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中国はなぜ、仮想通貨は禁止するがブロックチェーンは推進するのか?──米中貿易戦争の根本は通貨

1/18(土) 6:00配信

CoinDesk Japan

バベル・ファイナンス(Babel Finance)は、中国最大級の金融サービス企業。

同社は仮想通貨マイニング企業と連携して、仮想通貨業界および仮想通貨に裏付けられたローン、預け入れサービス、証拠金取引、デリバティブなどの商品に資金を提供している。2018年7月以降、4億ドル(約440億円)の仮想通貨に裏付けられたローンを発行し、貸付残高は3億ドル(約330億円)を超える。

業態を仮想通貨に転換する以前、バベルの共同創業者フレックス・ヤン(Flex Yang)氏とデル・ワン(Del Wang)氏はマイクロファイナンスに携わっていた。ヤン氏の最初のベンチャー企業スタンダード・フィナンシャル・インクルージョン(Standard Financial Inclusion)は、銀行口座を持たない人々に金融サービスを提供していた。

ヤン氏はメールで、2019年の仮想通貨、習近平国家主席のブロックチェーンがもたらすチャンスを「つかみ取る」という野望、そして中国の中央銀行「中国人民銀行」が発行するステーブルコイン、いわゆるデジタル人民元が世界の金融にとって何を意味するのかについて、自身の見解を明らかにしてくれた。なお同氏の回答はわかりやすさを期して、一部編集されている。

──2019年、業界で最も大きな出来事は何でしたか? それらはこの先、業界にどのような影響を与えますか?

2つの最も大きな出来事は関連している。フェイスブック(Facebook)のリブラ(Libra)プロジェクトと中国のブロックチェーン技術への転換です。この2つは、ブロックチェーンと通貨開発の関係を明らかにしたという点でつながっている。

リブラは仮想通貨とブロックチェーン技術に対する一般の関心を集めた。習国家主席がブロックチェーン技術の重要性に言及したことは、中国政府の独自デジタル通貨の開発を加速させた。主にリブラが人民元(RMB)に与えるプレッシャがその理由だ。2つとも業界には長期的にポジティブな影響を与える。

リブラは数多くの障害に直面し、習国家主席の発言は短期的には仮想通貨に対する規制当局の監視を強めた。だが、これら2つの出来事は業界により多くのリソースと人材を惹きつけ、最終的には長期的に市場を盛り上げていくと考えている。

──2019年、中国において仮想通貨あるいはブロックチェーン技術にとって、最も重要な展開は何でしたか?

残念ながら2019年、ブロックチェーン技術における重要な展開を私は何も目にしていない。一方、ブロックチェーン技術に対する中国政府の姿勢には進展があった。だが、最も重大な影響は仮想通貨ではなく、人民元に対するものだ。

──中国はなぜブロックチェーンを国家的優先事項と位置づけたのでしょうか?

私の意見では、中国の野心はブロックチェーン技術自体よりも人民元を強化することにある。この国家的優先事項の重要な原動力は、現状はうまく行っていない人民元のグローバル化戦略と、中国では多くの人がアメリカ政府による取り組みと認識しているリブラによる競争圧力。そのため中国政府は、人民元をより強化し、世界的により受け入れられるようにする方法を模索している。

──2017年以前に撤退した仮想通貨企業が中国に戻ってくると思いますか?

習国家主席の発言後、中国における仮想通貨企業への規制は強化された。中国には「正規軍が入る前に、無法者を一掃する必要がある」という古いことわざがある。規制環境がより明確になるまで、撤退した企業が戻ってくることはないと思う。これは短期的にはほとんど不可能。その代わり、中国政府はサプライチェーンマネジメント、食品業界における原産地追跡などの分野において、ブロックチェーン技術の普及と利用を推進している。仮想通貨とは無関係だ。

──中国人民銀行のデジタル通貨「デジタル人民元」についてはどう考えていますか? どのように展開されると予想しますか?

中国人民銀行のデジタル通貨の取り組みは、人民元を国際貿易の場にもたらすためのきわめて初期のステップであり、中国における現行のデジタル決済システムを置き換えることが狙いではない。リブラや他国政府によるデジタル通貨からのプレッシャーのもとで展開していく。しかし、中国で実際に普及するにはかなり長い時間がかかると考えている。

──中国での仮想通貨マイニング業界は2019年、どのように進化しましたか?

中国のマイナーにとっては劇的な1年だった。大きく3つの時期に分けることができる。

まず第1四半期、市場は非常に静かだった。ほとんどのマイナーは非常に悲観的だったが、参入する企業もあり、新しいエネルギーを吹き込んだ。

第2四半期から第3四半期にかけて、マイニング業界はビットコイン価格の高騰によって非常に急速な成長を遂げた。しかし、第3四半期末の大きな下落とハッシュレートの凄まじい上昇があり、そうした好調な日々は長く続かなかった。第4四半期や2020年第1四半期に納入予定でマイニングマシンを購入した多くのマイナーは大きな損失を被った。

第4四半期はマイニング業界にとって厳しい時期だった。メーカーはディスカウント価格でマイニングマシンを売り始めた。メーカーはまた(バベルのような)仮想通貨金融機関と連携して、2020年の新世代マイニングマシンの登場に備えて在庫を整理しようとした。私は2020年、より多くの企業が市場に参入すると見込んでいる。 |

全体として、業界には多くの変化があり、一部の新しいマイナーは急速に成長した。この先のビットコイン報酬の半減期に対するマイナーの態度は大きく割れており、結論を出すには半減期まで待つ必要がある。

──進行中の貿易戦争は仮想通貨業界に影響を与えていますか?

中国とアメリカの貿易戦争は、2019年5月~6月のビットコイン価格高騰の主要な要因の1つだった。だが9月以降、市場は他の資産を好むようになり、ビットコインは貿易戦争を心配する投資家にとって「安全な避難先」資産ではなくなった。

しかし、より深く掘り下げると、中国とアメリカの貿易戦争の根本にある対立は通貨の競争だ。そのため、進行中の貿易戦争は、国家が所有するリソースや企業を仮想通貨業界に引き込むことによって、長期的な影響をもたらすと考えている。

──仮想通貨業界について他に思うことは?

私は長期的にはまだビットコインに対して楽観的で、皆がガチホ(HODL)することを願っている。一方、仮想通貨業界はきわめて初期の段階にあり、1980年代のインターネットのように、我々の期待から多くの発展が生まれるでしょう。時間をかけて見守っていきましょう。

翻訳:山口晶子 | 編集:増田隆幸 | 写真:Flex Yang, Co-Founder of Babel | 原文:Why China Is Banning Crypto but Is Bullish on Blockchain

CoinDesk Japan 編集部

最終更新:1/18(土) 6:00
CoinDesk Japan

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