルマを作ろうと考え、そのための手段としてEVを選んだのではないかということだ。それほどまでに、デザインから走りまで、全てが新鮮だったのだ。テスラ車では毎度のことだが、今回のモデル3では、老舗ブランドが使う「電動化」という言葉は当てはまらない発想の違い、思想の違いを今まで以上に痛感した。


著者情報:森口将之(モリグチ・マサユキ)

1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。

森口将之

最終更新:2019/12/10(火) 12:11
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