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【ラグビー】元日本代表が語るシックス・ネーションズ 「変わった『世界』、新時代のテストマッチを目撃せよ」

1/22(水) 17:32配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

 欧州、伝統、一つひとつの場面ににじむ重厚感。いよいよ2月1日にシックス・ネーションズが開幕する。開幕に向けた、日本ラグビー界を支える5名に「シックス・ネーションズが待ち切れない!」と題したインタビュー連載の第2回目は、元日本代表の小野澤宏時氏。日本を代表するトライゲッターがWTBならではの目線でシックス・ネーションズの見どころを指南してくれる。


■ウインガーの視点

―小野澤さんはシックス・ネーションズ、よく見ているのですか。

小野澤宏時(以下・小野澤)「伝統国、強豪国の試合を見ていると考えさせられることはたくさんあります。シックス・ネーションズもそんな気づきや、確認をくれる大会の一つですよね。それとWOWOWはラ・リーガ(サッカーのスペインリーグ)もやるじゃないですか。見ちゃいますよね」

―サッカーも日常的に見るんですね。

小野澤 「ラグビーではパスを出せる角度は180度だけ。サッカーは倍の360度。その中で、ディフェンスがどうやって相手にプレッシャーをかけるのか。嵌めにいっているのか。その群れとしての動きがすごく興味深い」

―なるほど。

小野澤 「で、ラグビーなんですけど、WTBって、トライ取る選手はいつも取るじゃないですか。ウェールズのジョシュ・アダムスとか、また取ってるなあ、ていう」

―はい。ワールドカップでは出た試合ほとんどでトライを取りました。

小野澤 「ラグビーはインサイドが起点で、ボールが内から外に回りますよね」

―はい。

小野澤 「だから、9番や10番がゲームを作っているように見える。けれど、実際は外の選手がお膳立てをしているんですよ。外にいるWTBはタッチラインの一番近くにいる。全体が見渡せるんです。で、内側にいる人たちと絶えずコミュニケーションを取っている」

―右に回ってこいとか、ミスマッチがある、とか。

小野澤 「優秀な人は、『自分にいい状況でボールが回ってくるように』人の配置をしているんです。内側の人たちの配置をして、最後に最高の状況ができるところに、自分を置く」

―ええっ。

小野澤 「[例えば、内側から順に『10番、B K、FW…』という並びの場合と、『10番、FW、BK…』では、全然違う。それを外からコントロールしている」

―そうなんですね。

小野澤 「だって、『10番、BK、BK、BK、自分(WTB)』なんて状況、普通ありますか」

―スクラムの時くらいですね。

小野澤 「それ以外はどこかにFWが入る。それをどのタイミングでどう並べるか」

―ブレイクダウンの強弱もある。

小野澤 「そうそう。ブレイクダウンではだいたい3秒でボールを出そうとするじゃないですか。だからポイントができる前はもちろん、タックルが起きてからは、常に3秒後の世界を予想して、内側とコミュニケーションを取っているんです、WTBは」

―ははあ~(感心)

小野澤 「だから、ハーフ団がゲームを作って、WTBは、ボールを運ぶだけ--みたいに紹介されることの多いポジションですけれど、全然違うんです。トライを取ったWTBについて『そこにいたのが素晴らしい』なんて褒めてもらえることもあるのですが、それもちょっと違う。トライを取る選手は『そこに自分を置いている』」

―すごい! そんなWTBが、シックス・ネーションズにはたくさんいますか。

小野澤 「いるんじゃないですかねえ。テレビだと、画面から消えている間にどんなポジショニングをしているんだろうとか、想像、予想するのも面白い。『この選手、さっきまでここにいたのに、次の場面では、前向きで相手のキックをキャッチしている。いつ気がついて、いつ移動したんだ?』とか」

―選手名を挙げていただけますか?

小野澤 「挙げにくいですよ(笑)。スコッドがどこも大きい。しかもW杯後の、この時期だし。でもですね、ちょっと注目しているのはフランスです」


■「4年サイクル」崩壊後の世界

小野澤 「2019年大会は、世界のラグビーの4年周期が崩れた大会だったんじゃないかと。だって、監督が就任して1年ちょっとしか経っていない南アフリカが優勝したんですから。ワールドカップのためのキャンペーン(強化)は、2年前くらいからで十分なのでは?って、世界中の関係者が感じたはず。もちろん、それぞれの国の段階、ステージによってとらえ方は全然違うと思いますけれど」

―日本にとって、2015年に向けたエディー・ジョーンズの4年、2019年に向けたジェイミー・ジョセフの3年は必要なものだったと感じます。

小野澤 「そうですね。じゃあ、すでに成熟しているトップの国々は、どうなんだろうという興味です。僕ら観る人からすれば、『4年なんて言わず、1年1年楽しめばいいね』って。だけど例えば、職業選手や職業監督たちにとって、この現象はどう映るのか。これまでは、自国リーグの選手でじっくりと長期の強化プロセスを組んだ国が勝った。今回は、イングランド、フランスにも多くの主力を出していた南アフリカが、それでも勝った。どうなると思います?」

―…わかりません!

小野澤 「そこでですよ、フランスはそんな中で、次大会が自国開催。勝負の大会ですよ。だからここから、4年間どんな道を辿って本番を迎えるのかが、すごく楽しみなんです。フランスの42人スコッド、平均年齢が24。キャップなし(国代表出場歴)が19人。フランスは、4年周期が崩れた世界の中で、4年のストーリーを描こうとしている」

―フランスは2019年大会も、若いメンバーで臨みました。

小野澤 「そこですよ。2019年はもう捨て石で、2023年に向けた育成の場だと割り切ったんだ―みんな、そう思ってたじゃないですか」

―W杯経験者がわずか9人というスコッドでした。

小野澤 「じゃあ、なぜ、その大会後に指揮官を変える必要があったんだろうって、思いませんか。すごくコメントがしづらいチームなんです。何を意図してこうなっているのか。だからこそ、目が離せないんです、フランスって」

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