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【#実名報道】「ベタ記事」でも求められる判断 どう報じればー託された言葉の間で

2019/12/27(金) 10:00配信

京都新聞

事件の被害者を実名で報じるべきか、匿名かー。社会に大きな反響を呼ぶ事件だけでなく、日々の事件の取材でも、記者はどう報じればいいのか、その度に判断を迫られます。京都新聞では年々、事件事故の報道基準を見直しています。京アニ事件の取材で頭によぎったのは、過去にさまざまな事件現場で、遺族から預かってきた言葉の数々でした。

【写真】台風の中でも京アニ犠牲者悼み続けた京都の寺の1カ月

匿名の1人ではなく 実名の重み

「勝手に息子の名前を消さないでくれ」。44人が死亡した2001年の新宿・歌舞伎町の雑居ビル火災で18歳の息子を亡くした父を4年後に取材したとき、そう言われました。日本最大の歓楽街で起きた火事で、警視庁は犠牲者全員の氏名や住所を報道提供したものの、報道各社の対応は割れました。

その場にいたことを知られたくない人がいることは容易に推測できます。ある新聞は実名を掲載し、ある新聞は匿名にしました。

「自慢の息子だった。秀悟は死を予感させるところがあった。父さん、輪廻ってあるよね?と言ったり。『悟』なんていう字を付けたからか。うちの息子はただのアルバイト。落ち度があるように言われるのは許せねえよ」

その言葉を、今年の京都アニメーション放火殺人事件で思い返しました。1990年代から事件記者として警察本部や検察を10年担当し、現在は編集委員で報道部ではありませんが、 今回の3社連携企画記事に寄せられた批判のコメントを読んで、取材する理由を説明できていないことを痛感しました 。

8月27日。31歳で命を奪われた京アニ石田敦志さんの父基志さんが、京都府警伏見署で記者会見しました。犠牲者35人(のち1人が亡くなり36人)のうち21人の遺族が匿名希望とされる中で、遺族が会見して語るのは初めてでした。

「息子は35分の1ではないのです。私たち生き残った者にできることは、多くの人に記憶していただくこと。石田敦志というアニメーターが京アニに確かにいたことを、どうか、忘れないでください」

石田基志さんが記者会見する3時間前。京都府警は犠牲者全員の氏名を報道機関に提供しました。府警の説明では遺族21人が「実名拒否」の意向でした。「今、精神的に限界の状態です。絶対に匿名にしていただきたい」「死を受け入れられていない心情を理解して」

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最終更新:2019/12/27(金) 13:27
京都新聞

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