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賽銭もキャッシュレス化の動き 「課税対象になってしまわないか」神社や寺院から懸念も

2019/12/15(日) 8:35配信

税理士ドットコム

師走に入り、今年も残りわずかになりました。2019年は「キャッシュレス元年」とも呼ばれ、消費増税とともにキャッシュレス決済のポイント還元が始まるなど、電子マネーやスマホ決済アプリに注目が集まりました。そんな時代の流れに合わせて、神社でも賽銭箱の横に決済端末を置き、キャッシュレスに対応する動きが出てきました。外国人観光客など参拝者にとっては利便性が高まる一方で、「宗教行為の本旨に反する」という意見もあります。キャッシュレス賽銭を導入している神社と、キャッシュレスのお布施への反対声明を出した京都仏教会にそれぞれの意見を聞きました。(ライター・国分瑠衣子)

●オフィス街の愛宕神社、7年前に導入

東京都港区にある愛宕神社は、1603年(慶長8年)、徳川家康の命により、防火の神様として祀られました。オフィス街の高台にあり、平日でも多くの人が急な「出世の階段」を上り、参拝しています。神社は標高26メートルの愛宕山山頂にあり、23区では一番高い山です。境内から都心の高層ビルが望めます。

愛宕神社がキャッシュレス決済による賽銭を始めたのは2012年からです。年に一度、1月の仕事始めの日に限り対応しています。この日は、境内が参拝客の行列で埋め尽くされるほど混雑するといいます。

オフィス街にある愛宕神社は、以前から日常的に電子マネーを使うビジネスパーソンの参拝客が多く「現金以外も使えるようにしてほしい」という要望があり、導入に踏み切りました。また、集まった賽銭を預け入れる際、窓口での硬貨の入金に手数料をかける銀行が増えてきているため、負担を減らす目的もありました。

愛宕神社の職員は「賽銭にキャッシュレス決済を導入することで、反対の声が上がるのは想定していました」と説明します。実際、インターネット上では「それほどまでしてお金を集めたいのか」など疑問視する声もあったそうです。一方で「便利なので年間を通して、キャッシュレス対応にしてほしい」と肯定的な意見もありました。愛宕神社は「古くはコメを供えたように、時代とともに賽銭の方法は変わってもいいのではないでしょうか。年に一度の取り組みですが、お金について考えるきっかけになってほしい」と話します。

お金の神様を祀る、岐阜県高山市の黄金神社も今年6月から電子地域通貨の「さるぼぼコイン」とQRコード決済のOrigami Pay(オリガミペイ)を賽銭に導入しました。キャッシュレス導入を進める地元の信用金庫と信用組合がシステムを奉納するという形式をとりました。黄金神社の職員は「お金の神様を祀っているので、神様にお金の形も変わってきていることを報告しました」と説明します。

●京都仏教会「宗教者は信教の自由を守ることに敏感であるべき」

一方、約1000の寺院でつくる京都仏教会は今年6月、「布施の原点に還る」という声明を出しました。「法要、拝観、葬儀などの宗教行為と収益事業は明確に分離されている」と、絵はがき販売などの収益事業のキャッシュレス決済導入は容認する一方で、宗教行為である布施やお守り、お札の販売のキャッシュレスは不適切との見解を示したのです。「お布施は、財物に託して、信者の心、魂を仏様に捧げるものであり、対価取引の営業行為とは根本的に異なる」との考えです。

京都仏教会の担当者は「参拝者の個人情報が流出する可能性もあり、信教の自由が侵害される懸念もある。便利なほうがいいという気持ちは理解できるが、宗教者は信教の自由を守ることに敏感であるべきだ。今一度、思いをいたして考えてほしい」と訴えます。今後は全日本仏教会と連携し、全国の寺院にも理解を求めていく考えです。

●収益事業と見なされれば課税されてしまう?

愛宕神社や黄金神社によると、神社の中には、キャッシュレス決済を取り入れたものの、「お金を入れる『チャリン』という音が聞こえないと、ありがたみがなくなる」と地元の人から反対されて取りやめたり、導入をためらう神社もあるそうです。他にも、キャッシュレス決済にすると事業者への手数料が発生するため、賽銭が純粋な宗教行為とみなされなくなるのではという不安があると見られます。

宗教行為に該当するかどうかには、税金が深く関わってきます。国税庁は「売価と仕入れ原価との関係から見て、差額が通常の物品販売業における売買利潤ではなく、実質的な喜捨金と認められるような場合のその物品の頒布は、収益事業は該当しない」と位置付けています。同庁が出している「宗教法人の税務」によると、お布施(賽銭)、お守り、お札などの販売は、収益事業と見なされず非課税ですが、一般の物品販売業でも扱っているような絵はがき、写真帳、数珠、暦などの販売は収益事業とみなされ、課税対象になります。

賽銭のキャッシュレス化に反対の立場の京都仏教会も、声明の中でキャッシュレス化により布施が収益事業とみなされ、課税を招く恐れを憂慮しています。

●国税庁「喜捨の心が変わらなければ、課税されない」

国税庁の見解はどうなのでしょうか。法人課税課は「賽銭をキャッシュレス対応にして事業者への手数料が発生したとしても、賽銭の本質ともいえる喜捨の心が変わらないのであれば、課税されません」と説明します。ただし「賽銭にアミューズメント的な形態がとられているなど、信心を逸脱するようなものであれば、収益事業にあたる可能性もあるので、その場合は実態を確かめなければなりません」と付け加えます。

今後、キャッシュレス化が進むことで、税金も含めて、これまで当たり前だと考えられてきたものの意味が問い直されるかもしれません。賽銭の問題は、まさにそのような一例と言えるのでしょう。

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:2019/12/15(日) 13:38
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