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『ECHOES・BREAK THE BORDER』の作者、歩さんに聞く。バスケットが僕の人生にもたらしたもの(2)「明日何が起こるかわからないなら、僕しかできないことをやって死にたいと思いました」

2019/12/21(土) 9:50配信

バスケットボールスピリッツ

宝島社が主催する『このマンガがすごい!』大賞の第7回最優秀作品賞に輝いた『ECHOES』というマンガをご存知だろうか。舞台となるのは新緑高校女子バスケットボール部。1年生の青(せい)と飛鳥を軸に、ぶつかりあいながらも心を通わせ成長していく高校生たちの物語だ。その中で特徴的なのは、主人公の青が自分の“性”について悩むトランスジェンダー(心と体の性別が一致しない人)として描かれていることだろう。ここには幼少期から「同じ女の子でありながら、私は周りの友だちとは何かが違う」と感じていた作者、歩さんの経験と葛藤が投影されている。

今回の取材で出会った歩さんはダークな色合いのジャケットを羽織った華奢な男性という印象。語る一人称も「私」ではなく「僕」だ。女性として生まれながら、男性として生きることを選択した歩さんの人生にバスケットがどう関わってきたのか。その道程を振り返りながら、『ECHOES』を通して伝えたかったもの、さらには今回手掛けた『Wリーグオールスター』(2020年1月19日開催)のポスターの話までたっぷりと語っていただいた。


『ECHOES・BREAK THE BORDER』の作者、歩さんに聞く。バスケットが僕の人生にもたらしたもの(1)「小学3年生から学校でしゃべることができなくなりました」 より続く

「明日何が起こるかわからないなら、僕しかできないことをやって死にたいと思いました」

── 高校に入学するまでバスケットの経験はなかった歩さんがいきなりバスケットボール部に入るのは相当勇気が必要だったと思いますが。

周りから見たらそうですよね。同じクラスにはバスケの特待生として入って来た子が1人、入学前から練習に参加していた子が2人いたんですが、当時メガネをかけてスポーツとは縁がない感じに見えた僕がバスケ部に入ると知ってかなり驚いたと思います。けど、なんだろう、そのときは「勇気を持って入った」というより体が勝手に動いて入ったという感じでした。高校では昔の自分を知っている人はほとんどいないから、変わるんだったら今だ、今がそのチャンスだと思ったら体が自動的に動いて入部してたんです(笑)。友だちとしゃべれない自分に対するコンプレックスが強過ぎてとにかく変わりたかったんですね。バスケ部では当然ダントツに下手くそで3年間ベンチウォーマーでしたけど、それは想定内だったので落ち込むことはなかったです。

── 辞めたいと思うことはなかったですか?

なかったですね。もし部活から逃げちゃったら元の自分に戻ってしまう気がして辞めたいとは思いませんでした。それに部活では毎日「声を出せ」って言われるじゃないですか。何をするにも声を出すことから始まりますよね。部活では大声を出すのが普通だし、僕なんか特に「声を出せ」と毎日言われて、叫んでいるうちに人生が変わりました(笑)。思えばあれは自分にとってリハビリみたいなものだったのかもしれません。

── チームメイトとしゃべれるようにもなったのですか?

はい。1年生の最初のころに乗り越えられたというか、少しずつしゃべれるようになりました。同期がいて。先輩がいて、1年後には後輩もできて、そういう人間関係ができていくことは初めての経験だったのですごく不思議でした。不思議だったけど楽しかったです。バスケも大好きでしたね。あんなに下手くそだったのに本当にバスケは大好きでした。

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最終更新:2019/12/21(土) 9:50
バスケットボールスピリッツ

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