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独自の視覚言語が様々に同居する。京都賞受賞作家ジョーン・ジョナスの個展をチェック

2019/12/14(土) 7:40配信

美術手帖

 2018年に第34回京都賞を受賞したアメリカ人作家ジョーン・ジョナスの個展「Waltz」が、東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートで開催される。会期は12月18日~2020年1月25日。


 1960~70年代にリチャード・セラやロバート・スミッソンらとともに実験的な活動を行い、パフォーマンスやビデオ・アーティストの先駆者として知られるジョナス。その表現方法は、パフォーマンス中のドローイング制作やスタジオワーク、パフォーマンスを記録した映像作品、写真作品など幅広い。


 ドイツのカッセルで5年おきに開催される国際展「ドクメンタ」には、過去6回参加。12年には現代美術センターCCA北九州で滞在制作を行ったほか、近年の主な展覧会には、PERFORMA13(2013)、台北ビエンナーレ(2014)、ヴェネチア・ビエンナーレ(2015)、テート・モダン美術館での回顧展(2018)などが挙げられる。


 本展は、18年に同ギャラリーで開催された個展に続く、京都賞受賞を記念する展覧会の第2期となる。今回は、制作活動の中軸にあるパフォーマンスからもたらされる映像表現に焦点を当て、小道具やコスチュームといったプロップがとくに重要な役割を果たす2つの映像作品を中心に、ジョナス作品に欠かせない要素であるドローイングからも約10点が展示される。

 本展で展示される映像作品《Waltz》(2003)と《Mirror
Improvisation》(2004)はいずれも起承転結がなく、象徴的なシーンの断片をつなぎ合わせてつくられた短編だ。一見関連性のないカット割りや突然の場面転換を特徴としながらも、作品内には様々なプロップが登場し、演者を介してそれぞれに多義的な意味がもたらされる。


 《Waltz》は、毎年ジョナスが夏を過ごすカナダのケープブレトンで撮影された作品であり、作中に流れるオリジナルの弦楽曲は、ジョナスが同地方の伝統音楽から着想を得て音楽家に依頼したという。本作は、もともとロバート・アシュリーの晩年のオペラ《Celestial
Excursions(天上の旅)》で作家が行ったパフォーマンスを発展させた作品であり、このほかにもフランシス・ゴヤの《戦争の惨禍》(1810~20)や、幼少期に接した庭裏での映画上映を着想源としているが、いずれも直接的な転用はされていない。こういった需要なイメージソースや地方の神話や伝記が形を変えて語られるのも、ジョナス作品の特徴のひとつといえる。

  いっぽう《Mirror
Improvisation》では、初期から現在まで長らくジョナス作品の中核と深く関わりあう「鏡」にフォーカス。パフォーマンスアートの方法論を用いた本作は、時間軸を頼りにした物語性や視覚への刺激に根ざしていた従来のヴィデオ・アートと異なる働きかけを見せる。独自の視覚言語が様々に同居する映像は、人々の記憶や認識がいかに変動的で多様な受け口に満ちあふれているかを示唆するだろう。

最終更新:2019/12/14(土) 7:40
美術手帖

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