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寂しいけど仕方ない――東京の再開発ラッシュを眺め、僕は50年後に思いをはせる

1/19(日) 21:40配信

アーバン ライフ メトロ

王子駅前にあった「幻のような飲み屋街」

 2019年12月某日、僕は、JR王子駅近くの「さくら新道」にあるスナック「まち子」で、ひとり飲んでいました。

 さくら新道は、王子駅のホームと「飛鳥山公園」(北区王子)の隙間にある、小さな小さな幻のような飲み屋街。往時は20軒以上の店が営業していたそうですが、2012年の5月に火事があり、3軒あったうち2軒の長屋が焼けてしまい、その景色が一変してしまいました。

 それからわずかに残っていた数軒の飲み屋も次々と店をたたみ、今は「まち子」ただ1軒が残るのみ。そのまち子も年内で閉店してしまうといううわさは、飲み友達から聞いていました。ずっと気になっていて、やっと足を運べたのがつい先日。すると確かに、入り口に張り紙が貼ってあります。

「スナック まち子は、平成31年12月末日まで営業させていただきます」

 時代が令和に突入する前に、すでに2019年いっぱいでの営業終了が決まっていたことがわかります。どんなに混雑しているだろうと思いながら、ゆっくりとドアを開けると、意外にも先客はおらず。

 そういえば以前、「常連さんの多くが高齢になり、あまり遅い時間まで飲んでいる人はいない」と聞いたな。時間は20時を回っており、もうピークタイムは過ぎていたのか。おかげで久しぶりに再会したママと、ゆっくりお話をさせてもらうことができもした。

薄れていく人々の街の記憶

 50年以上もここでお店を切り盛りされてきたママだけど、相変わらずきれいでお元気そうなことに、まず一安心。

 やはり、行政からついにこの場所の立ち退き要請があり、ゴネるだけ損だろうと、閉店を決意したそう。たまらなく寂しいけれども、ママは現在、頼りになるお子さんたちに協力してもらって、新しく店を始められる物件がないかを探し始めているらしく、その話は大きな救いでした。

 帰り際、記念にお店で使っていたグラスをくださるというので、ありがたくいただき、会計をしてお店をあとに。振りかえり見ると、やはりこの時代に存在していることが奇跡的としか思えない風景。

 老朽化をはじめ、さまざまな問題もあるだろうし、長く歴史を刻んだとはいえ、多くの人にとっては、なくなってしまっても何も問題のない場所でしょう。「この貴重な風景をいつまでも保存してほしい」というような一部の酒飲みの思いは、常にかき消されます。

 さくら新道はこれからさら地となり、桜の木を植えて、隣の飛鳥山公園の一部のような場所になるそうで、そこに小さな飲み屋街があったことも、徐々に人々の記憶から薄れていってしまうのでしょう。

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最終更新:1/20(月) 16:21
アーバン ライフ メトロ

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