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【東京2020】 旭日旗をめぐる問題 なぜ禁止を求める声があるのか

1/3(金) 9:54配信

BBC News

アンドレアス・イルマー、BBCニュース

競技場のスタンドで大観衆が一斉に旗を振りながら、選手に歓声を送る。これは、スポーツの国際大会では当たり前の光景だ。

しかし、その旗が一部の国にとってあまりに忌まわしいもののため、大会での使用の禁止を求める運動が巻き起こった場合はどうか。

まさにその通りのことが、日本の旭日旗と2020年東京五輪をめぐり起きている。どこより強く旭日旗を問題視しているのは韓国で、ナチス・ドイツのカギ十字と比べる政治家さえいる。

今の日常生活でめったに使われない旭日旗をわざわざ掲げる人たちは、旧日本軍を美化し、その人権侵害の記録を修正しようとしている――と、旭日旗を問題視する側は批判する。

韓国は今年の夏季五輪での使用禁止を求めている。しかし、東京五輪・パラリンピック組織委員会は、旭日旗の競技会場への持ち込みを禁止しない方針だ。「旭日旗のデザインは日本国内で広く使用されており、政治的主張にはあたらない」というのがその理由という。

■旭日旗とは

日本の国旗は日章旗、「白地に赤く日の丸染めて」だ。この使用に異議を唱える人は今いない。

旭日旗にも同じような赤い丸が使われるが、そこから太陽光を示す16本の赤い線が伸びている。日章旗も旭日旗も、数百年前から使われている意匠だ。

日本では19世紀から、旭日旗が軍の旗として使われるようになった。そのため、大日本帝国が帝国主義的な拡大を続け、朝鮮や中国の一部を占領した際、軍が掲げていたのが旭日旗だった。

第2次世界大戦では海軍の旗となり、それを機に、毀誉褒貶(きよほうへん)の対象になった。戦争中にアジアの大部分を占領した旧日本軍は、現地住民に対して残虐行為を繰り広げたからだ。

現代では今も海上自衛隊の艦の旗で、陸上自衛隊は少し異なる意匠の旭日旗を使っている。

■なぜ韓国は問題視するのか

日本は1905年の第2次日韓協約で韓国を事実上の保護国として占領し、その5年後の韓国併合で完全な植民地として統治下に置いた。

日本の韓国統治は経済的な搾取で、アジア各地での勢力拡大に伴い、数十万人を強制労働に徴用した。さらに、当時の残酷な帝国主義政府は第2次世界大戦の始まる前と戦時中、日本兵のための軍用売春宿を「慰安所」として設け、そこで多数の少女や若い女性を強制的に働かせた。

いわゆる「従軍慰安婦」と呼ばれるこの女性たちは、性的な奴隷として働かされた。韓国人の被害者のほか、旧日本軍は台湾や中国、フィリピンの女性たちもこうした慰安所に送り込んだ。

韓国では多くの人が、旭日旗を数々の戦争犯罪や抑圧行為と結び付けている。そして、日本で今もこの旗が使われているのは、日本政府が自らの暗い過去にきちんと向き合ってこなかったことの象徴だと見ている。

米外交問題評議会の韓国研究者、エレン・スウィコード氏によると、「植民地統治時代に自分たちが犯した罪について、日本は責任を受け入れられない、あるいは受け入れようとしないと、韓国は様々な事例を挙げて不満を表明」しており、旭日旗はその様々な不満材料が「織り成す織物の1本の糸」なのだという。

韓国の外務省は、旭日旗を日本の「帝国主義と軍国主義」の象徴と呼んでいる。

韓国国会の文化体育観光委員会は昨年、「カギ十字がナチスのシンボルとして欧州の人に侵略の恐怖を思い起こさせるように」、旭日旗は「アジア人や韓国人にとって悪魔のシンボルに近い」のだと主張した。

