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拡大基調を維持 後半は主力の観光が鈍化 2019年の沖縄経済を振り返る

2019/12/31(火) 15:10配信

沖縄タイムス

 2019年の県経済は拡大基調を維持したが、後半にかけ、主力の観光が日韓関係悪化や本土の自然災害などの影響を受けた。小売業は大型商業施設の拡張、新設、大手コンビニエンスストアなどの参入が相次ぎ、競争が激化。消費関連では、10月以降は消費増税に伴う駆け込み需要の反動も生じている。企業の現場では人手不足が深刻化。建設分野では建築コストが高騰し、住宅投資が伸び悩んだ。各分野の1年を振り返る。

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 観光

 航路拡充 日韓関係が影

 2019年の沖縄観光を巡る環境は目まぐるしく変化した。誘客面では空路・海路が拡充し好調に推移したものの、日韓関係の悪化や台風などの影響で局地的に観光客が減少し、影を落とした。政治・経済の問題や災害など外的要因に左右されやすい観光業の弱点を象徴する1年となった。また、県の観光統計に誤りが見つかり、観光客数が18年度で1千万人に到達していたなど、観光統計の在り方を考えるきっかけにもなった。

 19年春には那覇空港際内連結ターミナルビル、下地島空港(宮古島市)が開業。航空路線の拡充や、受け入れ環境が充実した。4月下旬から5月上旬にかけての大型連休や、中国のクルーズ需要の拡大などを背景に誘客面では好調に推移。1~11月時点の累計は約941万人と同時期の過去最高を更新し、県は暦年での1千万人達成を見込む。

 一方で、日韓関係の悪化が沖縄観光にも影を落とした。8月以降、韓国内の訪日旅行を控える動きのあおりを受け、訪沖韓国客が減少。11月は前年比約9割減の5500人と深刻な状況となった。冬場の沖縄観光を支えていた韓国客の減少は年明け以降も、影響が続きそうだ。

 そんな中、18年度の観光客数を999万9千人と発表していた県は11月下旬に、航空会社の報告漏れを理由に同年度の観光客数を1千万4300人へ上方修正した。8月時点で状況を把握しながらも、公表が遅れたことに対して玉城デニー知事が異例の謝罪。観光業界からは、県の対応を疑問視する声が上がった。

 観光客数1千万人達成で沖縄観光は新たなステージを迎えた。20年は那覇空港第2滑走路が開業し、より多くの観光客が沖縄を訪れる。観光の「質」の向上へ、具体的な観光政策が求められる。

 首里城火災

 正殿焼失 観光客遠のく

 10月31日未明、沖縄観光の象徴的な存在だった首里城の正殿などが火災で焼失し、観光業界に衝撃が走った。

 沖縄観光コンベンションビューローは火災翌日、観光関係団体で構成する沖縄ツーリズム産業団体協議会を開き、正確な情報発信や、代替観光コースの提案など基本方針を確認した。修学旅行など大幅なキャンセルはなかったものの、首里城周辺の観光施設は遠のく客足に頭を抱えた。

 首里城は年間300万人近くが訪れていた人気観光地。しかし、火災以降の観光スタイルは一変した。団体客を乗せたバスツアーは車窓から遠目に焼け跡を眺め、個人客は守礼門や歓会門を前にし引き返していく。周辺の土産品店では売り上げが9割近く激減した店舗もあった。

 ただ、12日には西のアザナなど公開エリアを拡大した。また、公開エリアや周辺地域と連携した新たな首里城観光の提案など、誘客対策を展開し客足が徐々に戻り始めている。

 ゆいレール

 延長区間が開業 渋滞解消に期待

 那覇市と浦添市を結ぶ沖縄都市モノレール延長区間(約4・1キロメートル)が10月1日、開業した。10月の1日の平均乗客数は前年同月比9千人増の約6万2千人と大きく伸びている。今後も県民や観光客の足として利便性向上や、慢性的な交通渋滞の解消などに期待がかかる。

 一方で、新4駅(石嶺駅、経塚駅、浦添前田駅、てだこ浦西駅)周辺では、車から乗り降りする乗降スペースの設置などインフラ整備が遅れている。また、利用客の増加に伴う車内の混雑や、バス・タクシーといった公共交通機関との連携に課題を残す。

