ここから本文です

乳がん<4>「強く推奨」となったハーセプチンによる術前薬物療法

1/2(木) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

【ガイドライン変遷と「がん治療」】乳がん(4)

 HAR2は細胞の分裂と増殖に関わるタンパク質の一種で、正常な細胞にもあります。ところが乳がん細胞のなかには、それを異常に多く持っているものがあるのです。それが「HAR2陽性」の乳がん、全患者の10%ほどを占めています。増殖力が強く、陰性の乳がんよりも悪性度が高いとされています。

 HAR2タンパク質と結合して、その働きを邪魔するのがHAR2阻害薬。代表は分子標的薬のトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)です。日本では2001年に、手術できない進行乳がんの治療薬として承認され、順調に適応範囲を広げて、2011年11月には、乳がんの「術前治療」に使えるようになりました。それ以前に術前療法を受けたひとでは、ハーセプチンは使われていませんし、ガイドラインにも出てきません。 最新のガイドライン(2018年版および追補版)には

「HAR2阻害剤と抗がん剤の併用は、高い確率で完全奏効(画像上は腫瘍が完全に消えた状態)を獲得できる」

「手術可能なHER2陽性浸潤性乳がんに術前化学療法を行う場合、ハーセプチンを併用することを強く推奨する」

 と明記されています。

 一緒に使われる抗がん剤は、主にドセタキセル、パクリタキセルなど「タキサン系」と呼ばれる薬で、がんの細胞分裂を阻害して増殖を抑える働きがあります。ハーセプチンもがん細胞の増殖を抑えますから、いわばダブル効果で敵を封じ込めるわけです。

 2018年には、別の分子標的薬であるペルツズマブ(商品名パージェタ)が承認されたため、最近では3剤併用療法も広まっています。ただしまだエビデンスが少ないため、ガイドラインでは「弱く推奨」となっています。なおHAR2陽性乳がんには、ホルモン療法があまり効かないので、併用することはあまりありません。

 ハーセプチンの投与期間は、術前・術後合わせて1年間とされています。たとえば術前に抗がん剤と一緒に3カ月投与したとすると、術後さらに9カ月間、ハーセプチンを使い続けるわけです。

 ハーセプチン自体の副作用は弱めなのですが、一緒に使う抗がん剤には、吐気や脱毛その他の副作用があるため、ひとによっては辛い治療になるようです。

(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)

最終更新:1/2(木) 9:26
日刊ゲンダイDIGITAL

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事