■中国からの抗議がないのは

日本による侵略の被害を受けたという歴史的経験をもってすれば、オリンピックで旭日旗が上がれば、中国も韓国と同じように反応するかもしれない。

1937年に中国の南京を占領した日本軍は、数カ月にわたり殺害と強姦と略奪を続け、日中戦争最悪の虐殺行為を繰り広げた。

中国側の推定によると、約30万人が殺害されたという。その多くは女性や子どもで、強姦された女性は約2万人に上るとされている。

しかし、今の中国政府は旭日旗について、ことさらに抗議をしていない。

理由は単純に政治的なものだと、米ジョン・ホプキンズ大学南京校のデイヴィッド・アラセ教授は話す。

中国メディアはいずれも国の統制下にある。そして、中国政府は目下のところ、日本との関係改善に努めている。それが理由だと教授は言う。その証拠に、習近平国家主席は今年春にも訪日し、天皇と会談する予定だ。

「だから、中国政府は旭日旗について騒ぎたてないし、それゆえに国民も旭日旗について激高するよう促されたりしないわけだ」と教授は話す。

■ハーケンクロイツと比べられるのか? 

旭日旗が、ナチス・ドイツのシンボルだったハーケンクロイツ(カギ十字)と比べられるものなのか。賛成する意見もあれば、反対意見もある。

旭日旗は日本で数百年前から国を象徴する伝統的な意匠として使われてきた。宣伝や製品にも使われる。

対するドイツでカギ十字がシンボルとして使われたのは、ナチス政権下の時代のみだ。ドイツでは今では使用が禁止されており、今なおハーケンクロイツを使うのは過激主義の団体に限られる。

しかし、たとえ旭日旗の方がハーケンクロイツよりも歴史は古いとは言え、今の日本では「大日本帝国のもとで行われたとんでもない人権侵害を美化し、修正する以外の目的で旭日旗を使う人はいない」と、上智大学の中野晃一教授(政治学)は指摘する。

その上で中野教授は、ナチスのカギ十字よりも適切な比較対象として、アメリカの南部連合の旗を挙げる。19世紀の米南北戦争で、奴隷制度の継続を求める南部諸州が使った旗だ。

アメリカで南部連合旗は使用が禁止されていないし、今も南部の州では掲げられている。しかし、人種隔離や白人優越主義の象徴だと批判する人たちも大勢いる。

■なぜ日本は禁止しないのか

韓国からの圧力はあるものの、日本は譲る姿勢を見せていない。

それどころか日本の外務省は、「今日でも、旭日旗の意匠は、大漁旗や出産、節句の祝いなど、日常生活の様々な場面で使われている」と解説している。外務省ホームページには、英語の解説ページもある。

外務省のホームページは、旭日旗が第2次世界大戦でどういう役割を果たしたかに触れることなく、「皆さん、ご承知のとおり、旭日旗のデザインはですね、大漁旗や出産、節句の祝い旗、あるいは海上自衛隊の艦船の旗、日本国内ではですね、広く使用されており、これが政治的主張だとか軍国主義の象徴だという指摘は全く当たらない」という菅義偉官房長官の説明を載せている。

確かに、日本のリベラルな朝日新聞の社旗は、旭日旗に似たデザインを使っている。

しかし、日本政府は旭日旗が海外でどう受け止められているか、よく承知している。そして韓国は、国際サッカー連盟(FIFA)が国際試合での旭日旗の使用を禁止したと主張している。

■政治的な動きなのか

この旭日旗の問題は、韓国と日本の関係があらためて低調な状態にある最中で出来した。

昨年夏には、戦時中の徴用工訴訟をめぐる外交問題が、日韓両国の間の全面的な貿易紛争にまで発展した。

安倍晋三首相が何も対応しないのは、超保守層へのご機嫌取りだという意見もある。

「現在の日本政府は、極端な国家主義を容認しており、その表現を暗黙の内に支持している」と、米ハワイ大学のハリソン・キム准教授(歴史学)は言う。

とはいえ、日本が帝国主義時代の自分たちの残酷な過去にきちんと取り組むことができないのは、「日本だけの責任ではない」とキム教授は話す。

それはある意味で、冷戦時代のアメリカが日本を同盟国にしたことと関係しているのだと、キム教授は指摘する。

「そのおかげで、日本政府は戦後補償や賠償を通じて自分たちの過去と適切に向き合わずに済んだ」

その結果として、日本は「帝国主義時代の自分たちの犯罪」について、恒久的な形で「記録し謝罪」してこなかったというのが、教授の意見だ。

「法的にも、教育の上でも、そして文化的にも」

(英語記事 Tokyo 2020: Why some people want the rising sun flag banned)

(c) BBC News

最終更新:1/3(金) 9:58
BBC News

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