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「甲A」「乙B」… 被害者大半が匿名審理 原則実名も遺族ら差別危惧 8日、やまゆり園事件公判

1/7(火) 5:00配信

カナロコ by 神奈川新聞

 8日から始まる「やまゆり園事件」の裁判員裁判では、刑事訴訟法に基づき、亡くなった19人全員が匿名で審理される見通しだ。差別を懸念する遺族らの申し立てを受け、横浜地裁が公判前整理手続きの中で秘匿を決定した。公判は実名での審理が原則とされるが、今回は「甲A」や「乙B」などの呼称で統一される。

 関係者によると、殺人などの罪で起訴された元施設職員植松聖被告(29)の公判では、殺害された19人に加え、重軽傷を負った26人についても、一部を除いて大半が名前などの個人情報を伏せて審理される予定。知的障害者に対する差別や偏見を危惧する声が遺族・被害者側から上がり、地裁が要望を受け入れたという。

 このため、匿名を希望する被害者については、死亡した入所者を「甲」、重軽傷を負った入所者を「乙」、職員らを「丙」と分類した上で、さらに1人ずつアルファベットを割り当てた表記で呼ばれる。一部の被害者家族は実名での審理を希望しているため、実名と匿名が混在した形で裁判が進むことになる。

 裁判は誰でも傍聴でき、審理される情報は全て公開されるのが基本だ。甲南大学法科大学院の園田寿教授は「裁判が適切に進められているか、不当なものではないかを国民が監視し、裁判を公平なものとして保つため、傍聴の権利が憲法上保障されている」とその理由を説明する。

 一方で刑訴法では、被害者側の申し出のほか、公表によって被害者側が不利益を被る可能性がある場合、個人の特定につながる情報を秘匿できると規定。性犯罪やストーカー事件、少年事件などで認められるケースが多い。条文上は社会的な悪影響が予想される場合も秘匿できる。

 事件を巡っては、遺族らの強い要望を理由に、神奈川県警が被害者の身元を匿名で発表した。事件の発生日前に県が毎年開いてきた追悼式でも、19人の実名は伏せられてきた経緯がある。

 園田教授は「裁判所は秘匿の判断をする際、社会的な利益と被害者側の不利益を慎重に考慮しなければならない」と指摘。今回の秘匿決定に一定の理解を示しつつも、「秘匿された情報や秘匿の判断そのものが正当なのかどうか検証することは、審理中も判決後も求められるだろう」と話している。

神奈川新聞社

最終更新:1/7(火) 5:00
カナロコ by 神奈川新聞

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