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早期退職した後の人生、何をしたらいいの?

2019/12/15(日) 8:11配信

マイナビニュース

悩み多きビジネスパーソン。それぞれの悩みに効くビジネス書を、作家・書評家の印南敦史さんに選書していただきます。今回は、早期退職しても何をしていいかわからなくて悩んでいる人のためのビジネス書です。

■今回のお悩み

「早期退職したけど、何をしたらいいかわからず困っている」(53歳男性/専門サービス関連)


もう15年以上のつきあいになる、仲のいい編集者がいます。彼は僕と同い年なので、もうあと3年で定年です。出会ったころはお互いに40代でしたから、なんだか不思議な気分です。しかも僕は自営業なので、彼の思いを本当の意味で共有することはできません。

しかしそれでも話を聞いていると、彼の定年後についての漠然とした思い(必ずしも「不安」ではないのかもしれませんが)はなんとなくわかる気がしたのでした。何十年も組織のなかにいた人が、退職を境に放り出されてしまうのですから、モヤモヤした思いに襲われたとしても当然です。

実は今回のご相談を受け、いわゆる「定年本」を何冊かあたってみました。ご相談者さんは53歳だそうですが、早期退職したのだとしたら、環境や状況は定年退職者のそれに近いのではないかと考えたからです。

それは決して間違った視点ではないと思いますし、定年本的な観点からアドバイスをすることも不可能ではないでしょう。しかし、それでもなにかしっくりこなかったのです。考えるべきことは、もっと本質的な部分にあるような気がしたから。

蕎麦を打とうとか、山に登ろうとか、カメラを始めようとか、よくある趣味的なことではなく(もちろんそういったことも無駄ではないはずですが)、「どう生きたいか」というところに立ち戻ったほうがいいと感じたわけです。そこで今回は、もっと広い視野に基づいて3冊の書籍を選んでみました。

人生「2周目」からがおもしろい理由

『人生は「2周目」からがおもしろい』(齋藤孝 著、青春新書インテリジェンス)の著者は本書の冒頭で、55歳前後には環境が大きく変わってしまうという現実を指摘しています。

人生の「1周目」が50歳くらいまでだとすると、「2周目」がそこから始まるということ。職場環境のみならず、家庭でも子どもが独立するなど、状況が大きく変わる時期であるわけです。では、どうすればよいのか? この問いに対して、著者は明確に答えています。


結論から言いましょう。人生は2周目からがおもしろい! 2週目こそ本番なのです。(「はじめに」より)


しっかり仕事をしようとしてきた人ほど、1周目はビジネス社会の論理に軸足を置いてがんばってこられたはず。社会の掟に沿って成果を上げ、社会のなかで身を立て、生活の基盤を確立するのが1周目だったというわけです。

しかし50歳以降になると、軸足を完全に「ビジネス社会」や「他者からの評価」に置かなくてもよくなります。他者からの評価一辺倒ではなく、1周目で養ってきた客観的な評価を生かし、仕事ややりたいことを見なおせるようになるということです。

そして著者は、2周目こそ「昔取った杵柄」を思い出してみるべきだと主張しています。なぜなら、退職後に失った"承認欲求"を満たすことができ、前向きに進めるようになるから。


学生の頃テニスをしていたけど、社会人になって忙しくてできなかったとか、山登りが好きだったけどもう30年もご無沙汰しているとか、「自分は本当はこれをやりたかった」「そういえば昔こんなことに熱中していた」というものに再び取り組んでみる。(116ページより)


ブランクがあったとしても、心のどこかに情熱が残っているものがあるはず。それをこの機会に、もう一度掻き起こしてみようという発想。そうすれば、くすぶっているものがふたたび燃え上がるかもしれないというのです。その結果、自己承認ができるようになるのだとも。

ちなみに、承認欲求を満たすことは、この問題とあまり関係なさそうに思えるかもしれません。しかし自己承認や自己評価は、自分に誇りを持つことにつながるのだといいます。ひいてはそれが、揺るぎない自信につながっていくわけです。

いずれにせよ、2周目の人生を“おもしろく生きる”ことが、とても重要であることは間違いないでしょう。そこで次に、『面白いとは何か? 面白く生きるには?』(森博嗣 著、ワニブックスPLUS新書)をご紹介したいと思います。

「おもしろい」生き方をするコツ

ご存知の方も多いと思いますが、著者は工学博士兼作家。某国立大学工学部の助教授として勤務しつつ、1996年に『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。以後も精力的に作品を発表し続け、人気作家としての地位を確立した人物です。ある意味においては、人生を楽しみまくっているわけです。