 沖縄都市モノレール(那覇市)は混雑解消に向け2022年度を目標に3両編成の車両の導入を始める予定だ。また、20年春には全国共通ICカードが利用可能になるなど、利便性向上に向けた取り組みも進めている。

 オリオン買収

 外資が子会社化 シェア回復急ぐ

 野村キャピタル・パートナーズと、米投資ファンドのカーライル・グループが設立した特別目的会社「オーシャン・ホールディングス」(東京都)が3月29日、オリオンビールを子会社化した。

 高齢化により株式の第三者への売却を模索していた大株主の創業者一族からの株式取得や、株式公開買い付け(TOB)で、発行済み株式総数72万株の92・75%に当たる66万7821株を取得した。

 オーシャン社はオリオンの5年後の上場を目標にしている。子会社化後もオリオン株の購入を続け、ほぼ100%を取得した。買収総額は約570億円。

 「県民のビール」の買収に、不安の声も広がった。オリオンは伸び悩みが続くビール事業の立て直しに外資のノウハウを活用して強化する方針だ。外資系企業でマーケティングの実績を持つ早瀬京鋳(けいじゅ)氏が7月、社長に就任。プレミアムクラフトビールやチューハイ商品を投入し、県内シェアの回復を急いでいる。

 県内地価

 6年連続で上昇 投資マネー流入


 県が発表した7月1日時点の県内地価は6年連続で上昇した。伸び率は前年比7・9%で、2年連続で全国トップ。人口や観光客の増加を背景に県経済の拡大が続き、土地の需要が高まった。低金利環境も加わり、国内外からも投資マネーが流入。一部の地域では地価が高騰し、過熱感を指摘する声もあった。
 職人不足などで建築コストも高騰。投資物件によっては収益性の低下も懸念されている。住宅投資の勢いはウエートの高い貸家を中心に鈍っており、本年度の新設住宅着工戸数は11月時点で前年同期比7・5%減少している。
 県不動産鑑定士協会のリポートによると、地価が「上昇」したと答えた企業の割合から「下落」したと答えた割合を引いたDI(景況感指数)は、5月時点と比べて10ポイント以上低下。先行きも全体では低下が見込まれるが、「上昇する」と見る不動産会社もあり、今後の動向が注目されている。

 小売業

 新規出店次々 コンビニ進出 競争激化

 人口や観光客の増加に伴う消費の取り込みを目的とした大型商業施設の開業や国内最大手のコンビニチェーンの新規出店で、県内小売業の競争が激しさを増した。近隣店と客足を奪い合う構図となり、売り上げが低下する店舗も。10月の消費増税による買い控えや暖冬による衣料品販売の不振もあり、各社が年末年始の商戦に力を入れる。人手不足の深刻化で賃金アップや省力化設備の導入も進んだ。

 大型商業施設で県内最多の250店が出店する「サンエー浦添西海岸パルコシティ」が6月27日、オープン。米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の将来的な返還を見据えて、跡地開発後の商業地や住宅街の消費を見込んでいる。ただ、開業当初の交通渋滞のイメージから客足が遠のき、消費増税も重なってテナントが苦戦。施設を運営するサンエーパルコは商戦での立て直しを強化している。

 7月11日にはコンビニ最大手のセブン-イレブンが14店舗を県内初出店。2024年までの5年間で250店舗の出店を掲げる。県内の「食品小売市場」でトップシェアを目指しており、競合する沖縄ファミリーマートやローソン沖縄だけでなく、スーパー各社も競争激化を懸念している。

 沖縄総合事務局によると、県内の百貨店、スーパーの既存店販売額は7、8、10月と前年同月割れ。中小企業を対象に増税の影響を緩和する国の「キャッシュレス・消費者還元事業」に参加できない大手スーパーは自社負担で還元サービスを始める所もあり、価格競争が過熱している。

 全国のコンビニでは、人手不足によるオーナーや従業員の過労が社会問題化。県内でもローソン沖縄の1店舗が初の時短営業と元日休業の導入に踏み切っている。

 害虫ガ

 食害拡大 早期防除図る

 南北アメリカの熱帯・亜熱帯地域が原産の外来のガ「ツマジロクサヨトウ」の幼虫が7月、県内で初確認された。一晩で100キロを飛べる移動能力や繁殖能力の高さで、11月初旬までに14市町村に生息区域を拡大。夏植えのサトウキビや飼料用トウモロコシ、ソルガムの葉などを食害した。

