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旧ソ連の秘密兵器「ロケット戦車」を知っているか?「未来の戦車」として誕生するが…

2019/12/12(木) 6:05配信

乗りものニュース

ソ連が崩壊するまで存在が知られていなかった秘密兵器

 戦車は背の低い方が敵から見つかりにくくなりますが、その低さの限界に挑戦したような戦車が、かつてソ連で作られました。それが「オブイェークト775」です。上から押し潰したような冗談みたいな外見ですが、大真面目にソ連が研究開発していた戦車です。このずいぶんと変わった形の戦車はどんな戦車だったのでしょう。

【写真】低い 薄い 平べったい! 「オブイェークト775」と人間の比較 ほか

「オブイェークト775」は1991(平成3)年にソ連が崩壊するまで存在が知られていなかった、ソ連の秘密兵器「ロケット戦車」のひとつです。ロケット戦車といってもロケットエンジンで走るわけではなく、対戦車ミサイルで武装した戦車のことをいいます。ロシア語ではミサイルもロケットも同じ「ラケータ」と呼んでおり、ミサイル戦車をロシア語にすると「ラケータ ヌイ タンク」となるわけです。

 ロケット戦車は、1960年代に流行した「ミサイル万能論」に則って開発されました。当時は誘導ミサイルの発達が顕著で、従来の大砲から主役交代するという「ミサイル万能論」が流行していたのです。

 このミサイル万能論を信奉していたのが当時のソ連最高指導者、ニキータ・フルシチョフでした。軍や研究者は、自らの保身と予算を回してもらうという政治的意向が強く作用して、こぞって陸海空の兵器にミサイルを取り入れようとします。

 戦車も、大砲はもう時代遅れとされ、これから未来はミサイルの時代というわけで「ロケット戦車」が着想されました。アイデアはいくつか生まれますが、外見的にも「オブイェークト775」は異彩を放ちます。かなり斬新な形ですが未来的に見えたのでしょうか、1964(昭和39)年に、実際に試作車が作られてしまいました。

狭い車内 複雑な機構 もちろん難航 その果てに…?

 オブイェークト775には戦車砲が装備されているように見えますが、これは火薬の圧力で弾薬を発射する火砲ではなく、対戦車ミサイル「ルービン」のランチャーです。口径は125mmで、ロケット推進式榴弾「ブル」も発射できました。「ルービン」の最大射程は4kmとされています。

 乗員は砲塔内にしか入れる余地がなく、2名とされました。車長は操縦手を兼ね砲塔の右側に位置しましたが、座席は砲塔の動きに連動せず、常に一定方向を向くような仕組みになっていました。装填手は居ないので、7発収納できる回転式弾倉の自動装填装置を備え、車体前部の弾庫から弾倉に弾を送り、これが上下して弾を装填するという構造を備えます。7発まで連続発射でき、弾倉を撃ち尽くすと砲塔は正面を向いてまた弾庫から1発ずつ弾倉に補充されますが、この間の射撃はできなくなります。

 こうした複雑な機構を前述のような異形の車体に詰め込もうとした開発は、予想どおり難航します。対戦車ミサイル「ルービン」は取り扱いが難しくて精度もいまひとつ、独特の自動装填装置や砲塔の構造は複雑で不具合が多発、極端に薄っぺらな車体に押し込められたエンジンや変速機は不調で調整も難しいなど、技術的課題が解決できません。しかも実用試験で、車体が低すぎて視察能力が悪いと指摘されるようでは、根本的にコンセプトが間違っていたのではないかと突っ込みたくなります。結局この未来戦車は実用化のめどが立たず、開発は放棄されました。

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最終更新:2019/12/12(木) 14:12
乗りものニュース

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