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アイスを売る自転車店 山中温泉の老舗

1/9(木) 1:57配信

北國新聞社

 加賀市山中温泉の「湯の本町商店街」にアイスクリームを販売する一風変わった自転車店がある。「自転車店でアイス?」。そんな物珍しさと、懐かしさを感じさせる木造の店構えが旅行客を引き付け、「インスタ映え」スポットとして人気を集めている。年季の入った建物は確かに雰囲気たっぷりだが、どうしてアイスを売り始めたのか。店主の山下康仁(やすひと)さん(58)に話を聞いた。(加賀支社・荒井淳志)

 訪ねたのは「山下自転車店」。山下さんの祖父母が100年ほど前に山中で開業し、1931(昭和6)年に旧山中町で起こった大火を機に現在地に移転した。築90年近くの店舗をのぞくと、自転車の部品や工具が所狭しと並ぶ中に、アイス用の冷凍庫があった。

 アイスを売り始めたきっかけは、2017年8月に湯の本町商店振興会が始めた「山中温泉アイスストリート」だった。加盟店がオリジナルのアイスを販売する試みで、現在は34店舗が計42種類を提供している。

 山下さんは振興会事務局のメンバーとして企画の立ち上げに携わった。「せっかく盛り上がってきたのに、言い出しっぺが何もしないのは悪いかな」と、自ら手を挙げたのだという。

 扱うのは、松浦酒造(山中温泉本町2丁目)の甘酒と酒かすを使い、地元の洋菓子店が作った「甘酒アイス」(1個200円)で、山下自転車店での限定販売だ。アルコールは入っておらず、欲しい場合は冷凍庫の上の貯金箱にお金を入れて自分でアイスを取り出すセルフサービス式である。

 試しに一つ買ってみると、甘酒の風味そのままの素朴な味わいで、店の雰囲気に妙にマッチしていた。

 アイスを売る以前から特徴的な店の外観を撮影する観光客は多かった。注目した振興会は同店の写真をアイスストリートのポスターに起用。現在は観光客がパンフレット片手に訪れる人気スポットになっている。

 ただ、「ここで本当にアイスを買えるの?」と不安がられたり、タイムスリップしたかのような店構えに戸惑ったりして、入店をためらう人も少なくないという。店に人けがない場合は余計に入りづらいようだ。

 セルフ式にしたのは、そういう背景もあるそうで、「店には自由に入ってもらって大丈夫。冷凍庫は入ってすぐ右手にあるから」と山下さん。アイスの味だけでなく、このおおらかな人柄や、人情味あふれる商店街の雰囲気が人を引き付けるのかもしれない。

 アイスストリートの加盟店は現在も増加中で、自転車店以外にも気になる店舗がめじろ押しだ。足しげく通い、自分好みの味を探しながら、商店街の魅力も探ってみたくなった。

北國新聞社

最終更新:1/9(木) 1:57
北國新聞社

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