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2020年、メルセデスの7連覇はない。レッドブル・ホンダの勝利数を大胆予想【2019年F1反省会(2)/尾張正博編】

2019/12/30(月) 11:00配信

オートスポーツweb

 2019年シーズンは、3名のドライバーがF1デビューを果たした。2018年のFIA-F2のランキング上位3名がステップアップを果たすという珍しいシーズンで下馬評も高かったが、実際にレースの現場ではどのように評価されていたのだろうか。

【写真】2019年F1第20戦ブラジルGP:優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)と2位に入賞したピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)

 前回に引き続き、全戦現場で取材したベテランジャーナリストの尾張正博氏が独自の視点で2019年シーズン後半戦を振り返る。後半は、FIA-F2から昇格してきた3名のルーキードライバーの評価、2019年のベストレース、そして2020年シーズンにおけるレッドブル・ホンダの勝利数の大胆予想をお届けする。

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Q:2019年はアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)、ランド・ノリス(マクラーレン)、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)という3名のルーキーがF1を戦いました。ルーキーの“当たり年”のようにも感じられましたが、彼らの印象はいかがですか。

尾張正博氏(以下、尾張):アルボンについてはドライバー交代についての質問でいろいろと話しましたが、評価するのは難しい。私としてはまだ判断できていません。

 ノリスは意見が分かれるのではないでしょうか。私もここまでやるとは思っていませんでした。ドライバーズランキングでトップ3チームに次ぐ『ベスト・オブ・ザ・レスト』はチームメイトのカルロス・サインツJr.(ランキング6位)で、その後ろがガスリー、アルボン、ダニエル・リカルド(ルノー)、セルジオ・ペレス(レーシングポイント)と続いて、11位がノリスとなっていることを考えると悪くないと思います。

 サインツJr.とのポイント差は47点と開きましたが、予選成績では11勝10敗とノリスが勝っています。ということは、天性の速さがあるということですよね。それにマクラーレンのランキング4位というのも、2012年の3位に次ぐ成績です。

 とはいえ、もちろんサインツJr.も成長しているので一概にはいえませんが、サインツJr.は(トロロッソ時代に)マックス・フェルスタッペンに負けていました。そのサインツJr.を予選で上回るもレースで勝てなかったということは、『それほどでもないのでは?』という見方もできます。ノリスは期待以上でしたが、将来のチャンピオン候補かと言われると疑問が残ります。

 それからラッセルについては、今のウイリアムズの状況では評価はできないですね。ただ、少なくとも2020年に(新しいチームメイトとなる)ニコラス・ラティフィに負けるようではダメ。2019年のようなロバート・クビサとの力関係は維持したいところです。

 ラッセルはメルセデスの育成ドライバーですし、その関係もあって、メルセデス製パワーユニット(PU)を使用するウイリアムズでの待遇は良かった。しかしラティフィは資金力のあるドライバーですので、ラッセルが2020年も今年と同じような待遇が受けられるかどうかはわかりません。それでも、ラティフィに対して16勝6敗くらいでやってほしいですね。

 ルーキーの当たり年かどうかは2020年の成績を見ないとわかりません。当たりとまでは言えませんが、2018年のFIA-F2の上位3人ですし、もちろんハズレではありません。


Q:2019年はホンダ勢の活躍が目立ちましたが、ホンダの活躍に関係なく、今年印象的だったレースを教えてください。

尾張:ホンダ勢の結果に関係なく、とはいえホンダが復調してくれたから後半戦が面白くなったのは事実。ベストレースは第20戦ブラジルGPです。ホンダが復調して、フェルスタッペンが活躍したことを象徴した優勝でもありましたし、本田宗一郎の誕生日、アイルトン・セナの没後25年という話題もありました。

 その一方で『何やってんだ!』というのを象徴するようなフェラーリの同士討ちもありましたよね。エンターテイメント性、ストーリー性、いろいろな要素が凝縮されたレースでした。

 決勝レースではセーフティカーが2回入りましたが、同じ戦略では勝てないからと、フェルスタッペンとルイス・ハミルトン(メルセデス)が逆の戦略を採りました。こういう点もおもしろかったのではないでしょうか。

 もうひとつ挙げるとすれば、第12戦ハンガリーGPもいいレースだったと思います。ハンガリーではレッドブルが負けてしまいましたが、タイヤ選択の判断(レース後半にハミルトンが2度目のピットインを行い、新品のミディアムタイヤに交換)は見応えがありました。

 レッドブルの戦略が間違っているという意見もありましたが、間違いではありません。あのレースは詰将棋のようなレースで、どちらにもミスはなかった。レッドブルは予選ではわずかに速かったけど、レースペースではメルセデスの方が1本も2本も上手だったというレースです。

 逆にちょっとがっかりしたレースは、第17戦日本GPです。もちろんグランプリにケチをつけるわけではありませんが、スタート直後のフェルスタッペンとシャルル・ルクレール(フェラーリ)の接触はよくなかった。単独チームが逃げ切ったらおもしろくないですし、他のチームが優勝争いに加わった方がいいのに、加わるべき2チーム同士が絡んでしまいました。レース前はそれほど悪い結果にはならないだろうと思っていたので残念でした。


Q:最後に、2020年シーズンの大胆予想をお願いします。2019年はメルセデスが15勝、フェラーリとレッドブル・ホンダがそれぞれ3勝ずつという結果に終わりましたが、2020年レッドブル・ホンダは何勝できそうですか?

