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[ルポ]部屋には薬の袋、足の裏にはカイロ…独居老人「死ねないから一日耐える」

1/16(木) 12:14配信

ハンギョレ新聞

「危機世帯実態調査」同行取材 金浦陽村邑の13危機世帯訪問 8世帯は不在のため案内文だけ貼る 一部の人は警戒し「大丈夫だ…何事もない」 「生きること自体が人の迷惑」訴えも

 呼び鈴は鳴っても人の気配はなかった。

 15日午前、京畿道金浦市(キンポシ)のある賃貸マンション。陽村邑(ヤンチョンウプ)行政福祉センター所属の公務員で社会福祉士のパク・ウンギョン、ウィ・セアさんとともに、健康保険料とマンション家賃の数カ月分を滞納しているAさん宅を訪ねた。この日の訪問は、最近相次ぐ「一家心中」を防ぎ、危機に瀕する世帯を見つけるための実態調査の一環だ。Aさんは数回の電話にも出ていない。福祉士たちは玄関のドアに案内文を貼り、引き返した。Aさんは社会保険料の滞納などがあり、政府の危機世帯発掘システム(社会保障情報システム「幸福e音」)で危険群に分類されている。社会福祉士たちはこの日午前、約2時間にわたりAさんのように連絡のつかない13世帯を訪ね歩いた。このうち不在の8世帯には案内文を貼りつけた。

 家に誰かがいる場合には警戒心をあらわにした。国民年金と家賃の滞納情報が登録されているある家庭では、「大丈夫だ。何事もない」と言ってドアを閉めてしまった。ある70代のおばあさんは「子どもらがいるのに、国家の助けを受けられるのか」と聞き返してきた。パク主務官は「相当数の市民が、扶養家族がいると政府の支援を受けられないと自ら判断し、相談もしない」とし、「現在の状況を教えてくれれば、その家庭に最も適した福祉サービスを探して提供する」と説明した。

 政府の危機世帯発掘システムでも把握できていないケースもある。「生計に困難を来している独居老人がいる」との町会長の通報により、14日に訪ねた77歳のBさんがそのケースだった。持病で長い闘病生活を送るBさんの家は、薬の袋でいっぱいだった。寒いと足が腫れてしびれるというBさんは、靴下の底に使い捨てカイロを貼っていた。

 「マンションの家賃月13万ウォン(約1万2300円)、管理費10万ウォン(約9500円)、都市ガスなんかの公共料金10万ウォンとかを引けば、おかず代も残らない。昼間保護施設や訪問療養なんかの自己負担費用は息子が負担している。子どもたちも苦労しているのに、また助けてくれなんて言えない。子どもたちがくれた小遣いも途切れた。すまなくて電話もできない。死なないので一日一日を耐えている。一度に薬を13錠も飲みながら、こんなふうにに生きなければならんのか…」。Bさんは長いため息をついた。彼は、基礎年金や国民年金などの40万ウォン(約3万8000円)あまりで生計を維持している。ホ・ユン個別化福祉チーム長は、「家族による扶養義務などの福祉基準線を幅広く拡大する必要がある。制度の壁に阻まれて、実質的に支援が必要な人が危機に追いやられるケースもある」と強調した。

 このような中、京畿道は5日に発生した「金浦一家心中」のケースのように、政府の危機世帯発掘システムの外に置かれた民間マンション居住者を対象とした調査に入った。金浦市が民間マンション団地167カ所のうち51カ所を対象として管理費の滞納状況を調査した結果、267世帯の滞納が把握された。民間マンションは入居者代表と管理事務所の同意がなければ管理費の納付内容を収集することができないが、51カ所のみが同意したのだ。民間マンションの場合、個人情報流出などを理由に、地方自治体に対する管理費の納付内容の公開を渋っているという。金浦市の関係者は「まず確認できた267世帯が直面している状況を把握するため、電話や訪問調査を進めるほか、同意していない民間マンション団地を説得する作業も並行していく」と話した。

 福祉の死角地帯を最小化するための措置が随時とられているため、現場の公務員の業務も重くなっている。昨年一年間で陽村邑に危機世帯危険群と通報された世帯だけで1500世帯あまりに上り、これを6回に分けて調査したのだが、人手は社会福祉士3人、民間生活事例管理士1人の計4人。1人当たり370世帯あまりを調査したわけだ。ホ・ユンチーム長は、「人手が足りず、社会保障協議体、民間ボランティア団体まで動員した。さらに相談要請や報告書の作成、事例管理などまであり、現場の人手が不足している」と不満を述べた。
文・写真/イ・ジョンハ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:1/16(木) 12:14
ハンギョレ新聞

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