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キング・クリムゾンの革命的なデビュー作『クリムゾン・キングの宮殿』

2019/12/29(日) 18:04配信

OKMusic

アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』

冒頭を飾るのは、まさしくこのアルバムの性格を印象付ける名曲中の名曲「21世紀の精神異常者」である。この曲は人間なら誰しもが持つ狂気・不安・恐怖などのイメージを具現化したものである。サウンド感覚は国籍や肌の色は関係なく、人間の根本にある普遍的なものであるだけに、聴いた者は必ず引き込まれる。メロディー、繰り返されるリフ、歪ませたヴォーカル、フリージャズ的な破壊的演奏など、どこをとっても完全無欠の仕上がりだ。69年の時点で、この曲を凌ぐロックが他に存在しなかったことは紛れもない事実で、現代音楽、フリージャズ、ハードロック、ワールドミュージック、前衛芸術までをも包含しているのに、これほど分かりやすく提示し得たクリムゾンの、グループとしての力量には戦慄さえ覚える。

2曲目の「風に語りて」は美しく叙情的で、アルバム中一番まともというか、楽曲としてどう作られたのかが理解しやすいかもしれない。ただ、マイケル・ジャイルズのジャズっぽいドラミング、イアン・マクドナルドのクラシカルなフルートソロ、ロバート・フリップによる浮遊するようなギターを、それぞれじっくり聴いてみると、ロックにおける常識的な表現方法を使っていない(特に分かりやすいのはドラム。リズムはエイトビートだが、ロック的なエイトビートでは叩いていない)。だからこそ、この曲が心に残るのではないかとも思う。

次の「エピタフ(墓碑銘)」は最も好きなクリムゾンの曲として挙げる人が多いが、この感傷的でドラマチックな構成が、特に日本人には受けるのだと思う。エピタフタイプの曲って多いからね(というか、これをパクッた曲が多すぎる…)。特に、グレッグ・レイク(後にEL&Pに移籍)のヴォーカルがこの曲にぴったりで、彼の最高の歌唱が聴ける。後半のメロトロンの音色と、ドラマチックに盛り上がっていく手法は、プログレの常套表現として、これ以降多くのグループが取り入れていく。

「ムーンチャイルド」も静かで幻想的な曲だ。全編にわたって、フリップのギターはジャズ的なイディオムを縦横無尽に操り、最高の演奏をしている。幻想的な音使いは、ガムラン音楽やフリージャズの語法を実験的に用いている。この曲をはじめ、彼のギターの技術力はデビュー時点で申し分のない表現力を持っていたことが分かる。

アルバムの最後はアルバムのタイトルトラック…というだけでなく、グループ名にも使われているだけにグループとしての自信に満ちあふれた出来栄え。この「クリムゾン・キングの宮殿」 は「風に語りて」と同様、イアン・マクドナルドとピート・シンフィールドのふたりで作った壮大な曲だ。メロトロンと重層的なコーラスがアルバム全体の重厚感を増し、クラシック的な展開がプログレの醍醐味を堪能させてくれる。なぜか中世ヨーロッパに足を踏み入れたかのような錯覚が生じる不思議な余韻が残る名曲である。

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最終更新:2019/12/29(日) 18:04
OKMusic

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