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人工の靭帯やIoT義足で未来の医療を変える、大学発スタートアップたち

1/15(水) 8:00配信

アスキー

神奈川県川崎市のK-NICで「第34回NEDOピッチ」が実施された。同イベントは、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)と、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共催による、オープンイノベーションを創出することを目的としたピッチイベントだ。第34回のテーマは「大学発ベンチャー×ヘルステック特集」。

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大学発ヘルステック企業
 神奈川県川崎市のK-NICで「第34回NEDOピッチ」が実施された。同イベントは、オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)と、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共催による、オープンイノベーションを創出することを目的としたピッチイベントだ。第34回のテーマは「大学発ベンチャー×ヘルステック特集」。
 
 今回の登壇企業は、BionicM株式会社、PLIMES株式会社、Core Tissue BioEngineering株式会社、京ダイアグノスティクス株式会社、株式会社FuturedMeの5社。いずれも、大学の研究室での研究成果をベースに事業化を目指し、開発を進める企業で、医療現場に革命をもたらす可能性を持った技術を保有している。本稿では、各企業の事業内容とピッチの模様をお届けしたい。
 
BionicM株式会社
 BionicM株式会社は、義足の開発の開発を手がける。
 
 同社の開発する義足は、膝の伸展・屈曲・振出、転倒の防止、椅子からの起立、階段の昇降をアシストする動力を持った「パワーアシスト付ロボット義足」。
 
 市場の99%を占めるという受動式の義足には、重量、バッテリー駆動時間、機能性、デザイン性、価格といったさまざまなハードルがあると同社では指摘する。BionicMの義足は、使用者の動きに応じてロボット制御する。ユーザーのより自然な歩行をアシストするほか、受動式の義足と比較して、ユーザーの疲労も軽減できるという。
 
 Founder兼CEOの孫 小軍氏は、自身も9歳のときに足を切断。義足を使う中で、機能性の不全を感じ、ソニーに勤務後、東京大学で義足の研究の成果を活用して、BionicMを設立した。
 
 この日のピッチを担当した経営管理部部長 関口 哲平氏は「自動化、交通や歩行の手段というより、SUKNEEはIoTのひとつ。機械学習によって、使えば使うほどユーザーにあった義足になることを目指す」と話した。
 
PLIMES株式会社
 PLIMES株式会社は、誤嚥防止をサポートするウェアラブルデバイス「GOKURI」の開発、提供を行なう。
 
 同社は、筑波大学人工知能研究室 サイバニクス研究センター 附属病院未来医工融合研究センターの研究成果を社会に還元するための大学発スタートアップ企業として創業。
 
 同社が紹介したのはAIによる嚥下の計測と分析ができるウェアラブルデバイス「GOKURI」だ。
 
 脳血管に疾患があったり、歳をとって嚥下機能が低下すると、通常の食事でさえ、喉にものをつまらせてしまう恐れが出てくる。GOKURIを頸部に装着すると、内蔵のセンサーが嚥下音や姿勢を計測。それをAIとクラウドデータベースを用いて解析することで、正しく嚥下できたかどうか、嚥下能力がどの程度なのか定量化することが可能。
 
 継続して嚥下機能を計測することで、感覚で行なっていた飲み込みの様子の評価を定量化できるほか、誤嚥を防止するための姿勢の指導などにも活かせるとした。
 
 ただ、GOKURIを普及させるためのビジネス環境に課題を感じており、実際に営業を始めてみると「導入して介護保険がとれるのか」「嚥下に関する現場の知識と経営者層のズレを感じる」といった声を聞いたという。GOKURIに興味を持った介護施設の担当者や責任者は、ぜひ同社にアプローチしてほしい。
 
Core Tissue BioEngineering株式会社
 Core Tissue BioEngineering株式会社は、早稲田大学 理工学術院 岩﨑 清隆教授が開発した技術を用い、医療現場で使える人工の「膝前十字靭帯」を開発している。
 
 現在、腱を損傷した患者の治療としては、患者自身の健康な腱を採取して、損傷した部位に移植するのが一般的。
 
 同社では、岩﨑 清隆教授による「生体組織から細胞成分を除去する技術」「強度保持が可能な生体組織滅菌技術」を応用することで、生体組織を原料にした膝前十字靭帯再建術に用いる移植用グラフトの事業化を目指している。
 
 同社によれば膝前十字靭帯の損傷は、スポーツの分野で頻度が高く、年間1万人に4人ほど見られるという。同社の製品が実用化されれば、患者の負担をより最小限に抑えつつ、未来の治療方法を置き換える可能性もある。
 
 最近も「ラグビーワールドカップ2019」の開催で国内が大いに盛り上がったが、国民が楽しみにしているスポーツの分野に大きく貢献できる可能性を持った技術なので、早い段階での実用化に期待したい。
 
ダイアグノスティクス株式会社
 京ダイアグノスティクス株式会社は、京都大学医学研究科の研究成果をもとに設立されたスタートアップ企業。
 
 京都大学医学研究科と連携し、遺伝薬理学ユニットの転移・浸潤機序研究および消化管外科個別化医療研での成果をベースに、次世代のがん診断関連製品・サービスを開発、提供している。
 
 同社によれば、大腸がんの2015年の罹患数は国内で13万5800人、世界では140万人にも登るという。最も身近で、かかる人の多いがんとも言い換えられるだろう。
 
 京都大学での研究過程では、Trioタンパク質大腸がん細胞に存在するタンパク質の構造)の「Y2681リン酸化」が、大腸がん細胞の血行性転移を支配することを発見。Y2681リン酸化を検知する抗体を用いた診断キットにより、大腸がん予後の薬剤応答性を予測できるほか、医師が、補助化学療法を実施するかどうかの判断材料にもできるとした。
 
 
株式会社FuturedMe
 株式会社FuturedMeは、東京理科大学の創薬技術「CANDDY」をもとに設立したスタートアップ企業。CANDDYは、生体内のタンパク質分解現象を利用し、小分子を用いてがんの原因になるタンパク質(標的)を、「阻害」せず「分解」に誘導する「標的タンパク質分解創薬技術」だ。
 
 CANDDYを用いることで、生態に備わっている「タンパク質分解機能」を「疾患標的タンパク質」に向け、タンパク質を分解に誘導することが可能。従来の医療では実現できなかった標的に対しての治療効果が期待されるという。
 
 現在の医療現場では大学病院や国立がん研究センターで、がん組織の遺伝子変異を調べ、最適な薬の選択に役立てられる「遺伝子パネル検査」がはじまっている。しかし、遺伝子パネル検査を持ってしても、最適な薬が見つかる患者は多いとは言えないのが現状だという。
 
 同社は、「いま、薬がない人に薬をとどける」をミッションとしてかかげている。創薬困難な標的(アンドラッガブル・ターゲット)」の医薬品開発を目指すとする同社の技術が普及すれば、がん患者ひとりひとりが、自分に最適な医薬品で治療を受けられる未来が実現するかもしれない。
 
 
文● 貝塚/ASCII.jp

最終更新:1/15(水) 15:57
アスキー

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