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ついに復活した、中国の最強ロケット「長征五号」 - 火星探査への道開く

1/7(火) 7:11配信

マイナビニュース

世界トップクラスの打ち上げ性能をもつ、中国の最新鋭ロケット

中国国家航天局は2019年12月27日、最新鋭の大型ロケット「長征五号」3号機の打ち上げに成功した。同機は2017年に2号機が打ち上げに失敗しており、この成功で復活を果たした。

【写真】現在運用中の長征ロケットのひとつ、「長征三号乙」。1960年代の設計がベースになっている

これにより、2020年に予定されている、月からのサンプル・リターン探査機や、火星探査機、宇宙ステーションの打ち上げへの道が開いた。一方で、その運用や旧型ロケットからの世代交代をめぐっては課題も見受けられる。

長征五号の3号機は、日本時間2019年12月27日21時45分(北京時間20時45分)、海南島にある文昌衛星発射センターから離昇した。

ロケットは順調に飛行し、約37分後に搭載していた通信衛星「実践二十号」を分離。所定の軌道に投入し、打ち上げは成功した。

実践二十号は質量約8tもある大型の静止通信衛星で、QバンドとVバンドという周波数帯を使った高機密性・大容量の通信技術や、高推力の電気推進エンジン、高出力の太陽電池など、数多くの新しい技術の実証を行うことを目的としている。

長征五号とは?

長征五号は中国が開発した最新鋭ロケットのひとつで、2016年にデビューした。直径5m、全長57mで、地球低軌道に最大25t、静止トランスファー軌道に最大14tの打ち上げ能力をもち、中国のロケットのなかで最大、また世界のロケットのなかでも米国の「デルタIVヘヴィ」や「ファルコン・ヘヴィ」に次ぐ、トップクラスの性能を誇る。

開発は、中国国営の巨大宇宙企業である中国航天科技集団公司(CASC)の傘下にある、中国運載火箭技術研究院(CALT)が担当した。打ち上げは、中国のハワイこと海南島に新たに建設された、文昌衛星発射センターから行われる。

ロケットは2段式を基本とし、1段目(コア・ステージ)には、液体酸素と液体水素を推進剤とするYF-77エンジンを2基装備する。YF-77はガス・ジェネレーター・サイクルを採用しており、1990年代に開発された長征三号ロケットの上段エンジン「YF-75」をもとに、中国にとって初となる大推力の極低温エンジンとして開発された。

コア・ステージの周囲には、液体酸素とケロシンを推進剤とするYF-100エンジンを装備した液体ブースターを4基装着。YF-100は酸化剤リッチ二段燃焼サイクルと呼ばれる、複雑で高い技術が必要なものの、高い効率が発揮できる仕組みを採用した高性能エンジンで、世界でもソ連/ロシアしか実用化に成功していない。

そして2段目には、液体酸素と液体水素を推進剤とするYF-75Dエンジンを2基装備する。YF-75Dは、長征三号の上段エンジンであるYF-75を改良したものである。

また、オプションとして「遠征二号」と呼ばれる上段を3段目に搭載することもできる。遠征二号は四酸化二窒素と非対称ジメチルヒドラジンを推進剤に使い、複数回の再着火ができ、静止衛星を静止軌道へ直接投入したり、複数の衛星をそれぞれ異なる軌道に投入したりといった運用を可能としている。

厳密には、2段式の標準形態を「長征五号」と呼び、2段目をなくし、1段目とブースターのみの構成にし、低軌道への重量物の打ち上げに特化した機体を「長征五号乙」と呼ぶ。過去にはブースターの本数を2基に減らした、長征五号よりもやや小さな打ち上げ能力をもったバージョンなども計画されていたが、ラインアップを整理するためか、現在では消えている。

そして長征五号の最大の特徴は、エンジンやタンクの一部などを、同時期に開発された中型ロケット「長征七号」や、小型ロケット「長征六号」と共通化し、「モジュール化」を実現している点である。たとえば長征五号のブースターは、長征七号の1段目機体とほぼ同じであり、タンクやエンジンなどをほぼ流用。また長征六号の1段目にもYF-100を使用しているなど、可能な限り部品や生産ライン、治具などを共通化することで、製造にかかるコストや時間の低減、打ち上げの高頻度化などを図っている。

なお、厳密には、長征五号と長征七号はCALTが開発したのに対し、長征六号は同じCASCの傘下にあるものの別の企業である上海航天技術研究院(SAST)が担当しており、エンジンなどは同じなものの、電子機器が異なるなど、共通化は限定的なものになっているとされる。

これら新型の長征ロケットは、現在の主力ロケットである「長征二号」や「長征三号」、「長征四号」からの世代交代を目指している。長征二号などの旧型の長征ロケットは、1960年代の設計をベースとしており、性能や効率が悪く、また人体や環境に有害な推進剤を使っているため運用性にも難がある。新型の長征ロケットはこうした問題を解決し、打ち上げ手段の自律性を維持しつつより高めるとともに、国際的な衛星打ち上げ市場への本格的な参入も目指している。

長征五号 2号機の失敗と復活

長征五号は2016年11月に1号機が打ち上げられ、初飛行ながら完璧な成功を収めた。

しかし、2017年7月に打ち上げた2号機は打ち上げに失敗。ロケットと衛星は軌道に乗れず、大気圏に再突入して失われることになり、以来約2年半にわたって打ち上げが停止することとなった。

中国は詳細をあまり明らかにしていないが、この失敗の原因は、打ち上げから約6分後、1段目にある2基のYF-77エンジンのうち、どちらか1基のエンジンの液体水素ターボ・ポンプが、「複雑な熱環境」によって破損したためだとされる。これにより液体水素の供給が止まり、エンジンが停止。ロケットは墜落することになったという。

事故後、中国はYF-77のターボ・ポンプの設計変更を行い、燃焼試験もやり直した。さらに、長征五号全体の品質管理プログラムを見直すなどの徹底した対策を施した。また、ロケットの構造も見直して軽量化し、打ち上げ能力もやや向上させたうえで、今回の3号機の打ち上げに挑んだ。

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最終更新:1/7(火) 7:11
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