ここから本文です

「災害はまた必ず起こる。だからこそ…」 巻誠一郎が熊本復興支援の先に見据える未来

1/11(土) 15:03配信

REAL SPORTS

少しでも誰かの力になりたいと誓ったあの日から、今も前を向いて走り続けている。

2016年4月、甚大な被害をもたらした熊本地震の発生から3年半。復興は進んでいる。だが、それでもまだ終わっていない。

「自分にできることをやってきただけ」

地震発生直後から避難所を駆け回り、苦しんでいる人たちに寄り添ってきた巻誠一郎は今、愛する故郷に何を思い、どんな未来を描いているのだろうか――。

(インタビュー・構成=野口学[REAL SPORTS副編集長]、撮影=たかはしじゅんいち)

「目の前に困っている人がいたら、まずはその人から助ける」

2019年12月、私たちが見慣れた格好とは違う装いに身を包んだ、巻誠一郎がいた。緊張からか、少しぎこちない笑顔で壇上に上がってトロフィーを受け取り、率直な思いを口にした。

「災害というものは、無いに越したことはないと思いますし、こういう場で僕が話すことではないと思うんですけども……。ただ、前を向いて進む地域の方々の象徴として、僕がこういう賞を頂くことによって、共に前に進んでくださった皆さんが、笑顔になって、一緒に喜んでくれて、それが本当に素晴らしいことで、これからの未来のきっかけになればいいなと思っています」

スポーツを通して社会貢献活動を行う個人、団体を表彰する「HEROs AWARD 2019」の受賞プロジェクトとして、巻が2016年より活動を開始している「YOUR ACTION KUMAMOTO」が選ばれた。

2016年4月、熊本地方で発生した熊本地震は、最大震度7の揺れを2度にわたり観測し、甚大な被害をもたらした。家屋被害は、全壊が8673棟、半壊が3万4726棟、一部損壊を含めると19万棟にも及び、264人もの死者を出した(関連死を含める)。

「16日に本震があったその夜が明けた段階で、自分で覚悟を決めて、日本の皆さんに情報を発信しよう、物資を集めようと。その時から、アスリートとしての価値、力を社会的な部分で思う存分に発揮するというのが、自分の中の変化でした。共有して、巻き込む。その時に決めたことが、目の前に困っている人がいたら、まずは目の前の人から助けようと」

巻自身も被災した身でありながら、すぐさま動き始めた。避難場所としてサッカーグラウンドを開放したことに始まり、支援団体の立ち上げや物流拠点の設置にも尽力した。3カ月もの間、毎日、避難所を回った。その数はのべ300にも上る。一人ひとりと向き合い、真摯に話に耳を傾けた。

「普段は、地域に根差したプロサッカーチームの選手として、皆さんに支えられて成り立っているということを日々実感していました。今度は自分が地域の人たちを助けなきゃ、支えなきゃという、本当にその思いのみで動いていました」

そこで巻は、サッカーの、スポーツの持つ力を、あらためて感じたという。

「地震の後、うつむいて前を向けない子、夢を失った子がたくさんいました。でも、そういう子の足元にボールを蹴ると、必ずボールは返ってくる。ボール一つでコミュニケーションが取れる、皆とつながれる。それがサッカーであり、スポーツが持つ力だと思っています。アスリートが持つ力というのは大きくて、僕らがボールを蹴れば子どもたちが笑うんですね。子どもたちが笑えば、周りの大人も笑う、おじいちゃん、おばあちゃんが笑う。その一瞬だけでもつらいことを忘れられる。そういうところから前に進むきっかけが出てくると僕は確信しています。アスリートが持つ力というのは、世の中に還元できる。そのように思っています。なのでこの賞は、僕自身だけでなく、世の中のアスリートの皆さんのきっかけとなれるような、そういう賞にしたいなと思います」

そうスピーチを締めくくり、降壇した。

震災から3年半――。熊本の現状はどうなっているのか、これから何をしていこうとしているのか。そして、私たちは何ができるのだろうか――。

受賞後の巻に話を聞いた。

1/5ページ

最終更新:1/11(土) 15:03
REAL SPORTS

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事