ここから本文です

オリンピック後、日本のスポーツビジネスが目指すべき未来の提示

1/17(金) 7:02配信

VICTORY

横浜DeNAベイスターズ初代球団社長で一般社団法人さいたまスポーツコミッション会長を務める池田純氏とフリマアプリ大手メルカリ会長でサッカーJ1・鹿島アントラーズ社長の小泉文明氏の対談が、昨年12月に東京ビッグサイト青海展示場で開催された「レジャージャパン2019」で実現した。VICTORYではその模様を全4回にわたって紹介する。最終回である第四回は東京五輪、そして大会後の日本のスポーツビジネスの行く先について熱く語った。

◇ ◇ ◇

ーラグビーW杯の次は東京五輪。どのようなことに期待していますか。

池田 「私は、2020年以降にスポーツ、エンターテインメントがどうなっていくかに興味・関心があります。五輪は確実に盛り上がるので、その後にサッカーも野球も含めて、スポーツはどうなっていくだろう、どの地域でどんなスポーツの盛り上がりが生まれるだろうということに関心があります。例えば、宮崎はサーフィンですごく盛り上がっています。富山はeスポーツに力を入れ出している。私が関わっているさいたまは“スポーツ都市”を目指す中で、自転車やスケートボードなどのアーバンスポーツをはじめ、多様なスポーツとの関わりをどうつくっていくか提案しています。

 一般生活者がスポーツを『みる』『する』ための環境づくりに行政や民間が、どんどん投資していかないとそれは実現できません。2020年以降に、どの地域に、どういうスポーツ、どういうエンターテインメントが生まれて、どう一般生活者が関われるかに私は興味があります。今関わっているさいたまは“サッカーの街”ですが、サッカーとともに他のスポーツも発展し、“スポーツ都市”に向かうには、五輪は絶好のタイミングです。

 ベイスターズでいうと、神奈川には1000万人近い人口があるのですが、かつては野球に興味があるのは50万人だけという調査結果が出ていました。そこで、公園に野球ができる施設をつくりますとか、草野球に選手を派遣して一球投げますとか、いろいろな一般生活者との接点をつくりました。マトリクスをいっぱい書いて、どこを埋めればいいかオセロみたいに考えて、最大公約数的に接点の大きな部分からどんどん埋めていく、という戦略を取りました」

小泉 「私は、カシマスタジアムが五輪の会場になるので、まず確実に運営しなければいけないというプレッシャーがあります(笑)。ただ、池田さんと同じで、このきっかけをどう次の五輪以降に持っていくかだと思います。

 その中で、気になっていることが2つあります。一つは日本のスポーツってエンタメというより体育ですよね。稼いじゃいけないみたいな“圧”がある。選手も、協会も、マネタイズが下手というか、あまり考えていない。例えばカーリングにしても、あれだけ平昌五輪で盛り上がったのに、マネタイズを全くやっていなかった。あのタイミングでクラウドファンディングとかの仕組みを入れていたら、恐らく彼女たち日本代表の4年間の活動費が集まったはずです。ラグビーも、もうちょっとファンが直接的にお金を出して支援できる仕組みを用意していっていかないとと思います。

 もう一つは、ファンの状況があまりにも情報化されていないことへの懸念です。五輪は多くの国民が興味・関心を持つ機会なので、“自分たちのお客様”というのをいろいろな競技団体が正しく理解できれば、マネタイズを含めた継続性につながっていくのではないかと思うんです」

ー五輪後を考えると、人口減少による観戦者数の縮小も懸念されます。

小泉 「人口減少については、競技人口が減ることのほうが恐怖ですね。野球とか、サッカーみたいに、1チームの構成人数が多い競技にとって、この人口減少はかなり痛い。テニスとか1人でプレーするスポーツへ圧倒的に子供たちの意識が向いてしまっているので、危機意識を持っています。

 私は、カシマスタジアムでサッカーの試合がある日に、スタジアムの外にバスケットコートや野球のストラックアウトがあってもいいと思うんです。毎日、お祭りのように来て、さまざまなスポーツに触れてもらって、できればサッカーを見に帰ってきてほしいよね…と。そういう機会を提供するような形に、スタジアムとかスタジアム周辺を再整備しようかなと今、考えています。プロクラブチームは一つの街の象徴ではあるので、そこがある程度リードしながら、若い子だけじゃなく、お年寄りも含めてスポーツに触れる機会を提供していきたいですね。

 お年寄りといえば、ヨーロッパではスタジアムに老人ホームをつくるチームが出てきていて、これは絶対に成功するなと思いました」

ースイス・リーグのバーゼルですね。本拠地ザンクト・ヤコブ・パルクのメインスタンド前に107戸もの高齢者用住宅が併設されています。

小泉 「そう、バーゼルです。おじいちゃん、おばあちゃんにとって一番悲しいのが、子供や孫が会いに来てくれないこと。スタジアムなら、年に何十試合かはサッカーを見ることをきっかけにして、会いに来てくれる。親子3代が一緒にサッカーを見る。入居費用は高いのですが、親族に会えるという価値はプライスレスなので、人気がすごいんですよ。そういう形で、スポーツをきっかけに家族の会話、出会いのきっかけをつくっていく取り組みも、今後出てくるのではないかと考えています」

池田 「私は、とあるゴルフ場から、変革期ということで、年齢はゴルフの世界ではとりわけ若いようですが理事として関わらせてもらっています。そこで大切にしているのが、『街に開く』ということ。地域密着が、次世代のゴルフ場、ゴルフ文化づくりには欠かせないのではないかと考えています。そこでしか飲めないクラフトビールのタンクを置いたり、午後5時を過ぎたらパーティーができる施設として地域のゴルフ会員の家族や仲間に貸し出したり、子供とカートに乗ってまわれたり、足湯をつくったり、“ゴルフ場のアフター5”のような文化を地域に開くことが大切になってくるでしょう。地域の人たちがそこで飲み食いして、ゴルフをきっかけに集うコミュニティになっていく。そうすることで、ゴルフ場は地域の一般生活者を含めた幅広い層のランドマーク、アイデンティになれます。子供の時に見た球場やスタジアムの景色って大人になっても忘れないじゃないですか。ゴルフ場の景色も記憶に刻まれて、一つの大きな接点、きっかけになり、ゴルフのレッスンを始める子も出てくるかもしれません」

ーそうした地域の取り組みが競技人口の減少に歯止めをかける。

池田 「これからは、より一層多様化が進む時代です。だからこそ、スポーツに関わる人間としては、“ゆる~~く”スポーツと関わらせられる様々な環境整備がスポーツや地域の発展には大事だと思っています。『野球をやれ』と言っても、きつい、怒られるのは嫌という時代。『やれ』という強制に、今の子供は拒否反応を示すし、根性論の時代でもなくなりました。“軽い気持ちで気楽にすぐできる”という接点を広くつくることに、私はこれからのスポーツビジネスの鍵があると考えています」



※「レジャージャパン2019」は2019年12月に開催されたイベントです。


池田純氏×小泉文明氏対談・最終回 <了>

VictorySportsNews編集部

最終更新:1/17(金) 7:02
VICTORY

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事