ここから本文です

[寄稿]東アジアの民主主義

1/20(月) 6:57配信

ハンギョレ新聞

 昨年、香港で一国二制度と市民的自由を守るための市民の戦いが繰り広げられた。先日の台湾の総統選挙では、香港市民の戦いに刺激を受けた人々が、台湾の自主自立を掲げる蔡英文総統を圧倒的な票数で再選した。民主主義は近代西洋で始まった政治の仕組みだと思われてきた。しかし、今や東アジアでも定着している。韓国も民主化から30年以上経過し、いろいろと悩みはあるようだが、市民が積極的に行動し、腐敗した政権を倒すという力を発揮していることは、日本から見てうらやましく感じる。政治に限らず文明一般に関して、進んだ西洋、遅れたアジアという図式が明治以来の日本人の頭の中には続いていたが、今やアメリカやイギリスでは民主政治が混迷し、アジアでは民主主義が作動している。

 日本は明治維新の後にアジアで最初に議会政治をはじめ、政党政治は長い歴史を持っている。第2次世界大戦における敗戦の後、日本の民主化は大いに進んだと日本人は思ってきた。しかし、現状を見ると日本がアジアの民主主義の先頭を走っているとはとても言えない。

 昨年11月、安倍晋三政権は近代日本の憲政史上最長の政権となった。しかし、長期政権につきものの腐敗やおごりが蔓延している。たとえば、昨年秋の国会では、政府主催の桜を見る会に安倍首相の地元支持者が大量に招待され、公金によって酒食の供応を行っていたことが明らかになった。本来、桜を見る会は各界の功労者をねぎらう行事とされてきた。しかし、安倍首相の後援会は支持者向けに桜を見る会のための東京旅行を企画していた。政治家が私費によって支持者を花見に招き酒食を提供すれば、公職選挙法違反となる。政府主催の公的行事なので選挙法違反とはならないというのが今のところの政府の説明だが、普通の市民にとっては釈然としない話である。

 一人当たりの供応の金額は大したものではない。しかし、事は金額の問題ではなく、権力者の順法精神の問題である。この会には詐欺的商法で刑事責任を問われている人物も招かれたことがあり、そのことを宣伝に利用したことも明らかになっている。こうした事実から、桜を見る会の招待者名簿を明らかにし、適切な予算執行が行われたかどうか検証すべきと野党は追及しているが、政府は名簿を破棄したと言い張り、実態解明を拒んでいる。

 この他にも、カジノを含む統合型リゾート施設の設置をめぐって元国土交通副大臣がわいろを受け取っていたとして逮捕されたり、前法務大臣夫妻の関係者が選挙違反の疑いで捜査を受けたりするなど、不祥事が続出して安倍政権は傷だらけの状態である。

 しかし、意外なことにというべきか、日本の世論は沸騰していない。韓国の法務大臣に対する検察の捜査については日本のテレビのワイドショーも大騒ぎしたのに、自国の前法務大臣の件については厳しい追及がない。1月の世論調査を見ても、内閣支持率は横ばいあるいは微増で、人々は政治の不祥事について怒っているわけではなさそうである。

 その理由は、日本人の多数が、政治は変わらないとか、他に政権を担う政治家はいないとあきらめていることである。2009年の民主党政権の誕生までは、日本人も政治を変えることによってよりよい社会を目指すという希望を持っていた。しかし、東日本大震災を経て民主党政権が崩壊すると、人々は政治の変化について悲観的、あるいは冷笑的になった。

 民主主義を支えるのは、政治の力によって自分たちや子供たちにとってよりよい社会を作ることができるという希望と楽観である。経済の停滞と人口減少が続く日本では、特に若い人々が希望を失っている。今とは違う社会がありうるという希望を喚起するのは野党の仕事である。政治に対する幻滅について日本がアジアの先頭を走るという事態は、何としても脱却したい。

山口二郎・法政大学法学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:1/20(月) 12:30
ハンギョレ新聞

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事