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希望くれた少年、20歳に 激励のうちわを手に山鹿市で対面 東日本大震災で被災した千葉さん(宮城県)

1/14(火) 10:07配信

熊本日日新聞

 「激励のうちわをくれた山鹿市の少年に会いたい」。東日本大震災で被災した宮城県気仙沼市の千葉しげ子さん(73)は13日、山鹿市の成人式に駆けつけ、励ましてくれた若者と念願の対面を果たした。当時、同市の三玉[みたま]小6年生だった森正秀さん(20)=福岡県岡垣町。「心温まる言葉をありがとう」。大震災から3月で9年。ようやく会えた“うちわの少年”の健やかな門出を祝った。

 千葉さんは気仙沼市で生まれ育った。2003年、海の近くにペンションを開き、ローンを完済した2年後の11年、東日本大震災が襲った。津波に備えてペンション3階に避難したが、近所の男性に説得されて高台の小学校に逃げた。

 その男性は津波にさらわれて亡くなり、愛着のあるペンションも跡形もなく流された。その夏、喪失感にさいなまれながら暮らす千葉さんの手元に、1本のうちわが届いた。

 表には、熊本と宮城の人たちが手をつなぐ絵。裏には、森さんの名前とともに「みんな仲間です。いつも笑顔で」と書かれていた。

 うちわは、山鹿市鹿本町の若者でつくる招魂会と市商工会が被災地に6千本送ったうちの1本。メッセージを書いたのは山鹿の小中学生と園児だった。千葉さんは「1本のうちわに背中を押され、笑顔で頑張ることができた」と振り返る。

 12年10月、気仙沼市内の高台にペンションを再建した。それから夏が来るたびに、うちわを見ては「森君は中学生になった」「高校を卒業した」と思いをはせるようになった。

 昨年7月、森さんが間もなく20歳になると気付き、お礼とお祝いに成人式へ行こうと決めた。日程を調べて航空券を購入。昨年末、山鹿市教育委員会に手紙を書くと、森さんと会えることになった。

 成人式の後、会場の市総合体育館で対面した森さんはスラリとした長身の青年だった。互いに抱き合い、握手を交わした。千葉さんはうちわを握り締め、自然と涙がこぼれた。

 地元の高校を卒業後、福岡県の自動車工場で働く森さんは「自分のうちわがどんな人の手に渡ったのか知りたくて、会ってみたいと思った。初めてなのに他人じゃない気がした」。森さんの成長を願っていた千葉さんから成人祝いの筆記具を贈られ、「自分でも気付かないうちに、知らない人から支えられているんだと思った」とはにかんだ。

 千葉さんは「感無量です。いつか気仙沼に遊びに来てほしい」。復興の月日とともに成長した青年を、優しく見つめた。(山鹿支局・河内正一郎)

(2020年1月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

最終更新:1/14(火) 10:12
熊本日日新聞

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