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低価格化進むエステサロン 競争激化で収入高は伸び悩み

2019/12/11(水) 15:15配信

帝国データバンク

 近年、街や電車でよく見かけるエステサロンの広告。日頃頑張ったご褒美や自分磨きのためにすでに通っている人、これから通おうと考えている人は多いだろう。冬場は予約が集中する夏を避けて、脱毛を始める人が意外と多いそうだ。

 かつて富裕層向けのイメージが強かったエステサロンだが、近年は低価格化が進み、多くの女性が利用している。また、男性向けのエステサロンも増加し、男女ともにエステサロンに対する垣根は下がっている。

 その一方で、施術に関するトラブルや従業員の給与・労働環境問題など、多くの課題を抱えているのが業界の現状といえる。

近年の収入高合計は1500億円台で推移 エステサロン経営業者の約4割は東京・大阪・愛知に集中

 エステサロンは、美顔、痩身、脱毛の3つに大別される。総務省「家計調査(総世帯)」によると、2018年のエステを含む他の理美容代は1万7318円(前年比2.4%減)となった。直近1年では減少したものの、10年前の2008年(1万5124円)と比較すると、14.5%増加している。

 では、経営実態はどうなっているのか。帝国データバンクの企業概要データベースCOSMOS2(147万社収録)から、エステサロンの経営を手がける事業者347社を抽出し、分析した。

 同347社のうち、過去5年間の業績比較が可能な286社の収入高合計の推移を見ると、2018年度は1542億9700万円(前年比2.0%減)となった。支出金額が増加傾向にあるにも関わらず、近年は1500億円台で推移している。その背景として、エステサロンで提供されるサービスの低価格化や、家で使える美容家電の普及が考えられる。

 また、同347社の所在地を都道府県別に見ると、東京都(83社)が最多となり、大阪府(38社)、愛知県(24社)が続いた。これまで大手企業を中心に地方に進出するのが一般的だったが、撤退が相次ぎ、結果として東京・大阪・愛知の3都府県に約4割が集中する。

エステティシャンの待遇改善が重要課題

 施術機器の性能は大幅に向上しているが、美顔や痩身といった繊細な施術はエステティシャンが行うことが多い。各エステティシャンの技術力による施術効果の差が大きく、その技術は一朝一夕では身につかない。施術や接客の教育を強化し、よりよいサービスを提供できるようにすることが、各企業に求められている。

 また、エステティシャンには女性が圧倒的に多く、かつエステサロンは夜型営業という特徴があるため、結婚や出産などで休職・退職するエステティシャンが多い。一部では優秀なエステティシャンをつなぎとめるため、教育制度・研修制度の充実、産休や育休、時短勤務などを取り入れ始めているものの、なかなか浸透はしていない。

 価格競争の激化で収入高が伸び悩むなか、エステサロン事業者による倒産も発生している。「白鳥エステ」を運営していた(株)アキュートリリー(東京都渋谷区)は、給与を業界平均より高めに設定し、優秀なエステティシャンを確保。低価格ながら高品質の施術を受けられると利用客から好評を得ていたものの、今年夏ごろから従業員に対する給与遅配が常態化していた。店舗の統廃合を進めるなどして遅配解消を目指したものの奏功せず、9月には東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。本件ではエステティシャンをはじめとする従業員だけでなく、会員である顧客にも大きな影響を与える結果となった。

岐路に立つエステ業界

 エステ業界は、契約の適正化への取り組みやサロン認証制度、従業員の教育強化など、消費者が安心・安全にサロンを利用でき、エステティシャンが長く働ける環境づくりを進める途上にある。

 低価格戦略をとるセルフエステや、効果の高さと月額制を組み合わせた医療エステが広がるなど、消費者の選択肢が増えたエステ業界。従来のエステサロンからすれば新たな脅威であり、今後も競争が一層激しくなるとみられる。

最終更新:2019/12/11(水) 15:19
帝国データバンク

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