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安倍VS菅「官邸内政局」がIRスキャンダルの背景に

1/8(水) 13:31配信

ニュースソクラ

【小塚かおるの政治メモ】菅官房長官追い落としが政権弱体化を招いた皮肉

 「安倍政権肝入りのIR(カジノを含む統合型リゾート)なのに事件化したのは、相手が米国企業ではなく中国だったからだ」

 こんな憶測が永田町では流れる。日本でのIR参入を目指していた中国企業から賄賂を受け取ったとして秋元司衆院議員が逮捕された汚職事件。「中国」といえば政界で太いパイプを持つのは、自民党の二階俊博幹事長だ。秋元議員も二階派所属。まるで二階幹事長がターゲットかのようないかにも永田町らしいキナ臭い噂である。

 背景にあるのは「ポスト安倍」をめぐる権力闘争。安倍首相は自身の後継者として岸田文雄政調会長を思い描き、秋の人事では二階氏を交代させその岸田氏を幹事長に据えようとした。これに対して、今後もキングメーカーでいたい二階幹事長は盟友の公明党とも組んで安倍首相に「交代というなら憲法改正は協力しない」などと徹底抗戦し留任を勝ち取った。その怨念は今も水面下に存在する。今回の汚職事件の構図もその延長線上、つまり「官邸が二階つぶしのために仕掛けた」というわけだ。

 2019年の政局を振り返った時、あまり表面化していないが官邸内や自民党内では新たな権力闘争が始まっていた。「安倍vs二階」にはさらに様々な役者が絡みつく。もっとも政権に深刻なのは菅官房長官がそこに入っていることだ。

 菅氏は安倍首相にとって大事なスポークスマンであり、政権の危機管理を一手に引き受ける参謀であり女房役。本来、その2人が対立するなど考え難い。だが、いまや霞が関の人事を掌握するなど絶大な力をつけてきた菅氏は、4月の新元号「令和」の発表会見以来、「令和おじさん」として国民的な注目度まで高まった。ポスト安倍の1人に躍り出るとともに、キングメーカーにもなり得る可能性を見せ始めたことで、安倍首相や周辺の側近らが菅氏への警戒心を強めてきていたのだ。

 安倍首相の菅氏への不快感は感情論にまで達し、8月に小泉進次郎氏とその婚約者・滝川クリステル氏と官邸で面会した際は、「進次郎の面会目的は菅だったのに、自分はダシに使われた」などと怒っていたという。

 そんな菅氏が一気に墜落の道をたどったのが、菅原一秀前経産相と河井克行前法相という系列2人の閣僚の公選法違反疑惑による辞任だった。いずれも菅氏を支える勉強会を主催する無派閥議員で、閣僚に推薦したのは菅氏だ。もちろん安倍首相の任命責任が問われる場面だったが、自民党内の批判の矛先は菅氏に向かい、菅氏の責任だという声が高まった。安倍首相は「内心は菅氏の求心力低下を安堵し、ほくそ笑んでいた」(自民党ベテラン)のだという。

 ところが、である。11月以降、世間を騒がすことになった「桜を見る会」問題で安倍首相は一気に窮地に立たされる。

 安倍首相は、この危機管理について、不信感を抱いている菅氏に任せずに周辺の側近らと対応してしまった。安倍首相自身が記者のぶら下がり取材に応じることで収束を図ろうとしたのだが、国民を納得させられる説明ができず、逆にあれこれ喋りすぎたことで新たな矛盾も出て、むしろ火に油を注ぐ形になってしまった。

 一方で、菅氏もまた、安倍首相やその周辺ときちんと打合せをすることなく記者会見や国会答弁に臨んでいるため、発言や説明に齟齬を来たし、ますます墓穴を掘ることになってしまった。

 前述したように、第2次安倍政権が7年の長期に渡って続いた理由の一端には、安倍-菅ラインでの危機管理が機能していたことがあった。不祥事閣僚をすばやく更迭して表に出さないようにしたり、例えば、参院選への影響を避けるため「老後に年金2000万円必要」という金融庁のレポートをなかったことにしたり。政治的には許しがたいが、政権としては危機管理を働かせたということになる。

 菅氏が記者会見で「指摘はあたらない」「全く問題ない」という木で鼻をくくったような発言をして記者の質問をはねつけてきたのも、菅氏に力があればこそ通用していたといえる。

 しかし、いまや菅氏は記者会見で答えに詰まり、事務方からメモを差し入れられるほどにボロボロ。「令和おじさん」人気も過去のものになりつつある。

 いま菅氏の本音はどこにあるのか。

 菅氏を支えてきた無派閥議員は「連日の桜問題についての会見対応には相当疲れている。菅氏には、最初の危機管理で首相が早々に表に出たことが尾を引いているという不満がある。安倍首相と側近たちに嫌気がさしている。私たちの中では、首相を守るのはもう止めたらどうかと話している」

 実は、その菅氏に、なんと安倍首相に自分を切ろうとした怒りを抱いている二階氏が接近している。事あるごとに連絡を取り合っているという。もはや「安倍vs二階」にとどまらず、「安倍・岸田vs二階・菅」というさらに深い溝が政権内に横たわるということなってきた。

 直近12月の世論調査で、安倍内閣の支持率が軒並み下落し、共同通信や朝日新聞で支持と不支持が逆転した(共同は支持42.7%、不支持43.0%、朝日は支持38%、不支持42%)。

 安倍首相が望んだ菅氏の求心力低下。しかしそれは結果的に、さらに複雑な権力闘争を生み出し、安倍政権の弱体化に直結するという皮肉となっている。安倍首相は分かっているのだろうか。

■小塚かおる(日刊現代第一編集局長)
1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。

最終更新:1/8(水) 13:31
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