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芥川賞、記者が選んだ作品は? 候補作読み比べ座談会

1/15(水) 11:50配信

西日本新聞

 第162回芥川、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれる。芥川賞は古川真人さん(31)=福岡市出身=の「背高泡立草(せいたかあわだちそう)」など5作、直木賞は湊かなえさん(46)の「落日」など5作が候補入り。計10人中7人が初候補というフレッシュな顔ぶれが中心となった両賞選考会を、西日本新聞の記者が展望した。(記者:内門博、小川祥平、北里晋、坂本沙智、佐々木直樹、諏訪部真、野中彰久、平原奈央子、藤原賢吾)

【写真】直木賞候補の5人

―まずは芥川賞。4回目の候補となる古川作品から。

 北里: おなじみの長崎の島を舞台にしたサーガだが、物語が膨らみ展開にもメリハリがつき、読みやすくなった。同時に登場人物や時間軸が複雑に絡み合って読み進むのに難渋する独特の息苦しさ、暑苦しさもなくなり、普通の純文学になった気もする。
 平原: 空き家にうっそうと生い茂る草を刈り取っていくうち、一家や島の歴史が顔を出す。いくら刈っても生えてくる草は、回復力という肯定的な意味としても、逆に執拗(しつよう)にまとわりつく疎ましいものとしても捉えられる。一族の女性陣の果てしないおしゃべりも繁茂のイメージに重なる。
 佐々木: 「四時過ぎの船」で2度目の候補作となった際、島田雅彦選考委員が講評で「血縁関係の中にとどまらず、もっと空間的、時間的に大きな視野に立って、壮大な物語を紡いでもいいのではないか」と指摘した。本作はこれを意識したのでは? 物語の奥行きは広がった。
 藤原: いくつもの挿話が時間、空間を超えていくが、本編との関係が分かりづらく、物語に厚みを与えているとは思えなかった。

―高尾長良さん(27)は3度目の候補。

 平原: 音と言葉について思索を深める現代文学としては現実離れしているほど格調がある姉妹の話。高尾さんはデビュー作では拒食症、その後日本書紀をテーマに書き、今度は音楽。ジャンルが幅広く改めて才能を感じた。
 坂本: 姉妹と、再会する父親との距離感が、うまく描かれていた。
 藤原: 「インテリ果汁100%」とでも呼びたい知的な作品。「あえて」の古くさい表現や翻訳小説のような文体に、方向性は違うが平野啓一郎さんの「日蝕」を思い出した。
 野中: ある女性の手記だという断り書きが冒頭にある。そういう体裁にした理由が理解できなかった。

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最終更新:1/15(水) 11:50
西日本新聞

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