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中島京子さん初の近未来小説に、あなたは現代が抱える「違和感」を思う|『キッドの運命』

1/18(土) 11:30配信

本がすき。

柔らかな筆致で鋭く、でもどこかユーモラスに物語を語る直木賞作家・中島京子さん。斬新な着眼点が多くの本読みを虜にしています。新作は初の近未来小説です。「今までの小説の書き方では捉えられない現実が起こっている」と考えた中島さん。新しいことに挑戦したと語ります。

舞台は近未来でも、でき上がったのは地に足のついたリアリズムの現代小説でした

ゆっくり記憶を失っていく認知症の父親と家族の10年間を描いた連作短編集『長いお別れ』が中央公論文芸賞と日本医療小説大賞を受賞し、世の本読みたちの耳目を集めた直木賞作家の中島京子さん。ほかにも、昭和初期を舞台に描いた直木賞受賞作品『小さいおうち』、江戸時代初期の女性城主清心尼(せいしんに)を描いた『かたづの!』など、作品ごとに全く新しい世界を見せてくれるのが特徴です。

新作『キッドの運命』は中島さんが初めて書いた近未来小説です。

「もともと文芸誌で30年後の未来を書くというテーマをいただいて書いたのが表題作。依頼されたのが2017年でしたので、2047年を舞台に書いたのですが、ちょうどそのころ、2045年に人工知能が人間の知性を超えるというようなことを言い出していました。それとは別に、2011年にロボットを作っているおじいさんの話を別のWEB文芸誌に書いていまして……。この小説は福島第一原子力発電所の事故が衝撃で、そんな恐ろしいことが起こってしまったんだ、もう一度起こったらこの国はなくなってしまうのではないか、と思って書いた掌編です。この2つが合体して、愛国心が強いおじいさんが出てくる表題作を思い付きました」

「キッドの運命」は浜松でNipponjinというロボットを作る老人のもとに、海からドーニーという乗り物を操縦した女がやってきて……という話。近未来を描いているのだろうと思って読み進めていくと、ギョッとすることになります。

「私は根が古いモノが好きなので志向が過去を向いていて、これまでそういう小説ばかり書いてきました。いっぽうで、すでに私たちの日常にはびっくりするような変化がたくさん起こっているという思いがありました」

「『種の名前』という作品は遺伝子組み換え作物に力を入れている種会社のことが頭にありました。わが国では種子法が廃止されたので、このままいくと巨大企業が種を独占するかもしれない、と。『赤ちゃん泥棒』は男性が人工子宮を移植して妊娠する話ですが、これも技術的には可能になると聞いています。そんな最先端の変化が、私たちの日常の中で起こっている。でも、私たちの気持ちがついていかない……。私が今まで書いてきた小説の書き方では捉えられない劇的な変化が現実的に起こっていると思っていて、それを今までやっていない書き方で書いてみたかったのです」

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最終更新:1/18(土) 11:30
本がすき。

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