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大正ロマン漂う詩発見 八尾の民謡詩人・小谷契月

1/6(月) 5:00配信

北日本新聞

■自筆ノート未発表48編 おわら歌「創作の原点」

 情感あふれる越中おわら節の歌詞を多く残した旧八尾町の民謡詩人、小谷契月(1902~71年)の自筆ノートが見つかり、未発表の詩など48編が確認された。文芸の才に優れ、戦前の八尾を代表する文化人だった契月だが、現存する作品が少ないこともあり、郷土文学の中で埋もれた存在となっていた。専門家は「契月の軌跡の一端を明らかにする貴重な資料」としており、五十回忌を迎えた今年、再評価の機運が高まりそうだ。(文化部・近江龍一郎)

 見つかったのは手帳サイズの黒いノート(縦16センチ、横10センチ)。契月の長男、健二さん(89)が富山市八尾町福島の自宅に保管していた遺品の中にあり、静岡県立大の細川光洋教授とおわら研究者の小松朗さん(東京)が共同で調べた。

 ノートには小曲(短い叙情的な小品)や民謡などの詩、俳句の草稿、書簡の下書きが記されていた。特に詩は「大正タイポグラフィー」と呼ばれる大正期に考案された独特の書体で清書されていた。1929年11月より前に書かれ、いずれ出版するつもりだったとみられる。

 呉服商の長男として生まれた契月は22年、20歳で初の民謡集「影燈籠(どうろう)」を出版。地元の文学仲間と同人集や文芸誌を創刊するなど、八尾の文芸活動のリーダー的存在だった。32年に2冊目の民謡集「仏法僧」を刊行し、北陸詩壇で頭角を現した。おわらの歌詞の改良にも取り組み、代表作に「どうせ濡(ぬ)るなら桜の雨に花のしづくにオワラ酔いながら」「雁(かりがね)のつばさ欲しいや海山越えて妾(わたし)ァあいたいオワラ人がある」などがある。ただ契月の作品は今日ほとんど知られていない。今も残っている民謡集は「仏法僧」のみ。「影燈籠」は本自体がなく“幻の詩集”となっている。

 細川教授によると、ノートに収録された小曲は、男女の恋愛などを叙情的に歌い、耽美(たんび)派の歌人、吉井勇や画家の竹久夢二に代表される大正ロマンのような世界を感じさせるという。一例として、恋する女性の思いを詠んだ小曲「春愁」を挙げ、「契月が作ったおわら歌に通じるものがある」と分析する。

 また、山や農村の暮らしを題材とした「仏法僧」との作風の違いも指摘。細川教授は「『影燈籠』と『仏法僧』をつなぐ過渡的な作品」とした上で、おわら歌との共通点から「今回見つかった小曲の世界が契月の原点だったのではないか」としている。

最終更新:1/7(火) 13:00
北日本新聞

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