 初確認を受け、国と県は7月、県内54農地で緊急発生調査を実施。農業関係者や市町村担当者を対象に、対策会議を開き、8月以降も1カ月当たり80農地を調査するなど、早期防除に取り組んだ。

 一方、発見から10日たっても現地の農家に情報が共有されなかったケースもあり、緊急連絡体制の構築など早期防除に課題も残った。

 2016年にアフリカで確認され、インドやアジア地域に広がり、各国で深刻な農業被害をもたらした。国内では防除方法が確立されておらず、農薬への耐性の強さや移動能力の高さから、被害の拡大が懸念されたが、11月初旬以降、県内で新たな発生は確認されていない。

 物流

 国際拠点目指し課題も

 沖縄の好景気や「地の利」を背景に、物流関連業界でも活発な動きがあった。

 海上物流では、国内外の物流ネットワークをつなぐ新たな物流拠点「那覇港総合物流センター」が5月1日に開業した。冷蔵、冷凍設備を完備し、貨物の集約から保管、検品、梱包(こんぽう)、混載などを一元化。物流の高度化と迅速化、付加価値の高い貨物の創出を図り、国際物流の拠点として取り扱い貨物の増加を目指す。那覇空港とのアクセスもよく、海上貨物と航空貨物の連携促進も期待される。

 一方で、那覇空港の国際貨物取扱量は減少傾向にある。国際貨物ハブ事業を展開する全日空の沖縄発着貨物便が、2017年から2年連続で減便。中国経済の成長鈍化や、米中貿易摩擦、日韓関係の冷え込みなど世界情勢も影響する。

 県は新規貨物路線を運航する海外貨物便の誘致を進める。それと同時に、1便当たりの貨物量を増やす取り組みも求められる。1月には、那覇空港内で機体整備の専門会社「MRO Japan」が本格稼働した。

 国際物流拠点の実現には、今後、精密機器などを取り扱う製造業、航空機部品製造など航空関連産業の誘致をさらに加速させる必要がある。県内企業の沖縄発の商品や製品を増やす施策も求められる。

 黒糖

 在庫抱え 販路開拓模索

 県産黒糖は、新たな販路を見いだせず、県内で3247トンの在庫を抱える。サトウキビは2012年以降、増産が続いているが、肝心の「出口」となる販路開拓は行き詰まっている。国と県は、販売強化に向け、実証事業や予算措置など支援する考えを示している。

 黒糖の生産量は16年以降、9千トンと安定的に推移している。だが、県外の取引先の倉庫は9218トンが保管されたままで、県内と合わせると、在庫は計1万2465トン。国内で1年間に必要な県産黒糖の約1・7倍に上る。

 JA沖縄中央会など関係団体は、黒糖の在庫解消に向けた支援策を求める要請書を国に提出。当時、沖縄担当相だった宮腰光寛氏は「販路拡大に向けた実証事業を来年度にも行う」と前向きな姿勢を見せるも、同時に製糖業界へ努力を促す意思を示した。

 国は来年度の予算で、在庫を解消するため販売・保管体制を強化する実証事業を実施する方針。販路拡大に向け、本格的に動きだす1年になりそうだ。

 金融

 低金利が長期化 地元3行は減益

 日本銀行の大規模金融緩和による低金利が長期化し、金融機関を取り巻く環境は厳しさを増している。国債の利回り低下で、償還後に再投資をしても利益を得るのが難しくなっており、貸出金の金利の低下も続く。琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行の2020年3月期の中間決算はそろって減益となった。

 県内地銀3行では、県経済の拡大を踏まえ、新たな資金需要の掘り起こしに努めてきた。中間決算では3行とも貸出金残高(平均)が増え、収入の柱である貸出金利息収入を伸ばしたが、金融を取り巻く環境の変化に備えた投資により、経費も増えた。

 琉球銀行は新たな営業店端末など業務効率化に向けた投資を進め、沖縄銀行は一般職廃止で人件費が増えた。沖縄海邦銀行は九州の第二地銀が共同利用する新勘定システムに移行した。

 今後、各行とも「本業」を強化しつつ、手数料収入など新たな収入源の確保にも注力する構えだ。

最終更新:2019/12/31(火) 16:10
沖縄タイムス

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