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ドキッ!オカンだらけの投稿写真 ぽろりはないが「愛がある」

1/19(日) 16:00配信

まいどなニュース

 居間で寝転び韓流ドラマざんまい。そうかと思えば、風呂上がりでタオル1枚ほっと一息。時には大ファン氷川きよしさんの公演でうっとり。そんなオカンの赤裸々な素顔を捉えた写真を、自身のフェイスブックに投稿し続けている男性がいる。ちょっとした遊び心で始めたシリーズは、ことのほか好評を博し、ついにはオカンだらけの写真展まで開いてしまった。被写体の当人はさぞ当惑されているだろうと思いきや、まんざらでもない様子らしい。

【写真】氷川きよしさんの東京ドーム公演前でわくわくする「オカン」

 京都市内で中古レコード・古書の店「100000tアローントコ」(中京区)を営む加地猛さん(46)=大阪府枚方市=が、近くに住む母千春さん(81)をスマホで撮影して投稿するようになったのは5年ほど前。その際、自分のアイコン写真もオカンにした。「オカンに丸ごと乗っ取られたイメージやってんけどな(笑)」

 以来、不定期で掲載。コメントもなしで写真のみを投稿することもある。

 なぜオカンなの?。

 「オカンって、ほんま謎が多いやん」。千春さんは、いわゆる「大阪のオカン」の典型。例えば、こんなことがあったという。

 親戚の葬儀。慣れない場で、どんな風に振る舞っていいか戸惑う猛さんを尻目に、オカンは隣で大号泣。悲しむ遺族。こういう時、どんな言葉を掛けたらいいのか。ありきたりの言葉ではうそっぽくなってしまうのではないか。猛さんがためらっていると、オカンはごく自然な形で声を掛ける。やはり人生経験が違う。「オカン、すげー」。と、関心しているのもつかの間。程なくして周囲の親族に「せっかく集まったんだし」とカラオケに誘う。

 「どないやねん、っていうことばかり」

 この世に生を受けて40年余り。誰よりそばで見てきたといえ、オカンはいまだ計測不能な存在なのだ。

 「もー、またそんなん撮ってー!」

 スマホのカメラを向けると毎回のようにそう言いながら、時にはピースサインも飛び出す。「いまだにフェイスブックがどういうもんか、いまいち分かってはいないみたいやけど」

 昨年7月。オカンが氷川さんの東京ドーム公演に行くというので猛さんは同行した。もちろん、撮影には絶好のチャンスである。

 新幹線の車中で弁当をほおばるオカン。東京駅のホームに立つオカン。あこがれの氷川さんに黄色い声援を送るオカン。翌日、雨の中、浅草の雷門を散策するオカン。道中、写真だけを順次アップしていった。

 東京まで1泊2日。なんて親孝行なんだろう。

 「そんなん違うって。どう言ったらいいんかなあ。例えば飼い犬の散歩でも、近所ばっかりじゃなくて、たまには広い公園に連れて行きたいやん」

 オカンの娯楽に付き添うのも、猛さんにとっては、あくまで自然な日常の延長のようだ。

 飾らない魅力にあふれたオカン写真の数々。それは、高級レストランの料理や有名人とのツーショットなど、とかく「リア充」ぶりを誇示する写真があふれるSNS上で異彩を放った。

 だからだろう。オカン写真を見た猛さんの知り合いが写真展を開こうと提案してきた。話はとんとん拍子で進み、ついに2017年5月、京都市内のギャラリーにオカン写真約50枚が並んだ。会場を訪れたオカンはあられもない姿を世にさらされて怒り出すかと思いきや、まさかの大喜び。友達にも喜々として自慢していたらしい。「テレビに映ったみたいな感じなんかな。子どもみたいに、はしゃいでた」

 そんなオカンも、実は老老介護の日々を送っている。猛さんのオトンは、もう随分前から寝たきりで、介護が必要な状態が続いている。だから最近は猛さんが週3回ほど、近くの実家に寄り、父のおむつを替えたり、部屋の掃除をしたりしてデイサービスに送り出すのを手伝っている。

 「朝寝てるとオカンから電話が掛かってきて『もう8時やでー』って、学校に遅れる子どもを起こすみたに言ってくる。思わずイラッとして『こっちは(世話を)やったってるのに』みたいな言葉を言ってしまう。でも、ほんまは、むしろ、やりたくてやっている寄りなんやけど、オカンから、やるべきことをやっていないみたいに言われると、ついムカッとしちゃう」

 家族だからこそ、時に意に反することを口にしてしまうものだ。分かり合うことはそう簡単ではない。

 それでも、猛さんにとってオカンは、やはり偉大なる存在でもある。

 「介護って、やっぱり一緒に暮らしてる人が一番大変やと思うねん。だから、オカンは大変やと思う。俺なんか普段は別のとこで暮らしてて、ちょこっと手伝うぐらいやから、全然大したことあらへんよ」

 それでも、決してへこまず、人生の苦しみも笑い飛ばす勢いでパワフルに生きるオカン。そこに注がれた息子の視線には、やっぱり愛がにじんでいる。

(まいどなニュース/京都新聞・樺山 聡)

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最終更新:1/19(日) 16:09
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