ここから本文です

こんな木造小屋に20年も…失恋を機に“閉じ込められた”女性 浮かび上がる社会の過ち

1/23(木) 10:25配信

沖縄タイムス

 1972年に日本復帰するまでの沖縄で、精神障がい者を合法的に閉じ込めた「私宅監置」の歴史を4年にわたり追い掛けているフリーテレビディレクターの原義和さん(50)が、創作場面を織り交ぜたドキュメンタリー映画「夜明け前のうた 見棄てられた沖縄の精神障害者」の製作に取り組んでいる。各地の取材映像に加え、県内離島に実在した藤さん(故人)という女性が50年代から20年以上監置されていた小屋を再現。丹念な聞き取りで浮かび上がった犠牲者たちの人間性、隔離を正当化した社会の過ちを問う。3月中に完成予定。(学芸部・新垣綾子)

【写真】実際に女性が閉じ込められていた小屋。1964年撮影

 ◆よく口ずさんでいた歌

 20日午後、1坪半ほどの小屋を再現した八重瀬町の農地であった撮影。「だんだんと、諦めていくイメージで」。原さんが指示を出すと、小屋の中にいる全身白の衣装をまとった現代舞踊家、Danzatakara.さん(31)=東京都在住=が、木格子の間から出していた手足をゆっくりと引っ込めていった。

 表現されているのは、社会の安寧のため存在を否定された人々の苦悩。小屋を抜け出し自由に舞う場面では、隔離を解かれた犠牲者の躍動する魂が描かれている。

 原さんの取材によると、藤さんは「目鼻立ちがはっきりした琉球美人」。失恋が原因で精神を病み、長期の監置、入院を経て晩年は介護施設で暮らした。原さんが心を揺さぶられたのは、藤さんが監置によって人間の尊厳を激しく傷付けられながらも、よく歌を口ずさんでいたといういくつもの証言だ。

 「国が全体重をかけ被害者を踏みつぶそうとする中、彼女の心には救いの光として歌が生きていたのではないか。藤さんに会いたいと思った」

 映画には藤さんが施設で歌っていたという文部省唱歌「我は海の子」が流れるほか、「隔離、差別、排除などの象徴」として描いた小屋の焼失シーンを盛り込むことで「新しい未来を展望したい」との願いを込める。

 ◆相当な寒さだったのでは…

 小屋の再現作業を担ったのは、精神障がい者らの就労支援事業所「てるしのワークセンター」スタッフの岸本吉博さん(52)と利用者の内間安哲さん(41)、島田直樹さん(33)、伊集守重さん(55)。手掛かりにしたのは1枚の写真で、60年代に政府から派遣された岡庭武医師が県内各地で撮影した中に藤さんが閉じ込められた小屋が含まれていた。

 柱は写真の質感と似たギンネムの木を恩納村から取り寄せ、かやぶきだったという証言をもとに屋根を組み立てた。

 岸本さんは「写真を見ると、柱の配置が素人っぽく家族や地域の人たちで作った感じがする。外から五寸くぎが打たれていたので女性の力で出るのは難しいし、雨風が吹き込んでくると沖縄とはいえ冬場は相当な寒さだったと思う」と想像した。

 内間さんは「この再現場面を藤さんが見ていたらなと思う。あなたの人生を、とても美人な踊り手さんが演じていますよって伝えたい」と話した。

 西アフリカや台湾の取材記録も含めた映画は4月以降、劇場公開を目指す。制作者側はいずれも返礼品付きで3千、1万、3万円の間で、製作支援基金を募っている。

 問い合わせは県精神保健福祉会連合会、電話098(889)4011。メールアドレスterushino@castle.ocn.ne.jp

最終更新:1/24(金) 18:55
沖縄タイムス

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事

Yahoo! JAPAN 特設ページ