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はみ出して駐車している上司の車にこすってしまった…100%修理費用払わないとだめ?

2019/12/12(木) 8:54配信

弁護士ドットコム

駐車場でうっかり隣の自動車に接触してしまった…。通常であれば、こちらが100%の過失になりますが、相手の自動車が枠からはみ出して斜めに駐車していたとしたら?

関東地方に住む会社員、M美さん(20代)は困っています。外回りの仕事なので、自分の乗用車を使い、会社の駐車場に停めることもしばしばあります。しかし、そこには必ず、上司が自分の乗用車を枠からはみ出して駐車しているのです。

駐車場は狭いため、枠からはみ出していると隣の乗用車と接触してしまう危険があり、M美さんは上司に何度も枠内に停めてくれるよう頼みましたが、その場では「わかった」というばかりで、まったく実行してくれませんでした。

そしてついに恐れていたことが起きました。急いでいたこともあり、入庫する際に先に駐車していた上司の乗用車にこすってしまったのです。幸い、ゆっくりのスピードだったために傷は大したことがありませんでしたが、上司からは塗装などの修理代を請求されてしまいました。

M美さんは支払う義務がどこまであるのでしょうか。勝野照章弁護士に聞きました。

●はみ出して駐車していた車に接触した運転手の裁判…判決は?

通常、駐車場に駐車していた車に接触してしまった場合、どのような責任に問われますか?

「駐車場の駐車区画に入ろうとしたり、そこから出ようとしたところで、誤って近くに駐車していた車に接触してしまった場合、駐車していた車の持ち主に対し、不法行為責任を負うことになります」

交通事故でよく聞く過失割合はどうなるのでしょうか?

「駐車していた車に接触させた事故の場合、基本的には動いている車に一方的な過失があり、駐車していた車には過失がない、つまり100対0の事故と判断されます。駐車区画に進入、退出する車は、その運転手が適切に運転する限り事故は起きず、しかも駐車していた車の側には事故を予見できる事情がないためです」

相手の車が駐車スペースをはみ出していたらどうでしょうか?

「今回のようなケースでも、駐車車両の側に過失を問うことは難しいのが実情です。

過去に似たようなケースを取り扱った裁判例があります。

この事案は、駐車場内で駐車をしようとした際に運転手が誤って隣の駐車区画に駐車していた車にぶつけてしまったという事案です。運転手は、隣の車はもともと別の駐車区画を契約していたにもかかわらず、事故当時は契約区画とは別の、しかもその車が収まらない小さいサイズの区画に駐車し、さらには自分の駐車区画に30㎝ほどはみ出して駐車していたのだから、既に駐車していた車にも過失があると主張しました。

裁判所は、仮に駐車していた車に上記のような問題があったとしても、駐車しようとする車の運転手がそれらの事実を踏まえて安全に車を駐車させるべきで、場合によっては駐車を一時的に断念すべきだったとして、駐車していた車の過失を0だと判断しました。

こうした先例からすると、今回の事案でも駐車区画の枠からはみ出して駐車していたということだけでは、上司の過失を問うことは難しいといえます」

●道路上に駐車している車に衝突したケースでは、駐車の車に過失の判例も

では、駐車していた車が責任を負うことはないのですか?

「今回のケースのように駐車区画の枠からはみ出していたというだけでは、駐車車両の側のモラルやマナーが問われることはあっても、法的責任(過失責任)が問われることはほとんどないと言ってよいでしょう。

もっとも、過去の裁判例では、道路上に駐車している車両に走行車両が衝突したようなケースでは、現場の状況や駐車態様を総合的に判断して、駐車車両に過失を認めたものがあります。

駐車場内の事故であったとしても、駐車車両が駐車区画をはみ出すというレベルにとどまらず、駐車場内を通行する車両に危険を及ぼすような態様で駐車していたような場合には、路上駐車のケースに準じて、法的責任(過失責任)が認められることもあると考えられます。したがって、駐車している車は責任を負うことはないとまでは言い切れないでしょう」

【取材協力弁護士】
勝野 照章(かつの・てるあき)弁護士
信州大学法科大学院を修了後、2015年に弁護士登録。遺産問題や土地問題など地域に密着した事件を多数手掛けるほか、2019年に初めての否認事件で無罪判決を獲得するなど多方面で活躍する。現在は新潟県内に5か所と長野・東京に拠点を有する一新総合法律事務所に所属する。
事務所名:弁護士法人一新総合法律事務所 長野事務所
事務所URL:http://nagano.isshin-law.jp/

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:2019/12/12(木) 11:55
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