タイトルからもわかるように、本書では「おもしろさ」とはどのようなもので、それがどうやって生まれるのかについてのメカニズムを考察しています。

つまり退職後の指南書というわけではないのですが、「おもしろさ」を知ること、生み出すことが「生きる」ことの価値だという観点に基づき、「おもしろい人生」についても持論を述べているのです。

たとえば著者は第四章「『面白い』について考える」のなかで、「森さんが考える『面白く生きるコツ』は」という問いに対して、まず第一に「自由」を意識することだと答えています。


自由というのは、自分の思ったとおりになることです。そして、それを実現するためには、自分で「思う」ことが一番大事ですね。思いさえすれば、あとはそれを自分で実行するだけです。このように、自由は、「自分」が作り出すものです。(130ページより)


「おもしろい」生き方をするコツは、自分が「おもしろい」ことを思いつくこと。そして、それさえ思いつけば、あとは実行あるのみ。ちなみに「実行することが難しい」と考えている人も少なくないでしょうが、それは正反対だと著者は言います。

実行することは、誰にだってできること。でも、思いつけない、なにをしたらいいのかがわからないだけ。したがって、そこを考えることが第一だということです。

「おもしろいことがない」という状況は、「おもしろいことが思いつけない」状況だと著者は指摘しています。これはご相談者さんの「なにをしたらいいのかわからない」ということにも言えるのではないでしょうか?

でも、思いつかなくなってしまった(わからなくなってしまった)のは、おもしろさを他者から与えられるような生活が続いたから。しかし自分で思いついたものであれば、考えて、思いつく過程でさらに別のことを連想し、次々とおもしろさが展開するもの。

そこに気づけば、「なにをしたらいいのか」についての答えもおのずと見えてくるかもしれません。

「なにをしたらいいのか」考えることを楽しむ

『平常心のコツ──「乱れた心」を整える93の言葉』(植西聰 著、自由国民社)は、ベストセラーとなっている“コツ”シリーズの一冊。以前にも何冊かご紹介しましたが、今回また本書をご紹介しようと思ったことには理由があります。

社会人として「生まじめ」で「責任感が強い」自分を貫いてきたからこそ、退職したいま、「なにをしたらいいのかわからない」と悩んでしまうのではないかと感じたのです。


「生まじめで誠実」「責任感が強い」ということは、もちろん悪いことではありません。その人の長所と言えるものでしょう。しかし、この性格も度を越して強くなり過ぎると、そのために心身のバランスを崩してしまう要因になってしまうのです。(116~117ページより)


だからこそ、そういうタイプの人が心身のバランスを保っていくためには、「まじめになりすぎない」「誠実すぎなくてもいい」「責任感を持ち過ぎなくてもいい」「まわりのことなどあまり気にしない」ということを心がける方がいいと著者は言うのです。

ここではおもに、そのことをビジネスパーソンに向けているのですが、そもそもそれは生き方の問題。いうまでもなく、退職した方にもあてはまるはずです。

たとえばご相談者さんの場合は、「なにをしたらいいのかわからない」ということをあまり重く捉えず、まずは「きょうできそうな小さなこと」を一つひとつ試していくといいのではないでしょうか?

「そんなことに意味があるのか?」と思われるかもしれませんが、意味はあると思います。なぜなら人生は「できること」を積み重ねていくことであり、それは組織に属していようが、退職してひとりで生きていようが変わりがないことでもあるはずだからです。

それからもうひとつ。やはり当たり前のことですが、「なにをしたらいいのか」は、ご自分で探すべきことです。だとしたら、「なにをしたらいいのか」を探すことそれ自体を楽しんでみては?

「これをやってみよう」→「これは違ったな」→「じゃあ、次にこれを試そう」→「これでもなさそうんだな」→「では、これは?」→「これは、ちょっとだけ興味が持てることかもしれない」

そんなことを繰り返すこと自体を、楽しんでしまえばいいのです。そうすれば、いつか「これだ!」というものを探し出すことができるのではないかと思います。


著者プロフィール : 印南敦史(いんなみ・あつし)

作家、書評家、フリーランスライター、編集者。1962年東京生まれ。音楽ライター、音楽雑誌編集長を経て独立。現在は書評家としても月間50本以上の書評を執筆中。『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)ほか著書多数。

印南敦史

最終更新:2019/12/15(日) 8:11
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