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米・イランの“エスカレーション・コントロール”が大規模戦争を回避した  日本の安全保障への教訓

1/23(木) 11:42配信

FNN.jpプライムオンライン

紛争のエスカレーション・コントロール

1月3日に行われたイランの革命防衛隊・クッズ部隊のソレイマニ司令官殺害に前後して、米・イラン間の軍事的緊張が高まった。未だワシントンでは、ソレイマニ殺害の法的根拠を含むトランプ大統領の衝動的決断の危うさや、今後の中東情勢に与える影響などが議論されている。

【画像】「アメリカに死を」と叫び国旗に火をつけトランプ政権を批判するイランの群衆

他方で、今回の軍事的緊張は、両国の正規軍人・民間人に多数の死傷者を出すような本格的な攻撃の応酬には発展せず、意外にもエスカレーションは抑制された。以下では、今回の米・イラン間の対立を、紛争のエスカレーション・コントロールや日本の安全保障にとっての視点から考えてみたい。

トランプ大統領がソレイマニ殺害という決断を選択・実行したことは、(一部の情報関係者を除けば)多くの専門家にとって予想外かつ急展開の事態であったのは事実であろう。しかし、2019年末から2020年初めにかけての緊張は、必ずしも米側の行動に起因するものでなかった。

事の発端は昨年12月27日に、イラク北部のキルクークにある軍事施設に対して30発以上のロケット攻撃が行われたことに始まる。この攻撃により、米国人の民間契約要員(defense contractor)1名が死亡した他、米・イラク軍人にも負傷者が発生した。同様の攻撃は数カ月前から散発的に発生しており、米政府はこの攻撃をイランが支援するシーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」によるものと非難した(*同組織は、米政府によって海外テロ組織に指定されている)。

2日後の29日、米軍はキルクークの軍事施設攻撃に対する報復として、カタイブ・ヒズボラの拠点5か所に対して空爆を実施し、戦闘員25名を殺害。この報復攻撃の後、米国防省はイランと関連組織に対し、米軍および関係国軍に対する攻撃をやめるよう声明を出した。

「ベンガジ事件再来」の予感

ところが、事態はこれで収束しなかった。31日、米軍による空爆で死亡した戦闘員の葬儀後、バグダッドの米大使館前に集まった抗議者らが、大使館に侵入を試みるなどして放火や投石などの破壊行為を行ったのである。米政府関係者によると、この抗議者らの多くはカタイブ・ヒズボラの関係者であり、大使館の外側ではイランの支援を受ける司令官が大使館への襲撃を組織的に計画・煽動していたとしている。同日、エスパー国防長官は大使館スタッフの安全を確保するため、追加部隊の派遣を急遽決定した。

ここで緊急派遣が決定されたのが、クウェート駐留の海兵隊緊急即応特殊部隊であった。同部隊は、2012年9月にリビアのベンガジで発生した米領事館襲撃事件で救援が間に合わず、当時の駐リビア米大使や警備担当の契約要員ら米国人4名が死亡したことを契機に設置された。ベンガジ事件を「オバマ大統領やクリントン国務長官の“過失”」として非難してきたトランプ大統領やポンペオ国務長官にとって、米要員の死亡と大使館襲撃を経た事態のエスカレーションが「ベンガジ事件の再来」を予感させる政治的なプレッシャーとなったことは想像に難くない。実際、トランプ大統領は12月31日の時点で、「イラクの米大使館は安全だ!…彼ら(襲撃者)非常に多くの対価を支払うだろう!これは警告ではない」、「反ベンガジ!」とツイートしている。

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最終更新:1/23(木) 11:42
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