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知られざる刑務所の実態、更生プログラムで涙する受刑者も…映画「プリズン・サークル」

1/15(水) 10:06配信

弁護士ドットコム

犯罪報道がなされる度に、罪を犯した人に対する厳しい非難が浴びせられる。ときには報道が過熱したり、ネット上で「犯罪者に人権は必要ない」「刑務所にずっと入っていてほしい」などの声が上がることもある。

しかし、実際に罪を犯した人がどのような「生きづらさ」を抱えて犯罪に走ったのか、刑務所でどのようなことがおこなわれているのかはあまり知られていない。

そんな閉ざされた日本の刑務所に初めてカメラを入れたドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』が2020年1月25日からシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)ほか、全国で順次公開される。

坂上香監督に話を聞いた。(編集部・吉田緑)

●国内で唯一のプログラム「TC」をおこなう刑務所

~舞台はPFI刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」~

映画の舞台となるのは、国と民間が協働で運営するPFI刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」(島根県浜田市・2008年開設)。

受刑者の指導や生活管理は公務員である刑務官がおこない、警備や職業訓練などは民間が担っている。「島根あさひ」をはじめ、国内には4カ所のPFI刑務所がある。

「島根あさひ」の最大収容人数は2000人。犯罪傾向の進んでいない男子受刑者(初犯者など)が服役している。

カメラは、受刑者の普段の生活やプログラムでの様子をうつし出している。

~受刑者が「語る」ことを許されるTC~

「島根あさひ」は国内で「TC(Therapeutic Community・映画では「回復共同体」と訳されている)」という教育プログラムを実施する唯一の刑務所だ。

プログラムでは、受刑者は円座(「サークル」とよばれる)になり、お互いに犯行前の生活や家族、犯した罪、自分の心情などについて語り合うことで、犯罪の原因や問題の対処法を身につけることを目指す。運営するのは、心理や福祉などの専門スタッフだ。

プログラムの中で、受刑者たちは「本人(加害者)役」「被害者役」などを演じるロールプレイングをおこなうこともある。ロールプレイングで「被害者役」と対話することで自分の罪と向き合い、涙を流す受刑者もいる。

参加できるのは、受講希望者の中から条件を満たした40人程度。参加者は半年から約2年間、「TCユニット」とよばれるグループに在籍し、寝食や作業をともにしながら、週12時間ほどのプログラムを受ける。

受刑者は余暇時間以外に話すことは許されない。黙々と食事をし、移動の際は規則正しく行進する。自分の言葉で語り、感情を表現することが許されるのはプログラムの時間内だけだ。

TC受講者の再入所率は、受講しなかった人たちと比べて半分以下という研究報告もある。

●「語り」で明らかに…受刑者の過去に虐待や暴力などの体験も

映画では、詐欺、強盗致傷、傷害致死などの罪を犯した受刑者たちが登場する。彼らは、家族との触れ合いがなかったり、親に愛情をもらえなかったり、暴力を受けたりしてきた過去をもつ。自分が親や他人などにされた行為が「虐待」「暴力」だと気づいていない人もいる。

「彼らのなかには1年以上かかって、ようやく自分のことを語ることができるようになる人もいます。自分のことを語るまでに時間がかかるんです。彼らの言葉に、じっと耳を傾けてください。今まで見えなかった何かが、見えてくるはずです」

特徴的なのは、受刑者が自らの過去のエピソードを「語る」場面でサンドアート(砂絵)が使われることだ。サンドアートは、受刑者1人1人の物語を繊細に描き出している。

「撮影ではさまざまな制約があり、受刑者の顔をモザイクで隠さなければなりませんでした。そのような中で彼らの言葉を伝え、彼らを『人』として描くためには工夫が必要だなと思い、サンドアートを使うことを考えました」

●取材許可が下りるまでに6年、公開まで約10年

法務省は「社会に開かれた刑務所」の運営を目指し、メディアの取材に応じるようになってきている。しかし、取材許可が下りるまでに要した年月は「6年」。撮影期間の2年を合わせると、公開まで約10年かかったことになる。

坂上監督によると、最初は「前例がない」という理由で企画書を受け取ってもらえなかったり、取材の相談先をたらい回しにされたりしたこともあったという。

刑務所の合意が得られた後もスムーズに撮影は進まなかったようだ。そうこうしているうちに制作資金が底をつき、2016年にはクラウドファンディングで寄付を募り、約700万円を達成した。

さまざまな困難を乗り越え、ようやく公開される『プリズン・サークル』。坂上監督は「学校の先生や子育て中の方、子どもたちなど、広く一般の方達に見ていただきたい」と話す。

「犯罪報道の表面的な部分だけではなく、その裏に何が起きているのかを知ってほしいなと思います。

私たちもすこし何かが違えば、犯罪や非行に走っていたかもしれません。『犯罪者』と『それ以外の私たち』と分けるのではなく、『同じ人間』として見てほしい。

映画の舞台は刑務所の中ですが、社会の中でもっと話をしたり、助けてもらえたりする場所があれば、刑務所に行かずに済んだかもしれません。そういう意味で、外に何がないのか、何があればよいのかをみんなで考えるきっかけとなればと思います」

【『プリズン・サークル』作品情報】

WEBサイト: https://prison-circle.com

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:1/15(水) 10:17
弁護士ドットコム

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