ここから本文です

運動の刺激が細胞の炎症や老化を抑える!? 専門家「元気に働くために…50代、60代での運動習慣が大切」

1/11(土) 16:56配信

夕刊フジ

 【今から始めよう!70代まで働く健康術】

 新年の誓いで運動習慣の継続を挙げた人もいるだろう。運動をしないと足腰は弱くなり、生活習慣病は悪化するといわれる。その理由はなにか。運動の刺激がないと細胞の炎症が広がる可能性について、東京都健康長寿医療センター整形外科の宮崎剛部長らが、2019年9月に発表した論文で、明らかになった。

 「今回の研究では、運動が体の炎症や老化を抑制するメカニズムを解明しました。経験則ではなく、細胞レベルで適度な運動は炎症を抑えるために欠かせないことがわかったのです」

 宮崎部長らが着目したのが、炎症や老化に関わるタンパク質のNF-kB(エヌ・エフ・カッパー・ビー)。これが働くと細胞の炎症性サイトカイン(別項参照)の後押しをして、細胞の炎症と老化が進んでしまう。NF-kBを抑制するのが、核の中に分布するCas(キャス)というタンパク質。研究では、片方の脚の運動性を低下させたマウスでは、Casが骨細胞の核外に分布し、NF-kBをうまく抑制できず、骨量が減少した。

 「骨に適度な運動で衝撃を与えると、Casが核内に入ることで骨量低下を防ぐことにつながります。適度な運動による刺激が大切なのです」

 Casを欠損したマウスは、普通の運動をしても骨に衝撃が伝わらないマウスと同様に、骨量が減少していた。Casの仕組みは、単に骨細胞だけにとどまらない。

 「今回の研究は骨の細胞に焦点をあてていますが、CasやNF-kBは、全身の細胞に存在します。生活習慣病、認知症やサルコペニアなどの加齢性疾患は、炎症との関わりが深い。それらの炎症にも、CasやNF-kBが関わる可能性が高いのです」

 過去の疫学調査などで、運動と生活習慣病の関係が深いことは分かっている。福岡県の久山町研究では、中年期の握力レベルが高いと、将来の循環器疾患や慢性閉塞性肺疾患の発症、死亡リスクも低下することが示唆された。また、国立がん研究センターの多目的コホート研究でも、身体活動量が高いほど死亡リスクが低下。男性はがんと心疾患の死亡リスクも低下したと報告された。病気に関わる炎症は運動で抑えられるのだ。

 「70代まで元気に働くためには、50代、60代での運動習慣が大切になります。若い頃からの適度な運動習慣を心掛けましょう」

 宮崎部長によれば、歩くだけでも下肢に体重の2~3倍の負荷がかかる。大まかにいうと、膝などの局所的には、70キロの人なら150キロ以上。走った場合には5~6倍の負荷が。70キロの人はなんと400キロ以上の負荷がかかっている計算になる。そのため、いきなり走ると膝などを痛めてしまう恐れがある。まずは歩くことを意識して、慣れてきたら軽いジョギングをしよう。

 「無理をして故障しては元も子もありません。私たちの研究では、1日10分でも効果はあります」

 次週さらに詳しくお伝えする。(安達純子)

 ■炎症性サイトカインとは

 細胞から分泌されるタンパク質の一種で、インターロイキン6(IL-6)やTNFαなどを炎症性サイトカインと呼ぶ。アレルギーをはじめ生活習慣病、がん、歯周病、認知症など、さまざまな病気の慢性炎症を引き起こす。病気予防や改善では、いかに慢性炎症を封じ込めるかがカギを握る。

最終更新:1/11(土) 18:06
夕刊フジ

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事