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ほとんどの人は交渉が下手すぎる。僕が交渉のときに意識するのは「鮮やかな妥協」だ

1/21(火) 12:13配信

新R25

どうしても折れないといけないときは「鮮やかな妥協」を意識しろ

交渉において妥協はつきものだ。どうしても妥協をしないといけない瞬間がある。 そんなときぼくはよく「鮮やかな妥協」という言葉を使う。

先ほどお話しした『キングダム』の案件では「表紙を変えることは無理だ」とさんざん言われた。しかし帯を変えるという体裁にしたことで「鮮やかな妥協」ができた。

「表紙を変える」ということに関しては妥協しているが、広い帯を巻いて、そのデザインを表紙と同じように見せられたら、やりたかったことは実現している。先方の顔も立った。

名古屋パルコの「ぜんぶの愛が、世界一」というキャンペーンを手がけたときのこと。

そのキャンペーンのことをウェブメディア「ハフポスト」の人に「紹介してほしい」とお願いした。

すると「新しいビジネスモデルというよりはあくまで普通の広告だし、名古屋だけで全国的なものじゃないので、ちょっと難しい」とお断りされてしまった。

そこでぼくは、このキャンペーンが「愛の多様性」をテーマにしていることを核に説明した。

「愛」と言うと、若い男女のカップルの話になりがちだが、男性同士の愛もあるし、お年寄りの夫婦による「愛」の形もある。

そういったことを踏まえて「パルコは多様性社会の踏まえてあらゆる恋愛、あらゆる愛情を応援します」という姿勢を打ち出す企画だった。

名古屋にとどまらず日本中、世界中が関心を持っているテー マで、今、メディアが報道し、議論しなくてはいけないテーマであることは明白だった。

一方で「ハフポスト」も、多様性のある社会を実現することを応援しているメディアで、同性愛者の方の発言をよく取り上げていた。

ぼくは一度お断りされたあと、もう一度違うアプローチから説明した。

「今回のキャンペーンで使ったポスターの中に、同性愛者のカップルの方がいます。

彼は今回この広告のモデルを務めることに対してすごく葛藤があって、でもそれを乗り越えて、カメラの前に立ってくれました。どうしても伝えたいことがあったからです。

そのモデルの方の思いを取材していただくことはできないですか?今、ハフポストというメディアがやるべきことだと思うのですが」と相談してみたのだ。

すると記者の方も「我々が今やるべきことと合致していますね」と言って引き受けてくれた。 ハフポストの「社会を対話で前に進めていく」という方針と合致していることを理解 してくれた。

もちろん、そのモデルの方が、自分が広告に出たきっかけをハフポストで語ってくれることは、名古屋パルコというブランドが持つ、あらゆる愛の形を応援するというメッセージを強く伝えてくれる。

この件も、もともとの「広告を紹介してほしい」という要望からすると「妥協」かもしれない。しかし結果的により高次元な、もっと多くの人にとって意味のある展開になっていった。

これもまた「鮮やかな妥協」と言っていいだろう。

媒体の目指している理念と、クライアントの紹介してほしいというニーズの間で板挟みになって、どちらにとってもいいやり方はないかを考え抜いた結果、インタビュー記事といった形で着地し、関係者みんなが得する結果が生まれたわけだ 。

「妥協」には折れること、負けることというイメージがある。

しかし、関係者全員のメリットになるような鮮やかな妥協ができたとき、それは「負け」ではない。全員にとっての勝利になる。

歴史哲学者ヘーゲルが唱えた弁証法では、AとBの意見が対立したとき、その2つの意見がぶつかり合ってよりよい意見が生まれることを「止揚(しよう)」と呼ぶ。

どちらかが 完全に譲歩して「10対0」のハッピーを実現するよりも、「6対6」、トータル のハッピーのほうが、総合値は高くなる。

もっと言えば「20対20」のような想像もしないよい成果が生まれることもあるのだ。

交渉では一方的な勝ち負けではなく、お互いのメリットを引き出し、より高次元な結果にたどり着くための「止揚」を目指してほしい。

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最終更新:1/21(火) 12:13
新R25

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