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マリノスを堅守から超攻撃へと変革した、ポステコグルー2年間の頑固で揺るぎない信念

2019/12/14(土) 13:40配信

REAL SPORTS

破壊的な超攻撃サッカーで15年ぶりのJ1優勝を成し遂げた、横浜F・マリノス。昨シーズンから指揮を執るアンジェ・ポステコグルー監督は、いかにして伝統の“堅守”から大きなモデルチェンジを果たしたのか? 改革の道筋には、ボスの揺るぎない信念があった――。

(文=藤江直人、写真=Getty Images)

「このスタイルが勝利に一番近い方法」

鹿島アントラーズと言われれば、条件反射的に「常勝軍団」が思い浮かぶ。黎明期に神様ジーコに注入された、敗北の二文字を頑なに拒絶する勝者のメンタリティーをアイデンティティーに変えて、前人未踏の3連覇を含めた、歴代最多の8度のJ1優勝をマークしてきた。

ならば、1993シーズンのJリーグ元年を戦った10チーム、いわゆるオリジナル10に名前を連ね、アントラーズとともに一度もJ2へ降格していない横浜F・マリノスのアイデンティティーは何か。2017シーズンまで、と期間を限定すれば、答えは堅守となったはずだ。

J1が18チーム体制となり、年間34試合を戦うようになった2005シーズン以降で、総失点がリーグ最少を数えたのが2度。ほとんどのシーズンで上位3位以内にランクされ、2017シーズンまでの13年間の平均が35.8を数えてきた総失点が、一転してワースト3位の56へと跳ね上がったのは昨シーズンだった。

ハーフウェイライン付近にまで最終ラインを上げ、背後のスペースをケアするゴールキーパーがビルドアップにも加わる。左右のサイドバックはタッチライン際ではなく中盤の、それも中央に絞る「偽サイドバック」と化して、数的優位な状況をつくり出しながらポゼッションを高める役割を担う。

昨シーズンに就任したギリシャ生まれで、オーストラリア国籍をもつアンジェ・ポステコグルー監督が掲げた斬新なスタイルは、2005シーズン以降では最多となる56ゴールをマリノスにもたらした。リーグでも2位タイにランクされた得点力はしかし、失点を激増させる副作用を伴っていた。

象徴的なシーンは昨年5月12日、ガンバ大阪を日産スタジアムに迎えた一戦の52分に訪れた。敵陣でボールを失った直後に、自陣のほぼ中央にポジションを取っていたGK飯倉大樹(現・ヴィッセル神戸)の頭上をMF藤本淳吾に狙われ、60mを超えるロングシュートを決められた。

もっとも、無人状態のゴールを陥れられたのは、ガンバ戦が4度目だった。日本のことわざで表現すれば、虎穴に入らずんば虎子を得ず――となる戦い方を貫いた代償として、終盤戦に突入しても失点禍が収まらなかったなかで、ポステコグルー監督が思わず語気を強めたことがある。

「私たちのサッカーは、まったくリスクを冒していない」

一本のロングパスに抜け出したFW武藤雄樹に決勝点を決められ、1-2で苦杯をなめさせられた9月16日の浦和レッズ戦後の公式会見。質疑応答で「野心的なサッカーでチャンスもつくっているが、失点のリスクもある。これから、どのようにバランスを取るのか」と問われた直後だった。

相手チームにも同じ数のチャンスをつくられているのならば、リスクを冒していると認める、と指揮官は持論を展開した。実際には相手の3倍に達するチャンスを決め切り、数少ないピンチを防ぎ切れば問題はない――リスクという言葉を頑なに拒絶したポステコグルー監督は、さらにこう続けた。

「このスタイルを続けている理由は、ただ単にわくわくするサッカーをファン・サポーターに見せたいからでも、アタッキングフットボールをやりたいからでもない。勝利に一番近い方法だからだ」

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最終更新:2019/12/14(土) 21:38
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