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平和に武器はいらない(12月15日)

2019/12/15(日) 9:25配信

福島民報

 中村哲医師が亡くなられた。

 世界中の方々の悲鳴が聴こえてくる。中村氏のアフガニスタンの診療所には患者が長い列を作っていた。遠方からやっとたどり着いた女児の体が、その列の中で冷たくなっていくこともあった。国連児童基金(ユニセフ)によれば、アフガニスタンでは子どもの六人に一人が五歳以下で死亡している。その最大の原因は感染症によって慢性化する下痢とされる。中村氏は小さな診療所の限界を感じ、医療活動を超えた支援に踏み切る。そして、アフガニスタンで井戸堀りから始める。中村氏の活動はすべて医療が原点だが、その支援は医師としての活動をはるかに超えた次元に進んでいた。中村氏がかの地で実現したかったのは「アフガニスタンの多くの人が願っているのは一日三回の食事をとることと、ふるさとに家族と住めるようになること」「平和に武器はいらない」「医療よりもまず水だ」。中村氏の遺[のこ]した支援活動とそのことばは、私たちに多くの課題をつきつけている。

 十一月二十三日から二十六日、ローマ教皇フランシスコが訪日された。故ヨハネ・パウロ二世の一九八一年二月以来、三十八年ぶり二度目である。教皇フランシスコは「すべてのいのちを守るため」をテーマに長崎、広島、東京で講話やミサを捧[ささ]げ、さまざまな人々に珠玉のことばが伝えられた。ローマ教皇のメッセージは、その九日後に亡くなる中村氏を表していた。「今日の世界では、何百万という子どもや家族が、人間以下の生活を強いられています。しかし、いっそう破壊的になる武器の製造、維持、販売を通して、浪費されている大金と生み出されている富は、神に歯向かうテロ行為です」「平和は、それが真理を基盤とし、正義に従って実現し、愛によって息づき完成され、自由において形成されないのであれば、単なる『発せられることば』にすぎなくなると確信しています」

 中村氏がこの地球に表した平和は、「多くの人の幸せは、ふるさとで家族と食卓を囲めること」そして「平和に武器はいらない」という真理を基盤として、正義に従ってそれを実現し、愛によって息づき完成され、自由によって形成され続けていた。単なる「発せられたことば」ではなく、私たちにとって、平和という名の希望だ。

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最終更新:2019/12/15(日) 9:25
福島民報

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