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マツダが世界初の新エンジンをあえて出すわけ

2019/12/10(火) 11:32配信

ニュースソクラ

ガソリンとディーゼルの「いいとこ取り」

 マツダはスパークプラグを使わず、ガソリンと空気の混合気を高圧縮にすることで着火させる新世代のガソリンエンジンを世界で初めて開発したと発表した。マツダ3に搭載し、12月5日から全国で発売する。マスコミでは大きく取り上げられなかったが、このエンジンはマツダが「世界初」と名乗るだけあって、意欲的な発明といえる。

 通常のガソリンエンジンはガソリンと空気を混ぜた混合気をシリンダー内で圧縮し、スパークプラグで着火し爆発させることで動力を得ている。一方、ディーゼルエンジンは軽油と空気の混合気をガソリンエンジンよりも高圧縮にすることで、自然に着火・爆発させている。このためディーゼルエンジンはスパークプラグを使わないのが特徴だ。

 ディーゼルエンジンは高圧縮で爆発させるため、低回転で大きなトルクを得られる。このため、発進と停止を繰り返す街中などでは運転しやすい。しかし、ガソリンエンジンに比べると高回転まで回らないほか、エンジンの強度を確保するため重くなり、うるさいのが難点だった。

 一般にはあまり知られていないが、救急車がディーゼルエンジンを使わず、ガソリンエンジンを使うのは、騒音対策のためという。ディーゼルエンジンの救急車が深夜、住宅地に立ち入ると、住民から苦情が出やすいのだという。最近のディーゼル車は一昔前に比べれば格段に静かになったが、救急車を納入する自動車メーカーも、採用する自治体もガソリン車が主流なのは騒音問題があるからだ。

 マツダの新エンジンは「SKYACTIV-X」と呼ばれ、「ガソリンエンジンならではの高回転までの伸びの良さと、ディーゼルエンジンの優れた燃費、トルク、応答性といった特長を融合した」という。

 マツダは「ディーゼルエンジンの特長であるリーンバーン(希薄燃焼)をガソリンエンジンでも可能とし、エンジン始動時から加速時まで少ない燃料で高効率な燃焼を行い、燃費の向上に貢献する」と説明する。

 マツダ3に搭載する新エンジンは、排気量2リッターの直列4気筒DOHC16バルブで、圧縮比は15.0と高い。最高出力は132kW(180ps)/6000rpm、224N・(22.8kgf・m)/3000rpmとなっている。

 マツダ3はエンジンのバリエーションが豊富だ。従来型のガソリンエンジンは、同じ2リッターで最高出力が115kW(156PS)/6000rpm、最大トルクが199N・m(20.3kgf・m)/4000rpm。ディーゼルは1.8リッターで85kW(116PS)/4000rpm、270N・m(27.5kgf・m)/1600~2600rpmとなっている。

 燃費は新エンジンが17.2~18.2km/L、従来型ガソリンエンジンが15.6~17.8km/L、ディーゼルエンジンが 19.8~20.0km/Lとなっている(いずれもFF。WLTCモード)。

 いずれのスペックを見てもわかるように、新エンジンは従来型ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの中間に位置している。低回転で従来型ガソリンエンジンより高い最大トルクを出しているのが特徴だ。

 新エンジンで気になるのは、やはり騒音だ。マツダは「エンジンを吸音材で囲み、カプセル化することにより、静粛かつクリアで気持ちの良いサウンドを実現した」と説明する。換言すれば、そこまでしないと旧来のガソリンエンジンほどの静粛性を保てないということか。

 新エンジンはリチウムイオン電池と小型モーターを組み合わせた「マイルドハイブッドカー」でもある。マツダはエンジンの革新だけでなく、電動化も決して忘れていない。このマイルドハイブリッドをマツダは「M Hybrid(エム ハイブリッド)」と呼び、「滑らかで気持ちよい走りと効率的な燃料消費をサポートする」としている。

 マツダは先の東京モーターショーで、2020年市販予定の電気自動車(EV)を出品した。しかし、航続距離を敢えて200キロ程度と、低く抑えている。これは、日産リーフやテスラのように航続距離を伸ばすため、リチウムイオン電池の容量を大きくすればするほど、充電に時間がかかるからだ。

 ホンダも同じく市販するEVの航続距離を200キロ程度としているのは、充電時間の使い勝手を考えてのことだろう。

 さらにEVは急速充電を繰り返すほど電池が劣化し、数年で航続距離が低下する。自動車が世界的に電動化の方向に向かうのは間違いないが、現状のEVは解決すべき課題が多い。EVが世界で普及すればするほど、この問題が一般のユーザーに認識されるに違いない。

 マツダが内燃機関のエンジンにこだわるのは、それがわかっているからなのだろう。いずれにしても、近年のマツダは日本メーカーで最もエンジン開発に意欲的だ。果たして、この新エンジンが市場で評価され、他社に影響を与えるかどうか注目される。

岩城 諒 (経済ジャーナリスト)

最終更新:2019/12/10(火) 11:32
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