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なぜ路線バスは衰退したのか? 地方は大幅赤字 かつての「バスの黄金時代」あだに?

2019/12/15(日) 10:35配信

乗りものニュース

「100円の経費に86円の収入」地方は大幅赤字

 国土交通省は2019年12月3日(火)、2018年度の路線バス(乗合バス)収支状況を公表しました。それによると、大都市部では黒字ですが、地方部では「100円の経費をかけ運行し、86円しか運賃収入がない」という大幅な赤字状態です。地方の路線バス事業者は、国や自治体から補助金を得て、なんとか路線バスを維持しているのです。

【写真】片道6時間以上! 日本最長の路線バス

 年間輸送人員をみると全国で約40億人。「バスの黄金時代」とも呼ばれた1970年代前半は約100億人でしたから、6割もの大幅な減少です。近年、大都市部では「PASMO」などのICカード対応や経路検索サービスの充実などによって、輸送人員は回復傾向にありますが、地方部では、自家用車普及の影響を受けて大きく減少しています。

 実は、多くの先進国において、路線バス事業は自治体などの公的な主体が担います。実際の運行業務は民間に委託することが多いものの、どの路線を、どれくらいの便数で、いくらの運賃で運行するかといった計画は自治体などが担当するケースが多いのです。しかし日本では、おもに民間のバス事業者が、独立採算で運行する形態が続いていました。それでは赤字路線を維持できないため、2000年代以降、制度が相次いで改正され、現在では「不採算だが、地域のために重要だと認められた路線の赤字は、国と自治体が補助金でまかなう」ことになっています。

 なぜ日本では、おもに民間企業が路線バス事業を担っているのでしょうか。その答えをひと言でいえば「かつては儲かった」からです。

バス事業にとって効率がよかった日本

 第2次世界大戦後、日本の人口は急増しました。さらに農業から製造業やサービス業へ、また農村から都市へと社会構造が変化したこともあり、通勤通学輸送は爆発的に増加しました。一方で都市部の鉄道インフラ整備や、地方部での自家用車普及には時間がかかったため、路線バスの輸送人員は急増し、「バスの黄金時代」を迎えました。

 また多くのバス事業者は、小売業や不動産業なども地元で幅広く展開しました。故田中角栄元首相が、長らくバス会社の経営者でもあったことに象徴されるように、政治家を輩出する事業者も多く、各地のバス事業者は「地元の名士企業」となりました。

 そもそも、温暖湿潤な気候に恵まれた日本は、欧米に比べて人口密度が極めて大きいため、路線バス事業にとっては効率のいい市場です。また、多くの事業者は戦時中、国内の競争を抑制することなどを目的に、国の政策により中小事業者らが合併して誕生したもので、直接的に競争することはありません。豊かな風土がもたらした高い人口密度と、競争のない業界構造が、路線バス事業をビジネスとして成立させたといえます。

 自家用車が普及した1970年代後半からは、輸送人員が低下し始めました。しかし、その後に訪れたバブル経済は、中心市街地に多くの土地を保有する路線バス事業者の経営に余裕を与えました。不動産開発など副業の利益、またこのころ急成長した高速バス事業の黒字で路線バスの赤字を補填するという「内部補助」によって、路線バス事業は「延命」したのです。

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最終更新:2019/12/16(月) 11:21
乗りものニュース

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