尾張:まずはメルセデスが6勝(オーストラリア、中国、スペイン、フランス、アメリカ、アブダビ)、フェラーリが7勝(バーレーン、ベトナム、アゼルバイジャン、カナダ、ベルギー、イタリア、ロシア)、そしてレッドブル・ホンダが9勝(オランダ、モナコ、オーストリア、イギリス、ハンガリー、シンガポール、日本、メキシコ、ブラジル)かな。ちょっとフェラーリが多すぎるような気もしますが……。でも、最後は接戦になると思います。

 新しくカレンダーに加わるグランプリについては、ベトナムはストレートが長いからフェラーリ優位。オランダはフェルスタッペンが勝たないとまずいから、フェルスタッペンにしましょう(笑)。ホーナーも、ザントフールトはフェラーリよりもメルセデスやレッドブルに合っていると言っていましたから。

 2019年シーズン総括のところでも話しましたが、今年のフェラーリとレッドブル・ホンダにとって、シーズン前半戦は最悪でした。自滅と言ってもいいような状況でしたが、それさえなければ2020年は面白いシーズンになるのでは? メルセデスは7連覇できないと思いますよ。2019年の後半戦の成績が今の力関係だと考えると、サーキットによってそれぞれのチームの勝敗、勢力図が決まってくると思います。

 ですが、当然フェラーリは直線で速いだけでなく、他の部分での競争力アップ考えてくるでしょうし、レッドブルはホンダPUの馬力アップを考慮すると、中高速コーナーでの強みを増してくる。一方メルセデスは、今まで優勝を諦めていたレースを諦めるわけにはいかなくなる。となれば、メルセデスですら難しいシーズンになるのではないでしょうか。

 ここで本当に重要になのが、セカンドドライバーです。ハミルトン、ルクレール、フェルスタッペン以外だと実力的にはベッテルがトップですが、ベッテルはそう簡単にはチームの言うことを聞かないかもしれないし、そう考えるとルクレールのタイトルも厳しいかもしれません。チーム代表のマッティア・ビノットはチームをコントロールできていないし、ビノットには荷が重いかなと思います。

 ボッタスは私生活でもいろいろなことがありましたが(11月末に離婚)、2020年はもっとレースに集中できるようになるかもしれません。それからアルボンは、もう一皮も二皮も向けてくれないと戦いにならないと思います。もしフェルスタッペンがドライバーズタイトルを獲得すると考えれば、レースではアルボンが2位に入賞してハミルトンが3位以下にならないと、フェルスタッペンとハミルトンとの差が広がらない。メルセデスが得意なサーキットでボッタスが2位に入る可能性を考えると、やっぱりアルボンには2位に入ってほしいです。

 中団争いについては、やはりマクラーレンは良いと思います。荒れたレースでは自力で表彰台を取れるくらいのポジションにいくと思うので、2020年はセカンドグループとサードグループくらいに分かれるのではないでしょうか。ルノー、マクラーレン、ハースに加えて、ここにトロロッソが入るかどうか。レーシングポイント、アルファロメオ、ウイリアムズが遅れを取る可能性があります。

 詳しく見ていくと、ルノーもワークスではありますが、規模的にはトップ3ほどではない。2019年はリカルドが加入しましたが、今年の成績を考えると、やはり(ドライバーよりも)クルマの性能が占める部分が大きいので、エステバン・オコン加入の効果はそれほど期待できないと思います。

 ハースは最終戦アブダビGPに新しいパーツを持ってきていましたが、そのパーツを試していたロマン・グロージャンがボッタスとぶつかってしまって十分なデータ収集ができなかったようなので、どれくらいポテンシャルを持っているかわかりません。とはいえ2020年に向けて今年から開発を進めていると思うので、伸びしろがありそうです。

 アルファロメオは厳しいでしょう。フェラーリ型のフロントウイングが大正解ではなかったというのを考えると、アルファロメオはクルマ作りを変えないといけない。ところが2020年だけのためにクルマを大きく変えることはできないですよね。トロロッソとアルファロメオはそれほど伸びないのではないかと予想します。

 あとは少し気になっていたのですが、2019年シーズンはFIA側に何度かミスがありました。例を挙げるとしたら、今年の日本GPの決勝レースで予定よりも1周早くチェッカーフラッグが振られたこと。他にも開幕戦オーストラリアGPでは一部のグリッドからシグナルが見えなかったり、アブダビGPではレース序盤にDRSが使えませんでした。

 これらのトラブルと、チャーリー・ホワイティング(FIAのレースディレクター)が亡くなったことは無関係ではないと思います。もちろん後任のマイケル・マシに全責任があるわけではないですが、潜在的にあったFIAのシステムの課題がいろいろな形で浮き彫りになりました。

 人間がやる以上ミスは起きるものですが、少しでもミスが起きないようなシステムを作るようにすべきだと思います。特に新しいサーキットはこういうことが起きやすいので、2020年はそういうところも気をつけてやっていただきたいですね。

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尾張正博
 宮城県出身。1993年よりフリーランスのジャーナリストとしてF1の取材を開始。一度は現場を離れたが、2002年から再びフリーランスの立場でF1取材を行い、現在に至るまで毎年全レースを現地で取材している。


[オートスポーツweb ]

最終更新:1/6(月) 10:24
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