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425km/hの新幹線高速試験電車952・953形「STAR21」 総合力を武器にしたその戦いの歴史

2019/12/16(月) 10:30配信

乗りものニュース

環境性能を維持しながら高速化へ

 日本の新幹線は住宅密集地を高速走行する関係で、厳しい騒音規制があります。そのため、単純にモーターをパワーアップして高速走行が可能になったとしても、騒音が大きければ営業運転はできません。したがって新幹線を高速化するならば、同時に騒音を抑制する技術も高めていく必要があります。

【写真】JR東日本の最新高速試験車「アルファX」

 JR東日本が1992(平成4)年に製造した低騒音高速試験電車952・953形は、環境性能を維持しつつ最高速度を高めるためのデータを収集する目的で製造されました。愛称は「STAR21」、「Superior Train for Advanced Railway toward the 21st century(21世紀の素晴らしい電車)」の頭文字をとったものでした。

 形式がふたつに分かれている理由は、2種類の走行装置を比較するためです。952形は、これまでの新幹線と同じひとつの車体にふたつの台車を装備したボギー構造、953形は小田急電鉄の50000形ロマンスカー「VSE」のように、車体と車体のあいだに台車を装備する連接構造が採用されました。乗り心地や静粛性を比較できるようになっています。

 STAR21は、以下の4つのコンセプトをもとにデザインされました。

・安定した高速走行を実現する車両。
・環境対策を確立する車両。
・軽量化を極限まで追求する車両。
・乗客に快適な空間を提供する車両。

 同時に、この4つのコンセプトをいかに融合するかも、設計上の大きなポイントでした。

騒音を減らすために凝らされた工夫

 まずSTAR21の試験目的は、「300km/hでの営業運転の実現」でした。そのためには、試験車両はその1~2割増しの速度である350km/hを安定して出せる性能が求められました。さらに350km/hまでの到達時間もできるだけ短くする必要性から、高速域での加速性能を高め、目標とする最高速度は400km/hとされました。

 しかし400km/hも出すと、騒音が大きくなります。騒音には車輪がレール上を転がることで発生する転動音、パンタグラフが架線をこすることで生じる摺動音、空気を切り裂いて走行することで発生する空力音などがありますが、このなかでも速度の6乗に比例して大きくなる空力音の削減には、特に対策がなされました。

 車体には、たとえば車体と窓の段差、連結部分の段差、機器類の露出など多くの凸凹があります。STAR21ではこれらを徹底的に平滑化しました。窓ガラスと車体の段差を可能な限りなくし、連結面もカバーをつけて平らにしたほか、屋上機器はすべて床下か車内に収納。パンタグラフ以外は何も載せていません。なおパンタグラフには大きなカバーをつけ、空気の流れを阻害しないようにしています。

 先頭の形状はくさび状のスタイルとなり、前後のスタイルを若干変えて比較試験を行っています。ノーズ長は1号車の952形が7920mm、9号車の953形が6500mmとE5系の約半分で短いもの。これは当時の高速試験区間にはトンネルがなかったため、高速走行に伴いトンネルの出口などで発生する空気の圧力波対策よりも、空力音削減を考慮した先頭形状ととらえることができます。

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最終更新:2019/12/16(月) 17:41
乗りものニュース

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