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台風強襲の離島、安定収入の活路に「アワビ」 研究始めて約10年、売上300万円見込む

2019/12/15(日) 5:10配信

沖縄タイムス

 【北大東】村がアワビの養殖に力を入れている。昨年度から沖縄本島の大手スーパーなどに本格的に出荷を始め、約150万円を売り上げた。本年度は倍の300万円を見込む。ことし2月には初めて、人工ふ化に成功した。現在、県外から稚貝を購入しているが、関係者は「あと2~3年で純粋な北大東産のアワビを出荷することができる」と意気込む。(南部報道部・高崎園子)

 「水温を20度から最大25度まで1度ずつ上げ、1時間おきにメスが抱卵しているか、オスが放精しているか見に行くことを毎日繰り返した。これまで何回チャレンジしたか分からない。悲願を達成できた」

 アワビ養殖に携わる、村陸上養殖施設の仲宗根革(あらた)施設長(40)、職員の冨原梨子さん(29)は笑顔で語った。

 アワビは、水温を上げて親貝に刺激を与え、メスに産卵、オスに放精させ、受精する。

 村が養殖するのは、育てやすいといわれるエゾアワビ。もともと産地は寒冷地で、水温を上げすぎると病気になったり死んでしまったりし、温度調整が難しい。メスは産卵で体が弱るため、受精は4カ月置きになる。

 2月に120万個の卵からふ化したのは1万個で、現在育っているのは千個。

 仲宗根さん、冨原さんは共にアワビ養殖の経験がなく、専門家にアドバイスを仰ぎながら、手探りで取り組み、ふ化を成功させた。

 気候左右されずに

 北大東村は2011年度、県内初のアワビ養殖の技術研究に着手した。漁業が盛んな島だが、台風の常襲地域で、天候に左右されない、安定した水産業を確立するのが狙いだった。

 14年度に、一括交付金を利用して総事業費3億5600万円で陸上養殖施設、9千万円でふ化施設を整備した。

 隣接する海水淡水化施設で1次ろ過した海水を1日60トン、分水している。浸透地下海水をくんでいるため、水温が20度で安定していることで、暖かい北大東でも養殖が可能になる。

 養殖施設は村立小中学校の海水プールだった建物を跡利用した。

 運営は、村や漁協、観光業、建設業などの村内業者らでつくる「村養殖産地協議会」(会長・宮城光正村長)が行う。

 仲宗根施設長ら2人が施設管理と養殖を担う。施設は見学可能で、島民や観光客も訪れる。

 輸送に「離島苦」も

 アワビは出荷できる6センチになるまで2~3年かかる。さらに2~3年育てると、8~10センチの特大サイズになり、ステーキ用のアワビとして高値で出荷できる。

 アワビとともにヒラメも養殖しており、こちらはおよそ15カ月で、出荷基準の体長40センチに育つ。

 村が本格的な出荷を始めたのは18年度からで、アワビ約2300個、ヒラメ500匹を沖縄本島のイオン琉球や居酒屋に出荷した。

 現在、イオン琉球などに週当たり、アワビを60個、ヒラメを20~30匹ずつ出荷する。輸送は飛行機で、天候不良や機材トラブルで欠航すると出荷できなくなる離島事情もある。

 村経済課長の多和田真人課長は今後の課題を「どう島内でコンスタントにふ化させていくかだ」とする。「安定的にふ化させられればコストをかけて稚貝を購入しなくて済む。さらに稚貝をほかに売ることができる」とし、「売り上げを伸ばし、島に雇用の場をつくりたい」と目標を語った。

最終更新:2019/12/15(日) 5:10
沖縄タイムス

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