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アメリカはなぜ中国の「為替操作国認定」を解除したのか。貿易交渉合意の“ご褒美”のその先に……

1/20(月) 8:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

ドル売り介入の催促なのか?

今回発表された為替政策報告書では、トランプ政権のドル高を嫌気する胸中が透けて見えた。

エグゼクティブ・サマリでは、前述の中国に関する記述以外に、「近年ではほとんどの主要な貿易相手国で、自国通貨売り介入の規模や頻度は落ちている。だが、これは歴史的なドル高が進むなかでそうなっていることだ」という皮肉を込めた一文も目を引いた。

これは要するに、ドル高の地合い(=相場の状態)だからこそ、他国は自国通貨売り・ドル買い介入をやらずに済んでいるのであって、他国が介入を積極的に自制しているわけではないという本音の表れだろう。

こうした皮肉に続けて、報告書には「かかる状況下、自国通貨安(≒ドル高)の場合でも、自国通貨高(≒ドル安)の場合と同様に、為替介入を対称的に運用するかどうかを米財務省は監視する」という一文が綴られている。

これは非常に気になる記述だ。というのも、この一文を字面通り理解すると、「ドル安・自国通貨高局面でドル買い・自国通貨売り介入をするならば、ドル高・自国通貨安局面でも同じようにドル売り・自国通貨買い介入をせよ」と催促しているようにも思える。

昨夏以降、米財務省によるドル売り介入の有無が話題になってきたことを思えば、見逃せない論点だ。実際、2019年8月末の時点で、ムニューシン米財務長官はドル売り介入について「現時点で検討していない」と語りつつ、「将来は状況が変わる可能性がある」と含みを持たせていた経緯がある。

上の一文は、要するに「アメリカが手を動かさず、ドル高で得をしている諸外国が手を動かすべき」というロジックだ。その意味では、いかにもトランプ政権らしい主張ではないだろうか。

アメリカのドル高懸念が当面の注目材料

為替政策報告書を発表するタイミングが、(今回1月だったように)本来の4月・10月から完全に外れてしまっていることや、報告書発表とは関係ないタイミング(2019年8月)で中国の為替操作国認定が下されたことなどを見るにつけ、もはや報告書はかつてのような形式に縛られた定例報告ではなく、トランプ政権の「政争の具」と化してしまっている。

今後を見通しても、非常に扱いづらい材料になってしまった感がある。

そうしたなか、あえて今回の報告書から何か含意を引き出すとすれば、11月の大統領選挙を前に、トランプ政権の通貨政策がドル高相場に相当敏感になっていることがうかがえた、ということだろうか。

ドル売り介入を催促するかのような記述は今後も継続されるのか、気になるところだ。昨夏に耳目を集めたドル売り介入に対する懸念は、その主体が米財務省になるのか、それ以外の海外金融当局になるのかの違いはあるが、いずれにしても大きな注目を集めるトピックであり、今後も目が離せない。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

唐鎌大輔:慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構、日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局に出向。2008年10月からみずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)でチーフマーケット・エコノミストを務める。

唐鎌大輔

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最終更新:1/20(月) 17:01
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